都教委包囲ネットが以下のような声明を発しました。
学術会議会員任命拒否に断固抗議し、国家権力による学問と教育の支配を許さない声明
菅政権の危険な本性が日増しにあからさまになりつつある。学術会議会員任命拒否は、権力の行使を究極の目的とするこの政権の本質を白日のもとにさらけ出した。
この暴挙に断固抗議し、撤回を求める。
学問や教育、およそすべての文化活動はそれ自身の価値に基づいて行われるべきものであり、政治権力なかんづく国家権力からは独立していなければならない。これが自由で民主主義的な社会で自明な根本原則である。行政が行うべきは、活動に対する条件整備であって、内容にあれこれと干渉し支配することではない。 しかし安倍・菅政権は、この根本原則を破壊し、教育など様々な文化活動を、自分たちの野望実現のための手足とすることに、この8年間邁進してきた。国家主義的・復古主義的外観が看板であった安倍政権から譲り受けた菅政権は、加えて「力で脅す」という権力の行使を、躊躇せず、より一層の「スピード感」をもって実行しつつある。
6人の学術会議会員の任命拒否の「理由」も説明できず、苦し紛れの「言い訳」も至るところで破綻しているにもかかわらず、学術を権力で支配しようという野望と強い意志だけは一貫している。
「内閣人事局」によって官僚を人事面で縛りあげ、中教審など既存の審議機関を、内閣直属の「実行会議」の下部に置くことによって骨抜きにし、教育に対する支配を完成させた。また、NHKを報道機関から政府の広報機関に変え、民間放送局の放送内容や中枢スタッフに介入した。そして、それらの仕上げとしての憲法改悪策動である。そういう安倍の権力政治の中枢にはこの人物、菅義偉(よしひで)がいた。
安倍・菅政権は日本銀行や内閣法制局などのような独立性の高い機関を人事面から支配し、政権の野望の手足とした。そして、現在は司法にまで及んでいる。
そして、最後の「聖域」が彼らの及ぶことのできなかった「学術」であったのである。学術会議会員任命拒否は、このような安倍・菅政権の一連の野望の到達点である。しかし、と同時に次なる策動の出発点でもあるということを見なければならない。
ひとつは、来年の通常国会で争点となることが間違いない「デジタル庁」である。利便性という言葉に惑わされてはならない。これが、マイナンバーを使った国民総管理を目的としていることは明らかである。まだ構想の全容は明らかになっていないが、国家権力によるインターネット社会の統制や国内外の軍事的対応とも密接に関連してくると見なければならない。学術会議の骨抜き、改編はそういう中で行われようとしているのである。技術面でも、イデオロギー面でも、この国の《学術》全体が大きな転換点に直面させられているのである。
そして、もうひとつが、憲法15条の解釈改憲による「全権委任」の策動である。国民主権の原則に基づく、公務員の選定罷免の国民の権利を定めたこの条文を逆用して、“国民から付託された”首相に特別職を含めた全公務員の任命・監督権があるという驚くべき「解釈」をしているのである。この考えは、かのナチ・ドイツのもとで猛威を振るった「全権委任法」すなわち「授権法」と同根のものである。
「憲法15条を根拠に」、というのは国会で「任命拒否」の理由を追及された菅が、苦し紛れの思いつきで言い出したのではない。2018年にすでに政府部内で確認され、内閣法制局の公式見解となっているのである。このような「見解」を追認した内閣法制局を断固糾弾する。
学問や文化の自由という、これまで誰もが認めてきた自明のことが、安倍・菅政権なかんづくこの菅政権のもとで危機に瀕している。
しかし、ここが正念場である。我々は、菅政権の暴挙に断固抗し、国家権力による学問と教育の支配を絶対に許さず、最後まで闘い抜くことを決意し、ここに声明する。
2020年 11月24日 都教委包囲首都圏ネットワーク