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2021年7月31日土曜日

7/27都教委定例会 根津公子さんの傍聴記

 7/27都教委定例会 根津公子さんの傍聴記

中学校歴史教科書 全員一致により「採択替えは行わない」

★メインの議題は中学校歴史教科書の再採択をするかどうかだったが、結果は表題の通り。ほっとした。

 小中学校の教科書は原則として4年間同一の教科書を採択することになっているが、2019年の教科書検定で不合格となった自由社が指摘された箇所を修正して、4年後の検定を待たずに2020年に再申請し、合格。4年後を待たなかった、ここが問題の発端だ。

一方、このことを合法化するかのように、あるいは見越していたかのように文科省は教科書使用期間中の再採択を2015年の関連法施行規則の改正で可能にしていた。そして、自由社の合格を受けて、文科省は都道府県教委などに「採択替えを行うことも可能」とする通知を発出した。自作自演、としか言いようがない。

★通知を受け、横浜市教委は「公平性」の観点から改めて採決を行うと公表した。

横浜市教委は都教委と同じく、先の日本の侵略を「アジアを欧米から開放した大東亜戦争」だと歴史を改ざんした「新しい歴史教科書をつくる会」系の自由社版、育鵬社版(両社は扶桑社だったが、内紛で別会社を立ち上げた)を長いこと採択してきて、昨年度の採択で他社版に切り替えた。

だから、都教委がどう動くのかがとても気になっていた。育鵬社版も歴史の改ざんがひどいが、自由社版はさらに上手だ。なぜこれが検定を通ってしまったのか、検定官はまともに検討したのかと疑りたくなる、そうした記述ばかり。

★ 都教委も「公正性」の観点からこれを議題にしたのかもしれないが、「採択替えは行わない」を全教育委員が選択したことは極めて妥当と思う。

都教委事務局の提案する諸方針・施策は子どもの人格形成とは真逆な、ごく少数の国家に必要な「人材の育成」であり、そのためには大多数の子どもを切り捨てるというものばかり。それがますますひどくなっている。そうしたことに苦言を呈することなく「ありがとうございます。すばらしい」と発言する教育委員を私は定例会で見てきたので、「採択替えは行わない」を選択したことに反面驚いてもいる。朗報を記すことができてほっとしている。

★来年度開校の都立小学校(都立小中高一貫校)の教科書、特別支援学校の教科書採択も含めて採択が終了したところで3人の発言があった。

「道徳教科書の『かぼちゃのつる』はかぼちゃがつるを伸ばすのはわがままで迷惑という視点からの記述で、いかがなものか」とか、「教科書にはあいまいな記述が多い」「生活科にはあいまいな記述が多い。根拠を明らかにし提示すべき」などの、そうした指摘には頷けたが、そう指摘するならば、教育委員は、市民からの要請等についてもしっかり根拠を示して回答してほしい、都教委発行の図書についても指摘してほしいと腹が立った。

オリパラ教育の一環として品川区の小学校が行った「世界友だちプロジェクト」の「ヨーロッパ・イスラエル国」の授業では、「イスラエルの首都はエルサレム」と嘘を教えた(都教委HPに掲載)。

エルサレムを首都とするのはトランプ政権他少数。国際社会も日本の外務省も首都とは認めていない。このことについて、7月28日付で市民が問題点の指摘とともに質問書を都教委に提出したはず。これを書いている今再び、このHPを開いたら、首都はエルサレムのままだが、「注:日本を含め国際的には認められていない」と補足が記載されていた。どこからか情報を得て補足したのか。しかし、「エルサレム」は依然そのままだ。教育委員には、このことに対しても「根拠を明らかにし提示」してもらいたいと思う。

★いや、この件だけでなく、2016年度から今に至るまで小学4年生から高校3年生までが使わされている「オリンピック・パラリンピック学習読本」や、2018年・19年発行の高校生向け冊子「2020年。東京と東北で会いましょう。」には、明らかな誤りがいくつもある。根拠なき記述も多数ある。教育委員には、こうしたひざ元が発行する図書の記述について、まずは当たってもらいたい。そうしてもらうのは大歓迎であり、教育委員が本来すべき仕事と思う。

★他の議題は、「教職員を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種」についての報告。「いろいろな考え方や体質の問題もあるので、『本人の意思に基づく任意接種」であることを徹底してほしい」との意見とともに、それを否定するともとれる発言があった。「予防接種は自分をまもるだけでなく、周囲をまもる。その点を考えるよう周知徹底を」「ワクチン接種2回完了が教職員のどのくらいか、データが必要であり、それが本来の(都教委の)あり方」だと。「ワクチン接種をしない者は解雇」という雇い主が出始めたとも聞く今、学校にも同調圧力が生じないか、心配だ。 今回は懲戒処分についての議題がなかった。私が傍聴を始めて以来、これが議題とならなかったのは2回目。