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2015年5月31日日曜日

5.28 根津・河原井さん勝訴






5月28日の裁判の勝利判決について、渡部さんのコメントです。



▼記者会見 





今回の判決について
一方では確かに「職務命令」と原則的には「戒告」処分まで認め、かつ根津さんに関しては停職3ヶ月まで認めているのですが、内容的には河原井・根津さんらの大きな勝利と言って良いでしょう。

本日(5月28日)東京高裁(須藤典明裁判長)で、河原井純子さん、根津公子さんに対する画期的な「逆転勝訴」判決(都教委の裁量権逸脱で違法、損害賠償も認める)が出されました。
この裁判は、2007年3月の卒業式で「君が代」不起立により、河原井さんには3ヶ月、根津さんには6ヶ月の停職処分が出されたことに対し二人が訴えたものです。

■判決文からいくつかの要点を紹介

★まず、根津さん対してなされた「停職6月」が妥当かどうかについての高裁の判断
「停職処分は、・・処分それ自体によって一定の期間における教員としての職務の停止及び給与の全額不支給という直接的な職務上及び給与上の大きな不利益を与える処分であって、将来の昇給等にも相応の影響が及ぶだけではなく、職員の懲戒に関する条例によれば、停職期間の上限は6月とされていて、停職期間を6月とする本件根津停職処分を科すことは、控訴人根津が更に同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、次は地方公務員である教員としての身分を失うおそれがあるとの警告を与えることとなり、その影響は、単に期間が倍になったという量的な問題にとどまるものではなく、身分喪失の可能性という著しい質的な違いを控訴人根津に対して意識させざるを得ないものであって、極めて大きな心理的圧力を加える結果になるものであるから、十分な根拠をもって慎重に行われなければならないものというべきである。そして、控訴人根津において過去に懲戒処分や文書訓告の対象となったいくつかの行為は、既に前回根津停職処分において考慮されている上、本件根津不起立は、以前に行われた掲揚された国旗を下ろすなどの積極的な式典の妨害行為ではなく、国歌斉唱の際に着席したという消極的な行為であって、気分を害した参加者がいることは否定できないものの、その限度にとどまるもので、特に式典が混乱したこともないから、停職期間3月という前回根津停職処分を
更に加重しなければならない個別具体的な事情は見当たらないというべきであって、控訴人根津がこれまでにも同種の行為を繰り返していることを考慮したとしても、前回根津停職処分の3月の停職期間を超える処分を科すことを正当なものとすることはできないというべきである。」
 
 「以上によれば、本件根津停職処分において停職期間を6月とした都教委の判断は、具体的に行われた非違行為の内容や影響の程度等に鑑み、社会通念上、行為と処分との均衡を著しく失していて妥当性を欠くものであり、懲戒権者としての都教委に与えられている裁量権の合理的な範囲を逸脱してなされたものといわざるを得ず、違法なものというべきである。」
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以上のようにここでは「停職期間6月」は「違法なもの」として都教委は断罪されています。またこの中には「次は地方公務員である教員としての身分を失うおそれがあるとの警告を与えることとなり」とも述べられていますが、大阪の奥野さんへの<警告書>などはとんでもない大阪府教委の裁量権逸脱と言えるでしょう。

★都教委の機械的な加重処分と思想信条の自由の問題
「都教委は、・・・・国歌斉唱時に起立しなかった教職員に対して、職務命令違反として、1回目は戒告、2回目は給与1月10分の1を減ずる減給、3回目は給与6月の月額10分の1を減ずる減給、4回目は停職1月、5回目は停職3月、6回目は停職6月の各処分を行っており、
l.このような機械的な運用は、もともと機械的に一律に加重処分して処分を行うことには慎重な検討をを要請していた本件国会審議答弁における各答弁内容や本件処分量定を定めた趣旨に反するものといわざるを得ない。しかも、このような学校における入学式、卒業式などの行事は毎年恒常的に行われる性質のものであって、しかも、通常であれば、各年に2回ずつ実施されるものであるから、仮に不起立に対して、・・戒告から減給、減給から停職へと機械的に一律にその処分を加重していくとすると、教職員は、2、3年間不起立を繰り返すだけで停職処分を受けることになってしまし、仮にその後にも不起立を繰り返すと、より長期間の停職処分を受け、ついには免職処分を受けることにならざるを得ない事態に至って、自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることになり、そのような事態は。もともとその者が地方公務員としての教職員という地位を自ら選択したものであることを考慮しても、日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながるもであり、相当ではないというべきである。」
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ここでは最後に、機械的な加重処分は、「日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と述べています。
要するに、都教委は(実質的に)憲法違反を犯していると述べているのです。
また、田中聡史さんへの「再発防止研修」や大阪市の不起立3回で免職などという条例はまさに憲法違反と言えるでしょう。

★さらに損害賠償に関しては次のように述べている
「停職処分は、減給とは異なって、単に経済的な不利益があるだけではなく、一定の期間、その職務が停止されるという職務上の不利益を伴い、しかも、戒告や減給と比較すると、処分を受けたことが外部からも認識することができるものであることや、教員の場合は、停職期間中は教室等で授業をすることができず、教壇に立てないことによって、児童生徒との継続的な人格的触れ合いをすることもできなくなり、ひいては教育活動に欠かすことができない児童生徒との信頼関係の維持にも悪影響を及ぼすおそれがあり、長くなれば なるほど影響も大きくなることを考えると、本件各処分を受けたことにより控訴人らは精神的な苦痛も受けているものというべきである。しかも、控訴人らは、本件各処分による
 停職期間経過後に復職しても、児童生徒との間で当然に信頼関係が回復されるわけではなく、控訴人らにおいて児童生徒との信頼関係を再構築して、再び円滑に人格的な接触を図ることができるようになるまでには、やはり精神的な苦痛を受け、相応の努力を要するものと考えられることなどの事情を総合的に考慮するならば、本件各処分によって控訴人らが被った上記のような精神的苦痛は、本件各処分が取り消されたことによって図られる財産的な損害の回復によって当然に慰謝されて回復することになるものではないというべきである。」

「都教委において、控訴人河原井につき停職3ヶ月、控訴人根津につき停職6月としたことは、いずれも裁量権の合理的な範囲を逸脱したものとして違法というべきであり、そのような処分によって控訴人らが受けた精神的苦痛については損害賠償によって慰謝されるべきものと考えるが、・・(他方において職務命令には違反したとして)・・本件各処分によって控訴人らが被った精神的苦痛に対する慰謝料は、控訴人らそれぞれに対して10万円とするのが相当である。」
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ここでは、教育活動との関係において、「精神的苦痛」を認め、それは「財産的な損害の回復」だけでは慰謝されず、「慰謝料」を払うべきだと述べています。

以上のように、今回の判決は、一方では確かに「職務命令」と原則的には「戒告」処分まで認め、かつ根津さんに関しては停職3ヶ月まで認めているのですが、内容的には河原井・根津さんらの大きな勝利と言って良いでしょう。

■この勝利判決を受けた報告集会で、
★河原井さんは、「すべての処分が取り消されないと完全勝利はない。しかし、一歩一歩階段を上っていると思っている。判決を生かさなければならない」と述べました。
★根津さんは、「まさかこんな判決が出るとは思わなかった。良かった。これで田中さんも救われる。『10・23通達』が根本から覆る、最高裁判決も覆る可能性がある」と述べました。
二人には「河原井さん根津さんらの『君が代』解雇を許さない会」から、抵抗の「白バラ」が贈られました。

全国の仲間のみなさん!
日本が急速に「戦争する国」に向かおうとしている現在、今回の判決は私たちに<大きな希望と勇気>を与えてくれたと思います。
また、「諦めず闘うことの大切さ」を教えてくれたと思います。<希望もて丘越え行けば花ざかり>です。
ともに連帯して闘いを堅持して行きましょう!!

5/28控訴審の報告はレイバーネットにもでていますので、ご覧ください。
http://www.labornetjp.org/

5月25日、再雇用拒否撤回を求める第2次訴訟

5月25日、再雇用拒否撤回を求める第2次訴訟において東京地裁(民事36部吉田徹裁判長)で判決があった。
判決では、「君が代」斉唱時の不起立「のみ」を理由に、東京都が定年退職後の再雇用職員、非常勤教員等の採用を拒否したのは、「期待権を侵害」し「裁量権の逸脱・濫用で違法」として、東京都に原告22名の元都立高校教員に211万円~260万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。報告はすでにブログにアップしたが、写真を添付します。

▼弁護士会館前で


▼原告団を先頭に、地裁へ向かう。

▼勝訴した!




▼判決についての弁護士から説明

▼記者会見



2015年5月30日土曜日

5/28 河原井・根津裁判 高裁で逆転勝訴

5月28日に根津・河原井さんの停職裁判の判決がありました。勝訴!!
近藤徹さんの報告です。

◆都教委にダブルパンチ 河原井・根津裁判 高裁で逆転勝訴!
5月28日、2007年卒業式での「君が代」斉唱時の不起立による職務命令違反を理由とした河原井さん(都立八王子東養護学校・当時)の停職3月、根津さん(町田市立鶴川二中・当時)の停職6月の処分取消訴訟において東京高裁(第14民事部須藤典明裁判長)は機械的な累積加重処分を明確に否定して「裁量権の逸脱・濫用」で「違法」として、両処分の取り消し、さらに精神的苦痛に対する慰謝料各10万円の支払いを命じ、一審地裁判決を変更して逆転勝訴の画期的な判決を出しました。

■判決について
一審東京地裁では、河原井さんの停職3月の処分を取り消したものの、根津さんの停職6月の処分を適法とし、両人の損害賠償請求を棄却していました。また、根津さんは最高裁で減給6月、停職1月、停職3月の取消請求がを棄却されており、東京高裁での逆転勝訴は無理だと思われていました。

須藤裁判長は、主文」を読み上げた後、「判決要旨を述べます」といい、普通は用意したペーパーを読むだけですが、ペーパーを見ることもなく傍聴席に向かって抑揚をつけ語りかける調子で約10分も(驚きです!)判決要旨を述べました。

これにより都教委は、10・23通達(2003年)関連の事件で、25日の再雇用拒否撤回第二次訴訟に続いて敗訴し、再び断罪され、今週だけで司法より痛烈なダブルパンチを浴びせられられました。また、東京「君が代」裁判三次訴訟の31件・26名の減給・停職処分取り消しを除いても、都教委が係わる事件で6連敗(再発防止研修未受講事件(原告福嶋さん)、再任用更新拒否事件(原告杉浦さん)、条件付き採用免職事件(Yさん)、Oさん免職事件の執行停止申立、再雇用拒否撤回二次訴訟、今日の河原井・根津停職事件)となり、都教委の異常性を際だたせる結果となりました。

<判決 主文(抜粋)> (  )内は近藤の注
1 控訴人ら(河原井さん・根津さん)の控訴にに基づき、原判決中、控訴人らの敗訴部分を取り消す。
2 東京都教育委員会が控訴人根津に二対してした平成19年3月30日付け懲戒処分を取り消す。
3 被控訴人(東京都)は、控訴人河原井に対し、10万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被控訴人は、控訴人根津に対し、10万円及びこれに対する平成19年3月30日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
5 控訴人らのその余の請求を棄却する。
6 被控訴人の控訴を棄却する。
7,8 略

<判決文より抜粋 印象的なところ>

★処分量定について
 
(停職出勤などに言及した上で)これらの行為は,前回根津停職処分が間違っているとの控訴人根津の意思を表明する行為であって,・・・上記の行為を勤務時間中に勤務場所で行ったのではなく,・・・具体的に学校の運営が妨害されたような事実はなく,「日の丸」「君が代」が戦前の軍国主義等との関係で一定の役割を果たしていたとする控訴人・・・の歴史観や世界観に基づく思想等の表現活動の一環としてなされたものというべきであるから。・・・本件根津停職処分における停職期間の加重を基礎づける具体的な事情として大きく評価することは,思想及び良心の自由や表現の自由を保障する日本国憲嬢の精神に抵触する可籠性があり,相当ではないというべきである。
 
・・・停職処分は,・・・処分それ自体によって一定の期間における教員としての職務の停止及び給与の全額不支給という直接的な職務上及び給与上の大きな不利益を与える処分であって,将来の昇給等にも相応の影響が及ぶだけではなく,・・・条例によれば,停職期間の上限は6月とされていて,停職期間を6月とする本件根津停職処分を科すことは,・・・更に同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって,次は地方公務員である教員としての身分を失うおそれがあるとの警告を与えることとなり。その影響は。単に期間が倍になったという量的な問題にとどまるものではなく,身分喪失の可能性という著しい質的な違いを・・・意識させざるを得ないものであって,極めて大きな心理的圧力を加える結果になるものであるから十分な根拠をもって慎重に行われなければならない・・・。

★本件各処分の違法性及び都教委の過失の有無について
本件各処分が懲戒権者としての裁量権の範囲を逸脱してなされたものとして違法であることは、上記説示の通りであるが、・・・都教育庁指導部は,平成14年11月に本件指導資料を作成し,国旗・国歌の法制化に当たり,主要国会審議における内閣総理大臣,文部大臣及び政府委員からの答弁・・・を掲載したが,その中には,学校における国旗・国歌の指導と,児童・生徒の内心の自由との関係についての答弁として,「学習指導要領に基づいて,校長,教員は,児童生徒に対し国旗・国歌の指導をするものであります。このことは,児童生徒の内心にまで立ち至って強制しようとする趣旨のものでない」との内閣総理大臣の答弁,「単に従わなかった,あるいは単に起立をしなかった,あるいは歌わなかったといったようなことのみをもって,何らかの不利益をこうむるようなことが学校内で行われたり,あるいは児童生徒に心理的な強制力が働くような方法でその後の指導等が行われるということはあってはならない」との政府委員の答弁が掲載されていることが認められ,上記答弁をみると,国旗国歌法制定に至る国会審議の過程においても,国旗国歌に対する起立及び国歌斉唱には,日本国憲法が保障している思想及び良心の自由との関係で微妙な問題を含むものであること・・・「個人の歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行為(敬意の表明の要素を含む行為)を求められることとなり,その限りにおいて,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があること」・・・が意識されていたことが認められる。したがって,国旗国歌法制定に当たって,外部的行為は,思想及び良心の自由との関係で微妙な問題を含むものであることにも配慮して,起立斉唱行為を命ずる職務命令に従わず,殊更に着席するなどして起立しなかった者について懲戒処分を行う際にも、その不起立の理由等を考慮に入れてはならないことが要請されているものというべきである。

・・・また,・・・処分量定はあくまで標準であり,個別の事案の内容や処分の加重につい・ては,表に掲げる処分量定以外とすることもあり得るものと定められていることを考慮すると,本件処分量定が定めている「処分量定の加重」ということは,必ず加重しなければならないという意味での必要的な加重を定めているものではないと解される。しかも,上記認定のとおり,本件指導資料に掲載された本件国会審議答弁には,国旗・国歌の指導に関する教職員への職務命令や処分についての答弁として,「職務命令というのは最後のことでありまして,その前に,さまざまな努力ということはしていかなきゃならないと思っています。」との文部大臣の答弁,「実際の処分を行うかどうか,処分を行う場合にどの程度の処分とするかにつきましては,基本的には任命権者でございます都道府県教育委員会の裁量にゆだねられているものでございまして,任命権者である都道府県におきまして,個々の事案に応じ,問題となる行為の性質,対応(ママ),結果影響等を総合的に考慮して適切に判断すべきものでございます。・・・なお,処分につきましては,その裁量権が乱用されることがあってはならない」との政府委員の答弁,「教育の現場というのは信頼関係でございますので,・・・処分であるとかそういうものはもう本当に最終段階,万やむを得ないときというふうに考えております。このことは,国旗・国歌が法制化されたときにも全く同じ考えでございます。」との文部大臣の答弁が掲載されていることが認められるのであって,このような上記答弁の趣旨は,国旗国歌法制定に当たり,国旗の掲揚や国歌の斉唱に関する指示や職務命令等に従わない教職員に対する懲戒処分を発令する場
合には,問題となる行為の性質,態様,結果,影響等を総合的に考慮して適切に判断すべきであることや、園発令が合理的な裁量嫌悪範囲を逸脱したり、裁量権を濫用してなされるものであってははならない・・・。

★(体罰の事案との比較で 累積加重処分について)
都教委は,体罰に至る背景事情,体罰等の態様,傷害の有無・程度,児童・生徒への影響,過去の処分等を総合的に判断し,.量定を決定しており,個別の事案ごとに処分を決定し,あらかじめ体罰の回数に応じて機械的に一律に処分を加重していくという運用はしていないことが認められる。

そうすると,本件処分量定においても,本件国会審議答弁においても,機械的に一律に処分を加重して行うことには,もともと慎重な検討が要
請されていたものということができる。しかるに,都教委は,上記認定のとおり,平成15年11月から12月にかけて行われた都立学校の周年記念式典以降,入学式,卒業式又は周年記念式典において,校長から起立斉唱行為を命ずる職務命令が発せられていたにもかかわらず,国歌斉唱時に起立しなかった教職員に対して,職務命令違反として,1回目は戒告,2回目は給与1月の月額10分の1を減ずる減給,3回目は給与6月の月額10分の1を減ずる減給,4回目は停職1月,5回目は停職3月,6回目は停職6月の各処分を行っており,このような機械的な運用は,もともと機械的に一律に加重して処分を行うことには慎重な検討を要請していた本件国会審議答弁における各答弁内容や本件処分量定を定めた趣旨に反するものといわざるを得ない。しかも,このような学校における入学式,卒業式などの行事は毎年恒常的に行われる性質のものであって,しかも,通常であれば,各年に2回ずつ実施されるものであるから,仮に不起立に対して,上記のように戒告から減給,減給から停職へと機械的に一律にその処分を加重していくととすると,教職員は,2,3年間不起立を繰り返すだけで停職処分を受けることになってしまい,仮にその後にも不起立を繰り返すと,より長期間の停職処分を受け,ついには免職処分を受けることにならざるを得ない事態に至って,自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては,自らの思想や信条を捨てるか,それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり,・・・日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながるものであり,相当ではないというべきである。

★(累積加重処分の否定)

上記のところを考慮するならば,被控訴人においては,起立斉唱の職務命令に反して起立して斉唱しなかった控訴人らに対して不利益処分を科す際には,その処分が控訴人らの個人的な思想及び良心の自由に対しても影響を与えるものであることを十分に考慮した上,不起立の回数によって機械的かつ一律に加重して処分を行うのではなく,本件各処分の対象となった不起立等の態様や,不起立によって式典にどのような影響が生じたのか等を個別具体的に認定し,想定される処分がなされた場合に生ずる個人的な影響や社会的な影響等をも慎重に検討した上で,それぞれの非違行為にふさわしい処分をすべきものであった。

しかるに,本件では,都教委が控訴人らに対して本件各処分を行うに当たり,本件各不起立の性質,実質的影響,本件各処分によって控訴人らが受けることになる不利益,社会的影響等についても十分に考慮した上で慎重に検討されたことを認めるに足りる的確な証拠はない。そうである以上,本件各処分には懲戒権者に与えられている合理的な裁量権の範囲を逸脱した違法があるものといわざるを得ず,しかも,上記認定のとおり,本件指導資料に掲載された本件国会審議答弁の内容やその趣旨は、都教委関係者は当然い理解しておくべきであって、・・・機械的かつ一律に処分を加重することを許容すべき者ではないことは明らかで・・・都教委には本件各処分に際して過失があったものと言わざるを得ず、国賠法上も違法性が認められるというべきである。

5/29東京新聞報道 「君が代不起立逆転勝訴」


2015年5月27日水曜日

5/25 再雇用拒否二次訴訟 勝訴、都教委を断罪! 損害賠償を命じる

 5月25日、再雇用拒否撤回を求める第2次訴訟において東京地裁(民事36部吉田徹裁判長)、「君が代」斉唱時の不起立「のみ」を理由に、東京都が定年退職後の再雇用職員、非常勤教員等の採用を拒否した事案について、「期待権を侵害」し「裁量権の逸脱・濫用で違法」として、都に原告22名の元都立高校教員に211万円~260万円の損害賠償を命じる判決を言い渡しました。近藤徹さんの報告です。

本件訴訟は、2007年度~2009年度に再雇用を拒否された原告(元都立高校教員25名・当時。現在の原告数22名)が2009年9月東京地裁に提訴して、「君が代」斉唱時の不起立を理由とした再雇用拒否等が違憲であり、かつ東京都・都教委の「裁量権の逸脱・濫用」であることを争点として「損害賠償」を求めて争ってきた事案です。この間お亡くなりになった2名の原告も今日の勝訴を待ちわびていたと思うと残念でなりません。

判決内容は、都教委の主張をことごとく斥け不当な採用拒否を断罪しています。以下長いですが、裁判所発行の判決骨子(全文)をお読みください。

<骨子>


平成27年5月25日午後1時30分判決言渡103号法廷
平成21年(ワ)第34395号損害賠償請求事件
東京地裁民事第36部 吉田徹裁判長松田敦子吉川健治

判決骨子

1 当事者
原告○○ほか2 1 名  被告東京都

2 事案の概要
本件は,東京都立高等学校の教職員であった原告らが,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)が平成18年度,平成19年度及び平成20年
度に実施した東京都公立学校再雇用職員採用選考又は非常勤職員採用選考等において,卒業式又は入学式の式典会場で国旗に向かって起立して国歌を斉唱することを命ずる旨の職務命令(以下「本件職務命令」という。)に違反したことを理由として,原告らを不合格とし,又は合格を取り消した(以下,これらの選考結果等を「本件不合格等」という。)のは,違憲,違法な措置であるなどとして,都教委の設置者である被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償金の支払を求めた事案である。

3 主文
(1)被告は,原告○○ほか6名に対し,それぞれ211万1670円及びこれに対する平成19年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被告は,原告○○ほか7名に対し,それぞれ259万8420円及びこれに対する平成20年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を払え。
(3)被告は,原告○○ほか6名に対し,それぞれ259万6440円及びこれに対する平成21年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

4 理由の骨子
(1)再雇用制度等の意義やその運用実態等からすると,再雇用職員等の採用候補者選考に申込みをした原告らが,再雇用職員等として採用されることを期待するのは合理性があるというべきであって,当該期待は一定の法的保護に値すると認めるのが相当であり,採用候補者選考の合否等の判断に当たっての都教委の裁量権は広範なものではあっても一定の制限を受け,不合格等の判断が客観的合理性や社会的相当性を著しく欠く場合には,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法と評価され,原告らが有する期待権を侵害するものとしてその損害を賠償すべき責任を生じさせる。

(2)原告らに対する不合格等は,他の具体的な事情を考慮することなく,本件職務命令に違反したとの裏実のみをもってエ重大な非違行為に当たり勤務成績が良好であるとの要件を欠くとの判断により行われたものであるが,このような判断は,本件職務命令に違反する行為の非違性を不当に重く扱う一方で,原告らの従前の勤務成績を判定する際に考慮されるべき多種多様な要素,原告らが教職員として長年培った知識や技能,経験,学校教育に対する意欲等を全く考慮しないものであるから,定年退職者の生活保障並びに教職を長く経験してきた者の知識及び経験等の活用という再雇用制度,非常勤教員制度等の趣旨にも反し,また,平成15年10月に教育長から国旗掲揚・国歌斉唱に関する通達が発出される以前の再雇用制度等の運用実態とも大きく異なるものであり,法的保護の対象となる原告らの合理的な期待を,大きく侵害するものと評価するのが相当である。

したがって,本件不合格等に係る都教委の判断は,客観的合理性及び社会的相当性を欠くものであり,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たる。よって,都教委は,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用して,再雇用職員等として採用されることに対する原告らの合理的な期待を違法に侵害したと認めるのが相当であるから,他の争点について検討するまでもなく,都教委の設置者である被告は,国家賠償法に基づき,期待権を侵害したことによる損害を賠償すべき法的責任がある。

(3)再雇用職員等の運用実態,雇用期間等を考慮すると,原告らが再雇用職員等に採用されて1年間稼働した場合に得られる報酬額の範囲内に限り,都教委の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用による原告らの期待権侵害と相当因果関係にある損害と認めるのが相当である。

5/25 東京地裁の「再雇用拒否」判決 「裁量権の乱用で違法」

 5月25日、東京地裁(吉田徹裁判長)で、「君が代」不起立で再雇用を拒否された元教職員ら22人に対し、都に損害賠償(総額約5370万円)を命じる判決が出されました。理由は都教委の「裁量権の乱用で違法」です。これはある意味画期的な勝訴判決だったと思います。渡部さんのコメントです。

◆判決文から

判決文の中には次のような部分があります。
 「本件不起立等の態様が、他の教職員や生徒らに不起立を促すものでも、卒業式等の進行を阻害し、又は混乱させるようなものでもなく、厳粛な雰囲気の中で行われるべき前記の卒業式等(儀式的行事)の狙いを大きく阻害するなどの影響を与えたとまでは認められない ことを考慮すれば、原告らの本件職務命令違反の非違性の程度が特に重いものであるとは認められないというべきであり、・・」
ここで、書かれていることは、これまでのすべての不起立者に当てはまることです。

また、次のような部分もありました。
 「原告らの本件不起立等の動機、原因は、その歴史館又は世界観等に由来する君が代や日の丸に対する否定的評価等のゆえに、本件職務命令により求められる行為と自らの歴史館又は世界観に由来する外部的行動とが相違することにあり、個人の歴史観又は世界観等に起因するものであると認められるところ(弁論の全趣旨)、本件職務命令が原告らのこうした歴史観又は世界観等を含む思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面が
 あることは否定できず、その思想信条等に従ってされた行為を理由に大きな不利益を課すことには取り分け慎重な考慮を要するのであって、上記の点は非違行為の重大性を根拠に付ける理由としては不十分というべきである(最高裁平成23年5月30日第二小法廷判決・民集 65巻4号1780頁等、最高裁平成24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号1頁等参照)。
これも、ほとんどの不起立者に共通したものではないでしょうか。
今回の判決はここまで明確に、「歴史観又は世界観等を含む思想及び良心の自由」
について述べています。
この判決に従えば、東京の田中聡史さんへの減給処分と<再発防止研修>や大阪の奥野さんへの戒告処分と<警告書>などは、あってはならないものです。
また、戒告となった大阪の松田さんはここに述べてあることを正面から問題にしています。

さらに次のようにも述べています。
 「原告らが被った精神的損害の主たる原因は、原告らがそれぞれの思想信条、すなわち、多様な価値観の尊重やそれを教育の場で実践することを重視する考え、日の丸及び君が代の歴史的意義に対する考え、国旗掲揚・国歌斉唱を一律に強制することに反対する考え等に基づいて本件職務命令に従わなかったことにより、戒告処分等の懲戒処分のみならず、最終的には、本件不合格等とされ、再雇用職員等として都立高校の教壇に再び立つ機会を
不当に奪われた(期待を裏切られた)という点にあると認めるのが相当であり、本件不合格等に至るまでの過程における本件通達その他都教委の対応に係る原告らの個々具体的な心情等を、上記の精神的損害とは切り離して別途の損害として認めることは相当でないというべきである。」このようにして損害賠償が認められました。
ところで、ここに述べられていることは、停職6ヶ月まで多くの処分を受け、多大の賃金カットを被り、繰り返し教壇に立つ機会を奪われ、かつその度に転勤を強要された根津公子さんこそが、もっともよく当てはまる事例だと言えるでしょう。
都教委は、ひどい処分を根津さんに繰り返し、減給処分でさえその多くが取り消されているにも関わらず、6ヶ月停職処分をいまだ撤回せず、根津さんと裁判で争っているのです。

しかし、今回の判決はそうした根津さんへの「過酷な見せしめ処分」を浮き上がらせることにもなりました。都教委の外堀は次第に埋められつつあると思います。

世の中の危険な動きが、これまで多くの被処分者たちが訴えてきた「日の丸・君が代」強制の本質を浮き彫りにし、裁判官も感じるところがあったのではないでしょうか。

2015年5月26日火曜日

5/25東京新聞報道「再雇用拒否 都に賠償命令」

 5月25日(月)に、「君が代」不起立・処分に基づく「再雇用拒否第二次訴訟」の東京地裁判決がありました。地裁吉田徹裁判長は「再雇用拒否」は都教委の「裁量権の逸脱・濫用で違法」・損害賠償を命じる判決を下しました。

▼東京新聞

Image2判決

▼毎日新聞

Image3

2015年5月25日月曜日

5/21 都教委定例会の傍聴報告 根津公子さん

 5月21日(木)、都教委の定例会がありました。根津さんの報告を送ります。

052122

この日は体罰問題   教育委員の体罰に対する認識は甘いのではないか?!

◆定例会の報告

議案は校長の任命について、教員等の懲戒処分2件でともに非公開議案。
報告が①昨年度の体罰実態把握の報告 ②市ヶ谷地区特別支援学校(仮称)の設置場所の変更について ③教員の懲戒処分(非公開)。①②について以下、報告する。

 ①2012年度から調査を始めて、体罰の3年間の推移と昨年度の傾向や事例の報告であった。報告は、
ア.「体罰を受けた・目撃したとの報告数は、教職員本人からが267件、他の教員からが134件、児童・生徒本人からが494件、他の児童・生徒からが305件、保護者からが101件、地域住民からが1件(1事案につき複数の報告あり)。
イ.体罰」をしたのは68人(うち、常勤教員が61人)。前年度比マイナス54人。2012年度と比較すると3分の1に減少した。「不適切な行為(行き過ぎた指導や暴言)」は324人。前年度比マイナス451人。「指導の範囲内(短時間正座させるなど極軽微な有形力の行使)」は261人。前年度比マイナス126人。
.5カ月間の間に5回の体罰を振るったり、傷害を負わせたりするなどの体罰が18件。
.「感情的になってしまった」「言葉で伝えきれなかった」ことから体罰に至った者が、45人(74%)。
.体罰により処分を受けた者で、再び体罰を行った者は4人。前年度の12人より減少。

 報告を受けて遠藤委員のした質問が、気になった。「調査することでのマイナス面はないか。『それは体罰じゃないか』と教員が子どもたちから糾弾されるということを耳にする。教員が委縮しないか。」との発言だった。その発言を聞いて、私は2つの発言を思い出した。

  一つは2013年4月11日の定例会での竹花発言だ。「(部活動での:筆者補足)死ね、殺す、出ていけ、という強い発言、…今くらいのことは精査しなくていい。こんなのは指導の範ちゅうだ。」(この発言は私と一緒に傍聴していた友人3人も聞いているが、議事録にはない。議事録の改ざんについて都教委に質問書を出したが、「竹花委員の発言は、ホームページに掲載されている通り」との回答。傍聴した私たちは議事録が改ざんされたと確信している。)
 もう一つは、同年9月12日の定例会での山口委員の発言。「(体罰の)報告書はよくまとまっていると思う。しかし、これによって教員が萎縮してしまうのではないかと危惧する。暴言は今までの習慣なので、いっぺんに正すのは難しい。徐々に正していくことだろう。」

なぜか、教育委員の発言には体罰を必要悪ととらえる傾向がある。確かに子どもたちの中
には、弱い者いじめの行動をとる子もいることは否定できないが、多くは大人の暴力・力による支配を見て学習してのことなのだ。

全文

http://www.labornetjp.org/news/2015/0521nezu

2015年5月24日日曜日

5/21 「君が代」処分取消を求めて都人事委員会に不服審査請求

 5月21日(木)、3月卒業式、4月入学式での「君が代」不起立を理由にして減給処分を受けた都立特別支援学校の教員1名及び東京地裁判決で減給処分を取り消され都教委が控訴を断念したにもかかわらず戒告の再処分を受けた都立高校教員9名の計10名は、処分取消を求めて東京都人事委員会に不服審査請求を行い、都庁記者クラブで記者会見を行いました。近藤徹さんから報告です。

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◆都人事委員会への不服審査請求の内訳
<卒業式・入学式に係わる処分取消請求> 2件・1名(卒業式・入学式とも同一人)
 卒業式 1名(都立板橋特別支援学校・当時) 減給10分の1・1月 3/30発令
 入学式 1名(都立石神井特別支援学校)   減給10分の1・1月 4/28発令

<再処分に係わる処分取消請求> 9件・9名 いずれも戒告処分
東京「君が代」裁判第三次訴訟の東京地裁判決(本年1月16日)で減給処分取り消し。都教委が控訴を断念して判決が確定。しかし都教委は、現職の教員に改めて戒告処分を発令(以下再処分という)。

(発令月日)(人数)(学校名・当時) (取り消された処分) (同発令年月) 
(備考)
3月30日 1名 都立蔵前工業高校 減給10分の1・1月 2008年3月 本年3月退職

4月28日 8名 都立農芸高校   減給10分の1・1月 2007年3月
         同 昭和高校       同上      2007年3月
         同 工芸高校       同上      2007年5月
         同 日本橋高校   減給10分の1・6月 2007年5月
         同 東大和高校   減給10分の1・1月 2007年5月
         同 多摩工業高校    同上      2008年3月
         同 永山高校   同上      2008年3月
         同 武蔵丘高校   減給10分の1・6月 2009年3月

◆許せますか? ストーカー的処分 6~8年前の事案で

上記のように、地裁で減給以上の処分は違法であるとして敗訴し、自ら控訴を断念して「降伏」したのに、原告・都民らに謝罪し、二度と同じことが起こらないよう再発防止策を講じるどころか居直って6~8年前の事案で再処分。こんなストーカー的処分をする非常識な都教委を許せますか? 教職員をイジメ、処分という「暴力」で押さえ込む都教委に「イジメ」を語る資格はありません。
 なお、問題の発端である「日の丸・君が代」を強制する10・23通達(2003年)発出に係わった教育委員、教育長らは今や一人もいないのです。10・23通達を見直すいい機会だというのに。

◆被処分者の会は記者会見で下記の声明を発表しました。問題点、現状がよくわかり
ますのでお読みください。
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報道関係者各位

「君が代」処分取消を求める都人事委員会不服審査請求にあたっての声明

 東京都教育委員会(都教委)は、卒業式・入学式での「君が代」斉唱時の不起立を理由に都立特別支援学校の教員1名に減給1月の処分を発令し(2015年3月30日付及び4月28日付)、また2015年1月の東京地裁判決で減給1月・減給6月の懲戒処分を取り消された現職の都立高校教員9名に対して、新たに戒告処分(以下再処分という)を発令しました(同年3月30日付及び4月28日付)。
 これに対して、本日、当事者10名は、被処分者の会弁護団を代理人に同処分の取り消しを求め都人事委員会に不服審査請求を行いました。
 卒業式、入学式などで「日の丸・君が代」を強制する10・23通達(2003年)に基づく懲戒処分の数は延べ474名にのぼります(再処分16名を含む)。この数字は、東京の教育行政の異常さを雄弁に物語っています。

 周知のように、最高裁判決(2012年1月16日及び2013年9月6日)は、起立斉唱・ピアノ伴奏を命ずる職務命令が「思想及び良心の自由」の「間接的制約」であることを認め、「戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要」で「処分が重きに失し、社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者の裁量権の範囲を超え、違法」として、減給・停職の懲戒処分を取り消しました。
 しかし都教委は、減給処分を違法とした最高裁判決を謙虚に受け止めず、その趣旨を無視して、卒業式、入学式で減給処分を出し続けています。それどころか、本年1月16日の東京地裁判決で自ら控訴を断念して減給処分取り消しが確定した現職の都立高校教員全員に再処分を科すという前代未聞の暴挙を行っているのです。 これらは、処分を振りかざして教職員を萎縮させ屈服させようとする都教委の「暴力的体質」を露呈しています。

 今都教委のなすべきことは、最高裁判決を謙虚に受け止め、違法な処分により筆舌に尽くしがたい精神的、経済的損害を被った被処分者への謝罪と名誉回復・権利回復を早急に行うことです。また、司法により違法とされた処分を行った組織の在り方を点検し、責任の所在を明らかにし、再発防止策を講ずることです。そして10・23通達から12年経ち、通達発出当時の教育委員がすべて交代しているこの機会に、10・23通達に基づく「日の丸・君が代」強制の一連の施策を抜本的に見直すことです。

 私たち被処分者の会・原告団と弁護団は、これまで何度となく、都教育委員会及び教育庁関係部署との話し合いを求めてきました。にもかかわらず都教委は、「話し合い」を拒否して問題解決のための努力を放棄する不誠実な対応に終始しています。

 請求人らは、人事委員会審理を通じて、東京都教育委員会(都教委)の「暴走」を告発し、教職員や生徒らの「思想・良心の自由」を守り、自由で民主的な教育を甦らせ、生徒が主人公の学校を取り戻すために、教職員・生徒・保護者・市民と手を携えて、「日の丸・君が代」強制に反対し、不当処分撤回まで闘い抜く決意です。ご理解を心から訴えるものです。
                    2015年5月21日
「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会・東京「君が代」裁判原告団

◆裁判ウイーク 再雇用拒否撤回第二次訴訟は25日に判決 傍聴・支援を!

 5月22日の東京「君が代」裁判第四次訴訟第5回口頭弁論を皮切りに、来週にかけて「日の丸・君が代」強制反対の裁判が続きます。

再雇用拒否撤回第二次訴訟(私近藤も原告です)は、提訴以来5年8月。この間無念にも2人の原告がお亡くなりになりました。そしていよいよ来週25日(月)に東京地裁で判決があります。

都教委は、これまで卒・入学式などで「日の丸・君が代」を強制する「10.23通達」で処分された教職員の再雇用(嘱託・再任用・非常勤教員など)を拒否してきました。採用を拒否された人の数は70名を越えています。

そもそも東京都職員の再雇用制度は、東京都労働組合連合会(都労連)と東京都の交渉で、退職後の年金支給開始までの生活を維持するために制度化したものです。

2005年度・2006年度に採用を拒否された人たちが「採用拒否撤回・損害賠償」を求めた訴訟(第1次訴訟)は、残念ながら2011年6月に最高裁で敗訴しました。

本訴訟(第2次訴訟)は、2007年度~2009年度に再雇用を拒否された原告(元都立高校教員25名・当時。現在の原告数22名)が2009年9月東京地裁に提訴して、「君が代」斉唱時の不起立を理由とした再雇用拒否等が違憲であり、かつ東京都・都教委の「裁量権の逸脱・濫用」であることを争点として「損害賠償」を求めて東京地裁民事36部で争ってきました。

この間、国・東京都の再雇用制度も改定され、定年後の継続雇用が制度化されています。こうした動向を踏まえて東京地裁がどのような判断をするか注目されます。また、本判決は、東京都職員、とりわけ公立学校の教職員の退職後の継続雇用にも大きな影響を及ぼすものと思われます。

皆さんの傍聴・支援を心から訴えます。

★再雇用拒否撤回第二次訴訟・地裁判決→いよいよ判決です!
(東京地裁民事36部。07・08・09年再雇用拒否の損害賠償請求、原告22名)
5月25日(月)
 12時50分 原告・弁護団行進(弁護士会館→裁判所)
 13時 傍聴希望者裁判所前集合(傍聴抽選なし・先着順)
     →早めに来て更新を迎えてください。
 13時30分 開廷 
 東京地裁103号(大法廷・定員98名)
 報告集会:ハロー貸会議室虎ノ門3F(案内あり) 
 *早めにお出で下さい。旗出しがあるので入れなかった方も裁判所前でお待ちください

◆三次訴訟 いよいよ高裁控訴審の闘いが始まる 再処分を許すな!

現職の都立高校教員9名の再処分の不当性も争点になります。第1回弁論では三次訴訟地裁判決で減給処分を取り消され、二次訴訟に続き都教委による不当極まりない2回目の再処分を受けたIさんが意見陳述します。

★東京「君が代」裁判第三次訴訟・控訴審第1回口頭弁論
(東京高裁第21民事部。2007~09年処分取消請求、原告50名)
東京地裁で一部勝訴(減給・停職処分31件取り消し、戒告処分容認、損害賠償請求棄却)。双方が控訴し、いよいよ高裁での闘いが始まりました。
 5月26日(火)
  15時10分(予定)傍聴整理券交付〆切
           (抽選があるので遅れないでください。)
  15時30分 開廷 
  東京高裁101号(大法廷 定員98名)
  内容:原告(2回目の再処分該当者)・弁護士の意見陳述
  報告集会&再処分抗議集会:ハロー貸会議室虎ノ門3F(案内あり)

2015年5月14日木曜日

5/13 入学式「不起立」で再発防止研修~田中聡史さん動ぜず

5月13日朝9時から12時30分まで、入学式での「君が代」不起立で処分されたたなか諭しさんへの再発防止研修が行われました。その報告です。

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◆再発防止研修に抗議
「この研修をすぐにやめて下さい。田中さんを学校に戻してください」の声がひびきわたった。5月13日、水道橋の東京都教職員研修センターの前には約50名の市民や元教員が集まり、今春の入学式で10回目の「君が代」不起立をした田中聡史さん(都立石神井特別支援学校教員)に対する再発防止研修に抗議した。
 澤藤・東京「君が代」裁判副弁護団長は、「東京都は、400年前のキリシタン弾圧や特高警察がやっていたと同じ思想・良心に対する弾圧をやっている。都知事や教育長は変わっているのに、10・23(2003年「君が代」強制の通達が出された日)体制を続けることは非常に不自然だ」と都教委に抗議した。

051307

レイバーネットにも報告があります。
全文→http://www.labornetjp.org/news/2015/0513tanaka

2015年5月13日水曜日

5/11 河原井さんと根津さんの08年09年の「君が代」不起立処分裁判

◆5月11日(月)東京地裁で、河原井さんと根津さんの08年、09年の「君が代」不起立処分(ともに停職6ヶ月処分)に関する裁判がありました。渡部報告。
中身は前回口頭弁論での被告(都教委)主張に対する<反論その1>でした。

■都教委の主張に対する岩井弁護士の反論
主に以下の項目について、岩井弁護士からかいつまんでの紹介がなされました。
(1)憲法19条違反について
(2)教育の自由について(憲法23、26条、教育基本法16条違反
(3)損害賠償請求について

そのうち(1)については、特に、「日の丸・君が代」の歴史性について不問にしたまま、
 特定の形式での敬意の表明を、懲戒処分によって一律に強制することの問題」、「論争的主題である『日・君』に関し、一方的見解の教授を強制することの問題」
が指摘されました。

(2)については、都教委が教師は「職務権限」にもとづいて教育活動を行う、ということに対し、「最近の学説では『教師が国家権力と向き合う場面』では『職務権限としての側面と、人権としての側面を併せ持つ」という併存説が有力」と指摘されました。

(3)については、「最高裁判決でも「停職処分」は特段の配慮が必要とされている。
 慎重な配慮が必要なのになぜ出されたのか。都教委の機械的適用がその本質にある」
と指摘されました。

■裁判所に行く地下鉄の中で私は『フランス革命期の公教育論』(岩波文庫)の中の<公教育の全般的組織についての報告と法案>(コンドルセ、1792年4月20、21日)を読んでいました。そこには次のような部分がありました。

 「あらゆる教育の第一条件は真理のみを教えることにあるから、公権力が教育にあてる諸機関は、あらゆる政治的権威から可能なかぎり独立していなければならない。」(13ページ)

 「いかなる公権力も、新しい真理の展開を妨げたり、個々の政策や一時的な利害に反する理論の教育を妨げたりするほどの権威や影響力を持ってはならない。」(15ページ)

 「公権力が教育に適した書物を指定しなければならない。しかし科学全体が教えられねばならないリセ(高校:渡部注)では、教える方法の選択は教授に任せられる。
 そのことから、このうえなく貴重な利点が生じる。
 すなわち教育の堕落を完全に防ぐことができること、政治状況と結びついて、教科書が危険な学説に汚染された場合でも、リセでの自由な教育によってこの歪曲から生じる結果が防止されること、真理の表明が抑圧されるおそれがないこと、である。」(70ページ)
これらのことを読むと、教育基本法改悪後の日本の教育は、フランス革命以前に逆戻りしたのかと思わざるを得ません。なんと情けないことでしょうか。
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◆裁判終了後、都教委と、都立高校生の防災訓練を自衛隊駐屯地でやる問題について、質問と申し入れをする場に参加しました。

 この質問・申し入れは、パンフ『高校生をリクルートする自衛隊・自衛隊の手法を取り入れている教育行政』編集委員会のメンバーが行いました。
<都立高校の自衛隊施設での防災訓練等の自衛隊体験入隊に対しての質問>書の提出。

●都教委は、相変わらず教育情報課が出てきて話にならず。参加者(12人)から、こうした都教委のシステムに対する強い怒りが出されました。
「石原都知事の前にはこうしたシステムはなかった。すでに石原はやめているのだから、こうしたシステムもやめるべきだ。」との声も上がりました。

●質問項目の具体的な内容は省略しますが、要は、都教委は繰り返し「あくまでも防災訓練である」と言っていますが、防衛省は「隊内生活体験のことを向こう(教育庁)は防災訓練と言っている。うちは(地本)隊内生活体験だ」と述べているのです。
また、都教委の防災要項には「上級救命講習を受ける」と示されていますが、防衛省は、それは行っていず、また「防災訓練のプログラムはない」としています。

つまり、都教委のやっていることは、「防災訓練」に名を借りた、自衛隊での「隊内生活体験」(体験入隊)です。安倍首相が「軍隊」と言うなら「軍事訓練体験」に他なりません。

●昨年7月、集団的自衛権での武力行使が閣議決定で容認されました。この4月、日米ガイドラインが改定されました。こうして、今、全世界的規模で紛争地への自衛隊派遣がなされようとしています。こうした情勢下では、戦前のような「軍事教練」が、今後、高校生たちに実施される可能性は十分にあります。
ちなみに、千葉県の長生高校では、いわゆる15年戦争開始の年の1931年(「満州事変」勃発の年)に、「軍事教官排斥運動」ということが起きています(結局潰されましたが)。

●都教委は嘘に嘘を塗り固め、いつかきた道を歩み始めました。私たちは、こうした動きに対し、反対の大きな声を上げる必要があります。
次回(6月頃)は、もっと多くの参加者で都教委に迫る必要があると思います。また、「7月半ばには集会を開こう」ということになりました。