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2024年4月27日土曜日

 4月18日、東京都教育委員会は、

<教員不足>を発表、24日自己分析

<都教委包囲首都圏ネット>の2月26日の要請への、都教委の回答

「『日の丸・君が代』強制、職階制度、業績評価が東京都の公教育を破壊したので、これらは総てやめてください」という要請   渡部さんの投稿です。

4月18日、東京都教育委員会は、年度初めの教員欠員20人、合格辞退や退職が相次いだから、と発表した。

4月24日、今度は昨年度の新任教諭の4.9%が退職、ほとんどが「自己都合」による、と発表した。

この間、このように教員不足が深刻化している。これは教育破壊状況ともいえる。


こうした状況について、<都教委包囲首都圏ネット>では、すでに今年の2月26日、都教委に対して、「『日の丸・君が代』強制、職階制度、業績評価が東京都の公教育を破壊したので、これらは総てやめてください」という要請文を出した。

1か月経てもなかなか回答が来ないので3月に連絡を入れ、

4月に入って再度連絡を入れたところ、4月24日、ようやく回答(4月23日付)が届いた。

そこには、以下のようなことが書いてあった。


■都教委の回答

1 東京都の公教育の破壊の第一の原因となった「10・23通達」を撤回すること

(回答)

 これまでに出された裁判所の判断において、都教育委員会が平成15年10月23日付で 発出した、「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」

 は、旧教育基本法大10条第1項にいう「不当な支配」には該当しないとされています。

 本通達を撤回する考えはありません。(所管 指導部指導企画課)


2 それによってなされた処分をすべて取り消すこと

(回答)

 懲戒処分の取り消しは、考えておりません。(所管 人事部職員課)


3 教職員の職階制度を廃止し、主任制以前のっ民主的で風通しの良い職場に戻すこと

(回答)

 主任教諭はミドルリーダーとして、主幹教諭への補佐、教諭への助言・支援という双方向のコミュニケーションの要となり、組織内のコミュニケーションを活性化する役割を担っています。

  また、東京都では公立学校においても、教職員が安心できて働きやすい職場環境の構築を推進しています。(所管 人事部勤労課)


4 教職員集団をバラバラにし、競争を煽り長時間労働を助長する、業績評価を廃止すること

(回答)

 人事評価の実施は地方公務員法第23条で任命権者が行うべきものと規定されており、 また、人事評価を任用、給与、分限その他の人事管理の基礎として活用することが同法 第23条で規定されています。都教育委員会においても同法に基づき、職員の資質能力 の向上及び学校組織の活性化を図ることを目的として人事考課制度を実施しています。(所管 人事部勤労課)


5 業者丸投げで、無責任で問題の多い英語スピーキングテストを中止すること

(回答)

 本テストは業者との協定に基づき適切に実施されており、学校における様々な指導と

 その学習成果を確認するスピーキングテストの双方を実施することが生徒の英語力を伸 ばすことにつながることから、引き続き、本テストの実施に取り組んでまいります。

 (所管 グローバル人材育成部国際教育企画課)

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都教委回答へのコメント


1については、旧教育基本法では、教育委員会の仕事は、教育条件の整備であるとなっており、教育内容にまで「10・23通達」のように事細かく(通達)することは、明らかに「不当な支配」になるのである。

2については、そのような通達に基づき強制し、それに従わなかったからとして処分(最高6か月停職)したことは明らかに違憲・違法である。これは戦後教育史上、民主教育を守ろうとした教職員に対する思想弾圧として歴史に刻まれるであろう。

3については、現場の教員に聞けば、そうなっていないことがすぐわかる。

 現在では職員会議での挙手採決は禁止されており、すべてはトップダウンで降りてくる。だからパワハラも増えている。おかしいと思っても言いたいことも言えない職場では、 精神的な病にかかる教員や退職者が増えるのは当然だろう。

 どこに「双方向のコミュニケーション」があるというのか。

4については、「職員の資質能力の向上及び学校組織の活性化」と述べているが、実際には、人事考課で競わされ、教員間は分断され、時間外手当も出ないまま長時間勤務になっているのである。教員たちが見聞を広げたり、本を読む時間もないのが実態である。

 戦前、多くの教員たちは社会的に無知であったので、上から言われた通りのことをやってしまったと言われている。今また、戦争の足音が聞こえる時代に再び同じことを繰り返すのだろうか。

5については「開けない夜はない」(243)<公教育を私物化するお粗末な業者スピーキングテスト>に紹介したように、実際にはきわめてお粗末なテストで、とても「生徒の英語力を伸ばすことにつながる」とは思えないものである。


結局都教委は、みずから教員不足などの根本原因を作り出しておきながら、その原因には目を向けず、反省する意思も撤回する意志もなく、引き続きその危ない道を進むつもりである。

したがって、これからも教員不足は解消されず、公教育は破壊され続け、行きつくところ戦前同様の道を歩むことになるだろう。

だから私たちは、引き続き屈することなく反対の声を上げていく。

3月27日(水)<卒業式総括・再任用打ち切り抗議 総決起集会>開催

3月27日(水)<卒業式総括・再任用打ち切り抗議 総決起集会>開催

2003年には、都教委が「10・23通達」を出し、きわめて厳しい処分を背景に徹底的な強制に乗り出した。あれから20年半たった。渡部さんの報告

3月27日)東京で、『卒業式総括・再任用打ち切り抗議 総決起集会』が開かれた(53名参加)。 

●この集会では、現在闘われている「君が代」裁判第五次訴訟の原告の方々の発言があった。そこで明らかになったのは、現在のトップダウンの教育現場の無責任体制と無気力、大きなストレスを抱える教員たちの存在だった。一口で言えば「教育破壊」である。

●この集会では最後に<「君が代」処分を理由とした再任用不合格に抗議する声明>が読み上げられたが、その後半には以下のように述べてあった。

「10・23通達」発出以来今日までの20年半の間に、通達に基づく職務命令によってすでに484名もの教員が処分されてきた。

この大量処分は東京の異常な教育行政を象徴するものであり、命令と処分によって教育現場を意のままに操ろうとする不当な処分発令と再任用の不合格に満身の怒りを込めて抗議し、その撤回を求める。

都教委は再三にわたる被処分者の会、原告団の要請を拒んで紛争解決のための話し合いの席に着こうともせず、この問題を教育関係者自らの力で解決を図るべく話し合いを求めた最高裁判決の趣旨を無視して「職務命令」を出すよう各校長を指導し、結果として全ての都立学校の卒業式・入学式に際して各校長が「職務命令」を出し続けている。ましてや、

二次~四次訴訟の判決によって減給処分を取り消された現職教員に、改めて戒告処分を発令する(再処分)という暴挙を繰り返し、再任用の打ち切りまで強行するに至っては、

司法の裁きを軽んずるものである。

さらに、こうした教育行政を続けることは、2019年および2020年にILO/ユネスコの合同専門委員会、2022年に国連自由権規約委員会から出された是正勧告に背くものであり、

国際社会の人権尊重撲の流れに挑戦するものと言わざるを得ない。

東京の学校現場は、「10・23通達」はもとより、2006年4月の職員会議の挙手採決禁止「通知」、主幹・主任教諭などの職の設置と業績評価制度によって、閉塞状況に陥っている。いま都立高校は未曽有の教員不足に悩まされている。都立高校が”もの言えぬ職場」”とされ、教師の職の魅力を失わせたことと不可分の問題である。

私たちは、東京の学校に自由で民主的な教育を甦らせ、主人公の学校を取り戻すため、

全国の仲間と連帯して「日の丸・君が代」強制に反対し、不当処分撤回・再任用打ち切りの撤回を求めて闘い抜く決意である。この国を「戦争をする国」にさせず、「教え子を再び戦場に送らない」ために!

2024年3月27日

四者卒業式・入学式対策本部

(被処分者の会、再雇用2次訴訟を語りつぐ会、予防訴訟を引き継ぐ会、解雇裁判をひきつぐ会)

●配られたプログラムには次のようなことも述べてあった。

 「沖縄の軍事要塞化、全国の空港・港湾の軍事拠点化・兵站基地化が進められている中、

3月15日には、自民、公明両党が次期戦闘機の第三国への輸出解禁を合意しました。

日本が戦時体制に入りつつあると感じさせる状況において、特別支援学校ではJアラートの避難訓練も実施されています。

学校の教室から戦争が始まらないように、生徒のための卒業式を取り戻すために、10・23通達を撤回させる取り組みは今かつてないほど重要になってきています。」

本日の集会は、まさに、「日の丸・君が代」の強制は教育破壊と戦争への道、であることを浮き彫りにした。

全国の仲間の皆さん、黙らず、ともに声をあげ、連帯して闘おう。



2024年3月25日月曜日

★卒 業 式 総 括 集会に集まってください。

3月27日(水)13時30分〜

としま区民センター会議室701702703JR池袋駅東口徒歩5分・中池袋前)

<主な内容>

今年の卒業式を巡る状況報告、再任用打ち切り抗議、国連自由権規約委員会勧告・ILO/ユネスコ(セアート)勧告について、五次訴訟原告団の闘いなど

   <主催> 四者卒入学式対策本部


 被処分者の会・近藤 徹より

10・23通達から20年5月。今年の卒業式も終了しました。

都立学校の卒業式は、コロナ前に戻り、10・23通達を厳格に実施するものとなりました。式次第に「国歌斉唱」と記載し、生徒・参加者に起立斉唱を促し、教職員には職務命令で起立斉唱を強制しています。

東京京地裁では、東京「君が代」裁判五次訴訟が闘われており、3月4日に第13回弁論が行なわれ、4月17日の進行協議を経て、次回弁論期日が決まります。


10・23通達・処分撤回の闘い風化させず、東京の学校に憲法・人権・民主主義・教育の自由をよみがえらせるために、粘り強く闘っていきます。下記卒業式総括起集会への多くの皆さんの参加を呼びかけます。

2024年2月21日水曜日

2.12集会(2)

 2.12   総決起集会プログラム

    ・開会あいさつ

  ・講演 大内裕和さん(武蔵大学教授)

      「21世紀ファシズムと戦争にどう立ち向かうのか 」

   質疑

    ・現場からの問題提起 

   教育現場からの問題 宮澤弘道さん( 多摩教組委員長)

  ・現場からの報告

  「日の丸・君が代」 裁判の現状  第5次訴訟原告

   最高裁までの闘い 根津公子

   スピーキングテストの現状 義務制教員

   学習支援員裁判から 元千葉義務制教員

   埼玉でのミサイル訓練反対の闘い  埼玉義務制教員 

   改憲反対・軍拡反対 共同行動総行動 (共闘団体) 

  ・行動提起

  ・閉会挨拶 団結がんばろう   


宮澤さんの講演  渡部さんまとめ

大内さんの講演の後、「教育現場からの問題提起」として、公立小学校教員で多摩島嶼地区教職員組合執行委員長の宮沢弘道さんから、「憲法と教育・教育現場~教職員組合の現状と仲間づくり~」という報告があった(パワーポイントで30コマ)。

30分という短い時間だったので、宮沢さんはその全部を説明することはできなかったが、

それでも現在の教育現場がいかに過酷なものになっているかが参加者には伝わった。










■宮沢さんの報告を紹介する。

1、教員の現状

<階層化される職員室>

 現在、教員は上から順に 

①統括校長 ②校長(=部長にあたる)③副校長(=課長)④主幹教諭・指導教諭(=課長補佐)⑤主任教諭(=係長)⑥教諭(=係長補佐)

 とピラミッド型に階層化されている。

そのため、職場のつながりがなくなり、バラバラになり、殺伐とした雰囲気になっている(責任をおしつけたり)。

<働き方改革がもたらすもの>

 ・本当に忙しい教員

 (会議・各種調査・土曜授業・学校公開・研究授・・)

 ・月の残業時間は平均で123時間

 これに対し、「改革」として「スクールスタッフ」として     パートの方が入ってくる。

 かえって危ない。改革と言えば下からやらなければならな     いのに。

<教員不足の原因は・・②>(①は略)

 教職員の管理強化

  ・教職員の階層化により、競争と不公平感による疲弊

  ・人事考課制度の強化により、常に評価の目にさらされ          る緊張感による疲弊

  ・職員会議の形骸化により、自分の意見不在の「やらさ          れる仕事」蓄積による疲弊

  ・減らないパワハラ。管理職等、上司による非常識なパ           ワハラによる疲弊

<分析すると・・>

   ・2005年度までは不採用率(新規採用教員が1年で不採用       になる率)は1%前後

    それが、パワハラ相談増加とリンクする不採用率の上昇      (2022年度は4.4%に)

  ・補欠合格制度の廃止と期限付き任用職員制度の導入

  ・「非常勤講師ー産休・育休代替ー期限付任用ー条件付         採用など、幾重もの採用制度の完成

  ・「三楽病院(指定医)受診⇒病気休暇⇒90日条項によ          りクビ」

<教員不足の原因は・・③>

 組合の弱体化

 ・労使の関係性崩壊による「指示待ち教員」の増加

  それにより、働き方改革すらもトップダウンで進む現実

 ・改善の機会、相談場所が喪失している(締め付けへとつ       ながる)

 ・官製研修(つまらない)しか知らないことによる学ぶ意       欲の減退(年々減退する意欲)がある。

<教員不足の原因は・・④>

 特殊な学校文化  整列、挨拶、一人称、校則(ルール

   ・・etc

  ・管理的な文化への違和感を感じる若者は、受け入れて疲弊するか、反発して退職・   転職する ことになる。

<教員不足解消のためには・・・>

 (教育現場)

 ・組合を中心に民主的な職場を取り戻し教育内容・賃金

 ・労働条件の向上を図ること。

 (大学教育)

 ・学校に合わせる学生を生み出すのではなく、学校の常識に染まらない確固たる教育哲学を習得した学生の育成を目指すこと。つまり、現場から教育、労働運動を展開することで、待遇・魅力の向上を勝ち取ることが、教員不足解消につながる。


2、憲法・人権・道徳と教育

 <現在、私たちは心も体も国家の管理下にあります>

  2002年「健康増進法」が施行された。しかし、「憲法25条」には、「健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する」と述べてあるのに、「健康増進法2条」には、「国民は・・・自分が健康であるようにする責務がある」と述べてあり、さらに、10条、16条では厚労大臣や知事に調査権の行使を認める、ことになっている。

 つまり、今病気でなくても予防的観点から人々の生活を管 理下に置き、修正要求を要求できることになる。

  そして、道徳の教科化により・・身体も「評価対象」になる。

<政治に無関心な教員>

 ・選挙活動制限の勘違い、として、中には、選挙に行くこ         とができないと思っている教員もいる。

 ・バランス至上主義が支配している。

 ・職員室の会話では政治の話が出ない

 ・主権者の役割を果たしていない先生による主権者教育を    やっている。

 ・自己責任を声高に叫ぶ学校になっている。

「子どもと人権」には(1)(2)(3)がありましたが、ここでは、その中から宮沢さ んが話した内容に絞って紹介します。)

<子どもの権利条約第12条「意見意見表明権」とは>

・「自己の意見を形成する能力のある子ども」は誤訳で、正しくは「子どもは自己の意見 を表明する能力があり・・」だ。それを受け止め、改善するのが大人の役目である。

 コロナ禍で弱者(子ども)は我慢の連続だ。声もあげられない。

<人権と道徳は別物>

 人権はあくまでも「人」としての権利の保障だ。これに対して道徳は国家体制を維持す るためのもので、個人にまなざしが向けられるという特質がある。

 (個人が悪者に)

<道徳教科化のねらい>

 キーワードは「自己責任論」である。戦前の「修身」は筆頭科目で、各教科ではその中 に道徳的な 内容を入れなければならなかった。その結果暗黒時代になった。

 今の「特別の教科・道徳」は、各教科の扇の要と言っている。しかし、本来、<各教科の科学的内容が優先されなければならない>。

<愛国心教育と近代憲法>

 前者は、真ん中に「私」がおり、その周りを「国・公」が取り囲んでいる。後者は、「多くの私」と「国・公」は対等な立場だ。


3、教職員組合の現状

 ・組織率は…極めて低くなってきており、厳しい状態だ。

 ・組合員の高齢化も進んでいる。

 ・疲弊した新規加入者の存在。

 ・メリットデメリット論による組合不要論がある。

 ・政治とか連合とかは、ここだけの話になってしまう。

 <組織力向上のポイント>

 ・まず寄り添うことがはじめの一歩だ。オルガナイザーは誰でもできる。

 ・身近な労働条件闘争を!

 ・職場会の充実 まずは「聞く」こと。若い職員の声から運動の方向性が見える。

 ・総論賛成でリベラル勢力の結集を!


宮沢さんは

「終りに」(教育を取り戻すために確認したい事)として

  ①誰がやってもよい仕事

  ②理想を語れる仕事

  ③半径1mが大切な仕事

 をあげていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

宮沢さんの話が終わった後、98歳という高齢をおして参加してくれた北村小夜さんが、「話したい」と手をあげ、次のようなことを話してくれた。

北村

 戦前に教育を受けた自分にとって、宮沢さんの話は大変良かった。戦後の1947年、教育基本法ができたが、そこでは「道徳」ではなく、「科学」的なことを優先することになった。また、当時は、教員になるとみんな日教組に入った。

「国家権力」が現場を支配するというのは「国家」の在り様と関係しているということだ。

「科学」的な内容をきちんと教えなければならない。

●また、アンケートには、

・宮沢さんの「教員の実情」についての話は、あまりに絶望的な状況に子供たちの将来が心配です。教育にお金をかけない日本の政治を何とかしなければと思います。

 学校は利益を目的とする会社とは違うのだから、教師に上下をつけるのは間違いだ。

・宮沢さんのお話は教育現場の予想以上に深刻な実態がよくわかりました。15年ほど前に退職しましたが(当時も職場状況は悪くなっていましたが)はるかに大変な状況と感じました。組合活動を支えている方の苦労・困難を改めて知りました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー今回の第20回「総決起集会」は、私たちがどういう時代に生きており、その中でどう闘っていけばよいかが問われた集会だったと思います。

全国の皆さん、共に連帯して闘って行きましょう。

2024年2月20日火曜日

 2024年2月12日 

都教委包囲首都圏ネットワーク主催で、『2・12総決起集会~今こそ、反戦・平和の運動を教育と社会に!』が開かれた。(100人参加)。

この集会は都教委が2003年に「日の丸・君が代」強制の「10・23通達」を出した後の2005年から毎年2月に開かれ、今回が20回目だった。

久しぶりに開いた集会でしたが、講演者、発言者とも真剣な問題提起をして、緊張感漂う集会になりました。









大内裕和さんの講演 渡部さんがまとめ

 2003年当時、教育基本法が改悪されるという状況下、12月23日、改悪反対の「全国集会」が日比谷公会堂で開かれた。この「全国集会」を機に、翌年『教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会』が作られ、2006年12月の安倍政権による教基法改悪まで、6回の全国集会とデモ、新聞意見広告などを行いながら闘った。その時の呼びかけ人は、高橋哲哉・小森陽一・三宅晶子・大内裕和さんの四人だった。

今回の『総決起集会』に私たちは、その内の一人・大内裕和さん(武蔵大学教授)を講師に招いた。


●大内さんの演題 <21世紀ファシズムと戦争にどう立ち向かうのか>

大内さんはA4版11ページにもわたる詳細なレジュメを用意された。ここではとてもその全体を紹介することはできないが、レジュメにそって講演の基本的内容を以下に紹介する。

(最初に)

「10・2通達」はファシズム的体質を持つ。

 毎日報道される戦争では、殺戮・虐殺が起きている。

 21世紀のファシズムと戦争と闘うことは「新自由主義」と闘うことでもある。


(1)沖縄・南西諸島の軍事要塞化について

 これは戦争準備というより、戦争実行体制づくりだ。

2012年に日本政府が尖閣諸島を国有化したときから始まっている。

 (その後の具体的動きを紹介し)

2022年12月の「安保3文書」で、南西諸島が戦略拠点・最前線になることが明確化された。

 「沖縄本島と南西諸島とのヒエラルキー・差別行動」が利用された。

 また「米軍基地反対」運動の「分断」工作として、あくまで「自衛隊基地」建設として当初は進められた。


(2)現代版「治安弾圧」としての大川原化工機「冤罪」事件 これはでっち上げである。

2017年 警視庁公安部は経産省の許可を得ずに噴霧乾燥機を

 輸出した被疑事実で捜査を開始。

2018年 大川原社および自宅に対し捜査・差し押さえ。

2020年 代表取締役、常務取締役、相談役の3名を逮捕、起訴。

2021年 顧問が病院で死去、東京地検公訴取り下げ、裁判終結。 遺族らは、国と都に損害賠償を求め提訴。

2023年 東京地裁、逮捕・起訴などは違法、賠償を命じる。

2024年 国と都は東京高裁に控訴、会社側も控訴。

 ここにみられるのは、「経済安全保障推進法」(2022年)の成立と、警視庁公安部外事 第一課、経済産業省、検察がセットになった「冤罪」である。

 その背景には、第二次安倍政権における警察官僚の重用、それに伴う警察官僚と政治権 力中枢の関係強化がある。杉田和博は2017年に内閣人事局長を兼任している。

 北村滋は国家安全保障局長になっている。


(3)転換点としての1984年通常国会(自分が高2の時だった)

 この年、臨教審の設置、日本育英会法の改正(有利子奨学金の導入)、国鉄の分割・民営化が行われた。つまり、中曽根政治(「戦後政治の総決算」、「戦後教育の総決算」)

 以降の新自由主義・国家主義が基本的に定められた。


(4)「新自由主義と国家主義」の結合としての1995年

 1994年には、小選挙区制の導入により、右から55年体制を壊し、社会党の解体と保守二大政党の実現による改憲実現へ向かうようになった。

 1995年には、日経連「新時代の『日本的経営』が打ち出され、労働者の三分類=差別化(A長期蓄積能力グループ、B高度専門能力グループ、C雇用柔軟型グループ)が進むことになった。

 1999年には、労働者派遣法改悪が行われ、それ以降非正規労働者の数が急増した。

 国家主義については、グローバル市場維持のための軍事行動(海外派兵)とイデオロギーによる「国民」統合が進められた。

 1993年 自民党の「歴史・検討委員会」に、初当選の安倍晋三が委員に抜擢された。

 1995年 アジア・太平洋戦争を肯定する「自由主義史観」の登場。

 1997年 「新しい歴史教科書をつくる会」結成、日本会議の結成。

 2000年 「新しい教育基本法を求める会」、教育改革国民会議の発足。

 2001年 「つくる会」教科書検定合格。

 となって行き、2003年の教基法改悪による「国家主義教育」へとつながる。


(5)日本政府の新自由主義的再編と自民党の中央集権化・極右政党化

 2001年には、大蔵省→財務省(財金分離)、文部省+科学技術庁→文部科学省、通産省→経済産業省(勢力拡大・新自由主義推進)となり、首相直属の機関として内閣府を設置(他の12省庁よりも上位に格付け)、

 内閣府に通産省官僚が多数登用され、内閣府+経済産業省→新自由主義政策となった。

 また、この間、建設業界・日本医師会・特定郵便局・商工会議所の衰退に代わり、日本 会議、統一教会、立正佼成会、創価学会(選挙の実働部隊)らによる自民党の宗教的と もいえる極右政党化が進んだ。


(6)21世紀ファシズムのスタートとしての「10・23通達」(石原都政)

(ここには、以下のようなことが書かれていた。)

 1999年 石原都知事誕生(極右都政の開始)

 2003年「10・23通達」による「日の丸・君が代」強制

   →「学校現場の自由」を圧殺、教職員組合への攻撃

  「10・23通達」反対運動→21世紀の反ファシズム運動

石原都政は、21世紀の「グローバル都市」東京を目指した。

 (アンダーライン部分にあるように、大内さんは「10・23通達」反対運動を、21世紀の反ファシズム運動と位置付けている)


(7)憲法改悪のリハーサルとしての教育基本法改悪を実現した

 安倍政権は「任期中の改憲」を主張、教育基本法改悪を実現した。

 また、実質的には経産省内閣(→財務省軽視)となった。

 経産省・通産省の前身は商工省であり、対米開戦時の商工大臣は岸信介であった。

 岸信介は、鮎川義介(日産コンチェルンの創始者)、松岡洋右(日独伊三国軍事同盟の際の外務大臣)と姻戚関係で、15戦争を主導したパワーエリートの親族ネットワーク の中心にいた。

 安倍政権の下で、経済産業省は教育分野に介入、

 「未来の教室」プロジェクトとして<学びの個別最適化>を打ち出した。

 それはEdtech(エドテック)と呼ばれ、教育(Education)×テクノロジー(Tecnology)の造語であり、教育領域にイノベーションを起こすビジネス、サービス、スタートアッ プ企業などの総称である。


 これに対し、教職員組合運動は文科省だけではなく、官邸と経済産業省との対決が重要。しかし、実際には官邸・経済産業省の新自由主義改革を文科省との協調によって「防戦」 する戦略を取っている。その結果、未曾有の教員不足問題が浮上している。

 第二次安倍政権の最大の特徴はメディアコントロールであった。

 目標は「NHKと朝日をおさえこむ」こと。 

 国谷裕子をはじめ政府に批判的なキャスターの「首切り」、政権批判的なコメンテーターの排除が行われ、メディアに登場する極右・安倍支持のコメンテーターは激増してい る。(櫻井よし子、岩田明子、橋下徹、古市憲寿、三浦瑠璃、ひろゆき、落合陽一、成 田悠輔・・・・)


(8)1980年代の新自由主義から、21世紀の極右・ファシズムへ

 ここでは、アメリカのレーガン、イギリスのサッチャーなどにより新自由主義がはじまったこと、その延長線上に中曽根〜安倍がいることが述べられた。


(9)私自身の活動

 レジュメには2003年の「教育基本法改悪反対!12・23全国集会」

 以後の大内さんの活動が紹介されていましたが、割愛されました。


(10) 岸田政権 

 「出世払い」制度と経済的徴兵制として、教育未来創造会議(岸田首相が議長、2021年12月発足)で、「大学卒業後の所得に応じた『出世払い』」制度導入を提言した。

 これは「親負担」から「本人負担」へとなるもので、学生がマイナンバー登録になれば、政府は貧しい家庭の出身で健康な若者を捕捉可能となる。これは「経済的徴兵制」への 動きとなるだろう。


 (以下岸田政権による軍拡・戦争準備について触れ、)

 2023年統一地方選挙における維新の台頭は、日本における21世紀型ファシズムである。


(11)当面の課題と今後の運動のポイント

 (これについては、時間不足で大内さんは十分説明できませんでした。が、重要な指摘があると思いますので、以下、レジュメに載っている部分で補います。)

21世紀ファシズムとしての「維新」とどう対抗するのか。「維新」との主戦場の一つは東京だ(2024年2月現在、都議会議員127名の内、維新は1名)。維新の「多摩川超え」をどう阻むか。(小池百合子都知事辞任後、橋下徹立候補の危険性がある)

「格差と貧困」、階層政治・階級政治を組み込んだ運動を

 安保法制闘争と選挙での野党共闘について、現行選挙制度で「3分の1」は取れるが、過半数は取れない。

  憲法9条+25条(雇用と社会保障)が重要だ。

  維新の教育無償化政策、小池百合子の教育無償化は格差拡大になる。

 「私立」と「公立」の差を無視する「普遍主義」だから。

  これは、左派から出てきた「無償化」を右派が簒奪したものだ。すでに「貧困層の固定化と中間層の解体」が急速に進行している。

 1970年代後半以降の新自由主義グローバリズムについて

 極右独裁の台頭と世界戦争という時代状況をつかむこと。

 1980年代以降の新自由主義で急速な格差拡大が起きている。

  「米国経済における億万長者の影響力は1980年代以降大幅に拡大し、米国における財産の集中度は、20世紀初頭のヨーロッパ並みの高さに迫っている」

(トマ・ピケティ『来たれ、新たな社会主義』みすず書房)


 ロナルド・ドーア『金融が乗っ取る世界経済』(中公新書、2011年)には、「日本経済のアングロ・サクソン化は、米国が西太平洋における軍事的覇権国であり、日本と安全 保障条約を結んでそこに基地を持ち、その基地を移設しようとする内閣(たとえば鳩山 内閣)を倒すくらいの力がある、という事情と密接な関係がある」と述べてある。


 30~40年後の西太平洋における覇権国家は中国だろう。

 GDPとしては2030年代半ばに中国は米国に追いつく可能性が高い。しかし、軍事的には米国の優位はその時点でも揺らいでいない可能性が高い。

 20世紀前半の帝国主義戦争のような領土争いではなく、21世紀の戦争はグローバル市場の維持と基軸通貨(ドル・元)をめぐる争いとなろう。 


 2024年米国大統領選挙はトランプ(「力こそ正義」)勝利の可能性がある。

 すると「米国―イスラエル」同盟強化が一層進み、中東を発端とする第3次世界大戦勃 発の可能性がある。

 ④戦争開始後、戦時中の「抵抗」(レジスタンス)を想定した反戦平和運動・改憲阻止闘争、資本主義の「先」を意識した社会認識と運動の重要性

 「9条改憲阻止」や「軍事費2倍増反対」にとどまらず、沖縄・南西諸島のリアルな実 態を共有し、「憲法9条を実行する」実践。

 戦争が開始された場合の抵抗」を具体的に想定した反戦平和運動・改憲阻止闘争のヴァージョン・アップが必要だ。

 労働者・市民・住民がどのような場所でいかなるかたちで戦争への抵抗が可能かを共有し、集団として構想と実践を深める必要がある。


 1990年前後の「社会主義の終焉」(実際にはソ連型共産党一党独裁の終焉)から2020年代の「資本主義の終焉」へ。

 つまり、グローバル資本主義の延長上の世界戦争と「新しい世界」構想の重要性だ。

 冷戦崩壊後 旧ソ連・東ヨーロッパが市場経済化した。

 しかし、新自由主義グローバリズムの矛盾は「マイナー・チェンジ」では乗り越え不可能だ。

 「格差と貧困」是正し、気候変動にストップをかけるためには、資本蓄積を最大公理とする社会の転換、「民営化」から再公有化、資本の私的所有から「社会的所有」「資本の社会化」への移行が必要だ。

 平等、循環型経済、労働者・市民参加型の「社会主義的連邦主義」だ。そのための理論 と実践が重要だ。


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以上、大内さんは、1980年代からこれまでの新自由主義による社会と教育の変遷をたどり、演題にあるように「21世紀ファシズムと戦争にどう立ち向かうのかについて具体的に語ってくれた。


●アンケートには、

・「時代の流れと新自由主義と教育の問題についてよくわかりました。」

・「大内さんの講演を聞いたのは久しぶりでしたが、現在のディストピア的状況のよって 来るところと、今後起こるであろう事態について、めりはりのある話で、非常に面白く 聞きました。

 研究と社会変革とを一つの実践として展開されている大内さんに敬意を表します。」

というような声が寄せられました。

(次回(後)は現場から

2024年2月2日金曜日

2月12日総決起集会開催

 みなさん

2月12日総決起集会開催

ここのところ、ブログを長い間更新しないで、申し訳ありませんでした。

ブログを再開します。

2月12日に(月・休日)に毎年やっている「総決起集会」を行います。

戦争の時代になり、教育現場にもヒタヒタと軍事、自衛隊が入り込んできています。

大内裕和さんの講演も久しぶりです。

みなさん集まってください。


■日時 2024年2月12日(月・休日)

  13時15分 開場 13時30分 開会

■場所 文京区民センター 3A

■講演 大内裕和さん(武蔵大学教授)

 「21世紀 ファシズムと戦争にどう立ち向かうのか」

■現場からの発言

・教育現場からの問題提起 宮澤弘道(多摩教組委員長) 

・「日の丸・君が代裁判」の現状 第5次訴訟原告 

・最高裁までの闘い 根津公子

・義務制の現場から スピーキングテスト 義務制教員

・学習支援裁判 元千葉義務制教員

・埼玉でのミサイル訓練反対 埼教組 

・改憲反対、軍拡大反対 共同行動・総行動(共闘団体)