教育委員の皆さん、育鵬社・自由社教科書を採択しないで!
ー都立中学校教科書採択に向けて都教委作成の資料を配付ー次回の定例会(7月27日・月)で来年度から4年間使用する都立中学校・特別支援学校中学部の教科書採択が予定されている。
6月26日の前回定例会では、都教科用図書選定審議会の認可を得た「調査研究資料」が配付された。同資料は、各教科で学ぶべき内容や視点よりも、より重要なのは「都教委の基本方針等を踏まえ」ているか、すなわち、「我が国の位置と領土をめぐる問題の扱い」「国旗・国歌の扱い」「神話伝承を知り、日本の文化や伝統に関心を持たせる資料」等の記載があるか否かを調査したというものだった。
これを基に、今日の定例会では、「中高一貫教育の特色を踏まえつつ、各学校の特色を考慮し」て、学校ごとの「教科書調査研究資料」「教科書採択資料」(内容が重複している)を作成し配付した。またもや、都教委の意思満載である。
教科書採択は、教育委員が「都教委の責任と権限の下」行うとする。資料はそれに「資する目的」で作ったと都教委は言う。しかし、すべての教育委員が全教科に精通しているだろうか。生徒たちが各教科書の記述をどう受け取り興味を持つか、それを教員がどう発展させることができるかを、想像できるだろうか。そもそも、全教科書145冊を読破する時間を持てるだろうか。「否」は明白だろう。
かつて、1990年代初めまでの教科書採択は、権限は現在と同じに教育委員会にあったが、実質は、各区市町村の教員たちが検討し学校ごとの意見を持ち寄って行ってきた(戦後は各学校が教科書を選んできたが、1963年の教科書無償化と引き換えに採択権限が教育委員会に替えられた)。現場の教員たちに採択権を戻すこと、少なくとも現場の教員の意見を聴くことこそが「教育行政の責任と権限」であり、教育委員の仕事ではないか。教育委員たちには、この点を深慮してもらいたい。
■「教科書採択資料」の記述について
まずは国語で見てみよう。
「話すこと、書くこと、読むことの単元数」「読むことの文種別作品数」を数えたほかに、次にあげる調査研究項目7点の中から各学校の特色を考慮して、4点を選び教材数を数え記す。
「1.日本の文化・伝統を学ぶ古典の教材数 2.日本の文化・伝統を扱っている古典以外の教材数 3.国際的な視野に立った内容を扱っている教材数 4.豊かな読書活動へと発展する教材数 5.音声言語による伝え合う力の育成を図る教材数 6.論理的な思考力・表現力を育てる教材数 7.文章表現能力の育成を図る教材数」。
「『開拓精神』を教育理念とし」、「授業、行事、部活動において日本の伝統文化を積極的に取り入れている」(当校HP)
白鷗高校附属中の調査内容は、上記項目のうちの「2.3.6.7.」。富士高校附属中は「4.5.6.7」で、「1~3」を調査しない唯一の学校。教材数を数えたところで何の意味があるのか。教材・作品を読まなければ、採択資料とはならないのは明らかだ。
公民では、
「自由・権利について記述している箇所数」「責任・義務について記述している箇所数」「宗教や伝統文化について取り上げている箇所数」「我が国の位置と領土をめぐる問題を扱っているページ数」「国旗・国歌を扱っている箇所数」「北朝鮮による拉致問題を扱っているページ数」を数えるほかに、「1.我が国の伝統と文化を扱っている箇所数 2.調べ学習の仕方を紹介しているページ数 3.国際社会の諸課題として扱っている箇所数」のうち、各学校の特色を考慮して2項目について個所数・ページ数を記す。
「我が国の伝統と文化を扱っている箇所数」が最も少ないのが帝国書院の「40」、最も多いのが育鵬社の「112」。「自由・権利について記述している箇所数」は最多が自由社の「192」、「責任・義務について記述している箇所数」の多いのは、育鵬社と自由社。「北朝鮮による拉致問題を扱っているページ数」の最多は育鵬社の7ページ、次が5ページの自由社、他の社は1~2ページ。
取り上げた箇所数やページ数だけで判断できるものではない。前回配付された「調査研究資料」でも指摘したように、例えば、人権については「人が生まれながらにして持っている権利」とするか、「権利の濫用をしないよう公共の福祉による制限」とセットにするか、視点が大事であるのに、そうしたことは読み取れない資料である。
■7月27日の採択では
「採択資料」とは言い難いこのような資料をもとに都の教育委員たちはこれまでずっと、日本の侵略の事実を歪曲した扶桑社・育鵬社の歴史教科書、及び、日本国憲法の3原則を事実上否定した育鵬社・自由社の公民教科書を採択してきた。 文科省が社会科の教科書に政府見解や最高裁判決を書くことを義務付け、それをしなければ教科書検定を通らなくしたことによって、どの教科書でも子どもたちは政権の考えを刷り込まされる。中でも、その極みは育鵬社版と自由社版だ。27日には少なくとも、両社の教科書は採択しないでもらいたい。