今年の卒業式・入学式での「君が代」強制の都教委の通知
渡部さんの報告です。
2020年度の卒業式が近づいてきた。
すでに1月25日付けの『東京新聞』で、「都教委、今春卒業式で都立高校に指示」として、「感染防止へ声を出しての君が代斉唱なしでも・・一同起立せよ」という文書を出したことが報じられた。
その文書はコロナ感染が拡大していた2020年12月24日に出された、「新型コロナウイルス感染症対策を施した令和2年度卒業式及び令和3年度入学式等の実施について(通知)」である。
その「通知」を見ると、式は体育館で行われることを前提に、次のようなことが書いてあった。
「2 感染防止対策」として
(1)基本的な対策
入場者の検温や手指消毒を実施するとともに、マスク着用を徹底する。
(2)密閉の回避
ア 式全体を1時間程度で計画する
・生徒表彰等は、実施しない又は簡略化して実施する。
・知事メーッセージ、都教育委員会挨拶の読み上げは実施せず、
掲示又は配布する。
・祝電披露は、名前のみの紹介に留める。
イ 30分を目安に、2方向の窓を5分程度開放し、会場の換気を行う。
(3)密集の回避
ア 座席の間隔は、原則として、前後左右少なくとも1座席分程度を確保する。
イ 保護者の参列は、…1名のみとし、…特別支援学校については2名までとする。
ウ 在校生の参列は、代表者のみとする。(生徒会役員と2学年のクラス代表等)
エ PTA関係者、来賓の参列者の人数は、最小限に絞る。
(4)密接の回避
ア 飛沫拡散の可能性がある歌唱等は行わない。
・国歌及び校歌は、CD等に録音された歌唱入りの楽曲を、会場全体に聞こえるように再生する。
・ブラスバンド等の演奏は行わない。
イ 式辞等は演台にアクリル板を設置するなど、飛沫拡散の防止策を講じた上で行う。
・校長式辞、卒業証書授与や送辞、答辞等は、マスクを着用したまま行うことを原則とする。
その上で、以下のような「3 感染防止対策を踏まえた実施例」というものが示されている。
●卒業式(8クラス、60分)
1 開式
2 国歌斉唱 2分
3 卒業証書授与 40分
《【換気】(2方向の窓を5分開放)》
4 校長式辞 8分
5 来賓紹介・祝電披露 2分
6 送辞 3分
7 答辞 3分
8 校歌斉唱 2分
9 閉式
●入学式 (略)
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この式次第は、2003年の「10・23通達」以降強制されるようになった。これは基本的には、戦前の卒業式次第を踏襲したものである。
それまで都立高校では生徒主体の多彩な卒業式が行われていたが、それをことごとくつぶして、「戦前回帰」させたのである。生徒主体ではなく「国旗・国歌」が第一になったのである。だから、CDを流して斉唱しなくても、式次第には「国歌斉唱」とウソを書く。
その後、1月7日に「緊急事態宣言」が発令され、2月7日には「緊急事態宣言」が1か月延長され、3月7日までとなった。都立高校の卒業式は3月1日から始まる。
しかし、12月24日に出された「通知」はそのままである。
ところで、都教委委は「卒業式台本」まで作り、現場におろしている。それは、以下のようなものである。
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「皆様御起立下さい。」
「ただ今より令和2年度東京都立○○高等学校○○課程第○回卒業式を挙行いたします。」
「礼」
「国歌斉唱」
「新型コロナウイルス感染症対策の観点から、飛沫の飛散防止のため、歌唱入りの国歌を流しますので、そのままお聞きください。」
放送担当者が準備室したCDを放送施設を使用して流す。
(不起立の生徒がいたら「生徒は起立してください」とアナウンスして、起立を促す。また、教職員に不起立があったら副校長がその場で起立を促す。)
「御着席ください。なおこれ以降は着席したまま式を進行させていただきます。」
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この中に、
(不起立の生徒がいたら「生徒は起立してください」とアナウンスして、起立を促す。また、教職員に不起立があったら副校長がその場で起立を促す。)と付け加えてある。
要するに生徒と教職員に起立を強制しているのである。そして従わない教職員を処分しようとしているのである。
コロナ感染状況下で「緊急事態宣言」発令中であっても、いかに彼らが体育館での卒業式にこだわり、全体での「君が代」斉唱にこだわっているかがわかるであろう。
参加者の健康・命よりも、ウソをついてまでの「国歌斉唱」が第一なのである。まるで、戦前に火事のなか校長が「御真影」なるものを取りに行き焼け死んだ、ことなどを思わせる。
これこそ日本社会の「古い体質」の最たるものである。これがなくならない限り、日本社会の「古い体質」を変えることなどできないであろう。