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2019年7月24日水曜日

7/18 八王子市立浅川小学校に撒いたチラシ

■7月18日に八王子市立浅川小学校に撒いたチラシ

浅川小学校の教職員の皆さまへ
 4月23日に天皇夫妻の出迎え・見送りに子どもたちを参加させた件について

 私たちは八王子市在住の市民です。4月23日に天皇夫妻が多摩陵(昭和天皇墓地)及びみころも霊堂に来た際に、貴校では子どもたちを出迎え・見送りに参加させたと聞き、危機感を持ちました。先生方にご一考願えたらと思い一筆申し上げる次第です。校長先生から話がなされた際に、先生方はどのように考え了承されたのでしょうか。
 
 この日、沿道に子どもたちを立たせたのは、浅川小、第二小、横山第二小でした。市教委に問い合わせたところ、第二小、横山第二小は甲州街道沿いにある学校なので、市教委が「天皇陛下が23日の何時頃、どこを通る」というメールを「情報提供として」3校に送信した。その情報は八王子奉迎実行委員会から受けた、とのことです。市教委が情報提供した3校のうち、陵南中は「奉迎」をしませんでしたから、市教委の言うとおり、「情報提供であって、沿道に立つよう、言っていない」のでしょう。
しかし、校長にしてみれば、市教委から「第二小の前を通るのは〇時頃」と言われれば、子どもたちを沿道に並ばせなくては、と考えるでしょう。この20年近く都教委は、学校が職員会議で論議し決定することを禁止し、市教委を通して各学校に指示し従わせてきましたから、校長は今回の件も‟指示”と受け取ったのではないかと思います。事実、「立たせろとは言われていないが、忖度しろということ」と校長の一人は言いました。

 清水校長先生はこちらの質問に、「自治連合会から話はあったが、話があったからやったのではない。校長である私が決めたのだ。最終決定は学校=校長にある。自治連合会が教えてくれたから、(『御見送りと御出迎え』が)できた。自治連合会は子どもたちに旗も準備してくれた。」「自治連合会から話があって、あえてそれをやらないのは、反対の意思表明になる。敬意を持つのは、日本の国のルールであり、文化だ。あなたのように反対する人がいるのは承知だが、多くの国民が天皇に敬意を持っている。共産党も赤旗で代替わりに賛意を表明している。」と言われました。天皇に敬意を示す行為を学校教育として行ったということです。

 私たちが危機感を持ちましたのは、学校(先生方)が子どもたちを参加させることはよいことであり、当たり前、と判断された点です。先生方から反対の声はなかった、と清水校長先生から聞いております。

 憲法第1条は天皇について、「日本国および日本国民統合の象徴」と書き、6年生社会科の学習指導要領は「天皇についての理解と敬愛の念を深める」と書きます(私たちはこのこと自体を誤りと考えます)。しかし、憲法は同時に、「思想・良心の自由」「信教の自由」を定めていますから、天皇制を肯定し、「敬愛の念」を抱く人が多い一方で、天皇制はなくすべきと考える人も少数ですが、存在します。先の侵略戦争では裕仁・昭和天皇の命令の下、日本兵はアジア諸国を侵略、2000万人に及ぶ人々の命を奪いました。わずか70余年前のことです。ご自身が殺された側の一人と考えたならば、忘れてよい問題ではないことがおわかりかと思います。侵略の歴史の事実を歪める政治勢力がはびこり、教科書も侵略の事実をまともに記述しない中、先生方には事実を心して教えていただきたいと強く願います。

 先生方には、保護者や子どもたちの中にも天皇制を肯定できない、しない人がいるということに思いを馳せていただきたいと思います。日本が侵略したり植民地にしたりした国々から来た子どもさんが浅川小にも在籍するのではないでしょうか。また、日本兵として虐殺に加担したことに生涯苦しむ人や戦争孤児にされた人もいます。先生方が少数に位置する子どもたちに心を砕くことは、人権教育の基本であり、いじめ防止にも繋がることだと思います。

出迎えについて、保護者には清水校長先生が手紙で知らせたとのことですが、保護者は学校に「苦情」を寄せにくいのではないでしょうか。「苦情」を寄せたことで子どもがいじめを受けるということも心配するでしょうから。
また、例え保護者や子どもたちすべてが天皇に親しみを感じているとしても、天皇についての一つの考え(=政府見解・国家のイデオロギー)に沿って子どもたちを動かしてはなりません。学校がすべきことは、子どもたちが事実をもとに考え判断できるよう、資料の提供や調べ学習を行い、意見交換の場を提供することです。昭和天皇の戦争犯罪については、事実を示す資料はあるのですから、「奉迎」を予定したならばなおのこと、知らせるべきです。「思想・良心」の形成過程にある子どもたちに、憲法及び子どもの権利条約が謳う「思想・良心の自由」「信教の自由」があることを、今回の件のような現実に即して教えてほしいと思います。

 清水校長先生は「(天皇奉迎・送迎を実施すると告げたら)子どもたちは大喜びをした」と言いますが、それは歴史の事実を隠したゆえのことではありませんか。
私たちが先生方にこの件を訴えるのは、戦前の学校教育が異論を排し隠して、「天皇のために」「お国のために」を教え込んだ結果、進んで戦場に行く子どもたちをつくり出してしまった歴史的事実があるからです。安保関連法が成立し、自衛隊員が海外や訓練に駆り出されている中、戦争は絵空事ではなくなっていますから、今回の件を看過できなかったのです。


私たちの中には教員をしていた者もいます。都教委が2004年から卒業式・入学式で「日の丸」に正対し「君が代」起立斉唱をしない教員の処分を始めてからは、毎年処分を受けてきた者も何人かいます。
起立をしなかったのは、子どもたちに「日の丸・君が代」の意味や歴史を教えず、これらについて判断できない状態に子どもたちを置いたまま、これらを尊重するよう起立・斉唱させることは、国家の価値観(イデオロギー)の刷り込みであって、戦前の学校教育と同じであり、学校(教員)がしてはならないと考えたからでした。今回の件もこれと同じく、一つの価値観(国家の価値観)の刷り込みにほかなりません。
 
 憲法第1条に天皇条項を定めたことを私たちは誤りと考えます。敗戦後の占領時にマッカーサーは、天皇制を残すことで日本をうまく統治できると考え、また裕仁・昭和天皇は戦争責任を問われて処刑されることを恐れ、沖縄をアメリカに差し出すことと引き換えに自身の身の安全を確保しようとしました。それが、マッカーサーと天皇との会談で合意され、憲法第1条に天皇条項が規定されたのです。
現在の沖縄の基地問題も、裕仁天皇が沖縄戦と同じく、戦後も沖縄を「捨て石」にしたために起きたことです。

 なお、この件で、インタビューに応じたお子さん(たち)の姿が全国に報道されたと聞いています。しかし、これは個人情報の流失であり、犯罪等にもつながりかねない問題をはらんでいます。都・市教育委員会は、児童・生徒の写真1枚を外に出すことにも、懲戒処分の措置を採っています。浅川小の校長先生及び教職員の皆さんの判断に、過失があったと思わざるを得ません。
 どうぞ、ご一考くださいますようお願いします。
                 2019年7月18日
                八王子市民有志 (連絡先:根津公子)