9/8 都教委定例会 根津公子さんの傍聴記
「魅力向上に向けて」最も大事なことは
◆今日の議題は公開報告は
1)「都立高校入学者選抜における合否判定業務の改善について」
2)「都立高校の魅力向上に向けた今後の対応について」、
非公開報告が
3)「『いじめ防止対策推進法』第30条第1項及び第28条に基づく報告について」
4)「『学校に勤務する教職員の懲戒処分の公表等について』の一部改正について」。
3)について。第30条第1項は最も重いいじめである「重大事態」(生命への重大な被害や長期欠席など:第28条)が発生した場合、学校はその旨を地教委を通じて当該地方公共団体の長に報告しなければならない、と謳う。東京の公立学校でまた、いじめによる自死や長期欠席が起きて、その報告ということなのか。
4)について。公表の仕方を変えるということのようだが、これは「個人情報」ではないのだかから、非公開報告にする必要はないはずだ。今朝の新聞が「男子高校生に性行為 30歳女性教師懲戒免職」を報じた。ぞっとするし、学校が子どもにとって安全な場所ではないことを示す。この案件について都教委のHPを閲覧すると次のように記す(この公表が「一部改正」されるということか?)。
「1. 教職員に関する事項 (1) 校種 特別支援学校 (2) 職名 教諭 (3) 年齢 30歳 (4) 性別 女 2. 処分の程度 懲戒免職 3. 発令年月日 令和4年9月7日 4. 処分理由 令和2年12月30日、商業施設の駐車場に駐車した自動車内において、当時勤務校生徒と性行為を行った。
※ 本件については、氏名等を公表することにより上記生徒が特定される可能性があることから、生徒の人権に配慮し、被処分者の氏名及び学校名を公表しないこととした」。
上記の案件は懲戒免職すべきと私も思う。しかし、昨日同時に懲戒処分となった案件のうち2案件を見ると——。
「減給10分の16月」とされた校長は、「令和2年6月頃から同年8月頃までの間に、当時勤務校校長室において、当時勤務校女性職員と二人きりの状況で、同職員の腰を触る行為を複数回行い、同職員に嫌悪感を与えるなどした。また、…同年9月4日、同職員に対して、同職員の自宅を訪問しようとする趣旨の電子メールを送信し、同職員に不快感を与えた」。
停職6月処分とされた主任教諭は、「令和2年6月15日から令和3年5月7日までの間に、当時勤務校教室等において、複数の当時勤務校児童に対して、指で児童の腹部を着衣の上から触り嫌悪感を与える、椅子に座っている児童の膝の上に座り不快感を与える、などした。
★根津コメント
いつも思うことだが、これらの処分と比べ、「君が代」不起立処分の重かったこと!「君が代」不起立で私は減給6月処分を皮切りに毎年処分が加重され、3回も停職6月処分とされた。そこには、「公平・公正」さがまったくない。また、昨日処分された7人の内訳は、校長が1人、副校長が1人、主任教諭が3人。上命下服の学校組織のいびつさがここに出ていると思う。
◆さて、公開報告に入ろう。
1)「都立高校入学者選抜における合否判定業務の改善について」
——スピーキングテストが入学者選抜に加わる来春の採点の混乱を想う
今年の入学者選抜(入試)で採点ミスがあり、3名を不合格にしてしまったことが4月に発覚した。報道されたからご存じに方も多いかと思う。発覚したのは、都教委がチェックして見つけたのだとのこと。
今日は、採点ミスを防ぐための取組が報告された。取組は、①研修を強化する。②採点から合否判定まで、入学者選抜に関わる一連の業務をシステムで処理できるようプログラムを改修し、人為的な誤りを防止する。③総合成績が同点である場合の合格者決定方法など、点検箇所を明示したチェックリストを教育庁が新たに作成する、というもの。
2014年の入試において、48校で計139件の採点ミスが発覚したことから調査した結果、3年間で3000件を超える採点ミスが判明し、18校22人の受験生を誤って不合格にしていたことが判明した。それを受け、都教委は高校の採点期間を1日増やしたり、マークシート方式を導入した。それでも採点ミスは防げなかったということだ。
教育委員からは、「都教委のチェックを3月中にできないか」との発言はあったが、それ止まり。都教委は今年の11月に中学3年生にスピーキングテストを受けさせ、その結果を来年度の入試に使うと決め、定例会でも報告しているが、都民や学者たちから反対の声が多数、都教委に寄せられている。テストは、タブレットから流れる問題に一人ひとりが答えを録音し、業者(ベネッセ・コーポレーション フィリッピンの業者に採点業務を依頼)により採点され、1月中旬に結果が返却され、入試に20点満点で加算される、というもの。
マークシート方式を導入したり採点期間を増やしても採点ミスが「0」にならない現実がある中、スピーキングテストの採点が公平かつ客観的に評価できるのか?と、危惧するのは当然ではないか。教育委員は、なぜその点に触れないのか。それとも本気でスピーキングテストは英語力を高めるのに有用、採点ミスはないと思っているのか。意見を表明してほしかった。というより、反対の声が寄せられているのだから、表明するのは教育委員としての職務と思う。
2)「都立高校の魅力向上に向けた今後の対応について」
——解決策は、学校(校長、教員)に決定権を戻すこと
7月28日の定例会において、2012年度から10年間にわたる「都立高校改革推進計画」に基づくとりくみと都立高校の現状についての報告がなされ、それを踏まえて今年度から2024年度まで、「教育内容の充実」「多様な生徒への支援」「都立高校の特色化等」を柱として集中的に「都立高校の魅力向上に向けた施策」を展開すること。ついては、11月にプログラム素案を公表し、パブリックコメント実施を経て2月にプログラムを公表するとの報告がされた。今日は、今年度の主な取組状況及び今後の方向性が箇条書きで示された。
★根津コメント
どの教育委員も共通して発言したことは、「都立高校の特色化等」の2点の取組の1点、「働き方改革の更なる推進」についてだった。「次々に施策が打ち出され、教員がすべきことは増えるばかり。必要なくなったことはやめる。仕事量を減らす。心の余裕を持つことで現場の活力が増し、教育の質が良くなる」「部活動やデータ環境の整備等に外部人材を入れてほしい」など。
大阪の教員が、過重な業務により長時間労働を余儀なくされ、適応障害を発症したとして、大阪府に損害賠償請求した裁判の地裁判決は原告の主張をほぼ認めた判決(6月末)だった。一方、埼玉の教員が提訴した超勤裁判の高裁判決は、超勤に職務命令は出されていない。自主的超勤だとして、原告敗訴(8月末)。病気にならなければ超勤は違法とはならないとでもいうのか、と思うが、こうした動きを教育委員たちは認識しての発言だったのか。
「魅力向上に向けた」取組をするために最も大事なことは、教員が指示で動くのではなく自立し、生徒たちの思いを受け止めて教育活動に当たること。「魅力向上に向け」て、都教委がすべきは学校(校長、教員)に決定権を戻すこと。そうしたら、教員も生徒たちも生き生きとすること間違いない。上で述べたセクハラ等の行為に走ることもなくなるだろう。