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2021年10月4日月曜日

パラリンピックの学校観戦動員について、八王子市教委らへの要請書

 パラリンピックの学校観戦動員について、八王子市教委らへの要請書

                               2021921

八王子市教育委員会 教育長 安間 英潮様

八王子市教育委員 笠原 麻里様/ 柴田 彩千子様/ 伊東 哲様/ 川島 弘嗣様

八王子市立第十小学校校長 西村 実様

     元八王子中学校校長 長田 猛様

     いずみの森義務教育学校校長 石代 俊則様

         「天皇奉迎」に子どもを動員することに反対する八王子市民の会

              連絡先:根津公子 八王子市 

パラリンピック学校連携観戦を強行した八王子市教委に猛省を求める質問・要請書

 命よりもオリンピック・パラリンピック教育が大事とばかりに、オリンピック・パラリンピック学校連携観戦を強行した八王子市教委の対応に、当会は昨年末以降ずっと中止を求める申し入れをしてきました。他の市民団体・個人からもこうした申し入れや抗議が多数寄せられたと聞いています。しかし、市教委はそうした保護者・市民の声を受け止め、議論に付すことをせずに、「都教委からの通知が来ていないから判断できない。市民に回答はしない」との一点張りで、3校がパラリンピック学校連携観戦を強行しました。ほとんどの地教委が観戦を中止する中、都教委に追随した市教委の対応は厳しく問われなければなりません。 

 825日に観戦を引率した中学校教員2人がコロナに感染していたことが発覚した千葉県では、県教委が同月31日にすべての学校連携観戦を中止しました。PCR検査をしていたとしても検査結果が出るのは早くても翌日ですから、「感染していない」担保はとれません。そうした中、八王子市教委は観戦を予定する3校に対して中止するよう指導・助言をしませんでした。3校の校長の判断も極めて問題ですが、市教委の対応も看過できるものではありません。

 ところで、観戦を強行する・した都教委に対し、教育委員たちは都教委を追及するとともに、やめさせることができなかったことに対し自省の念を表明しています。

818日の夜に行われた都教委臨時会で、出席した4人の教育委員が観戦に反対しましが、報告事項だからとして教育長は議案としませんでした。続く826日の都教委定例会で、遠藤教育委員は「なぜ反対意見を言っただけで、止められなかったのか思い悩んできた。決議事項にしてくださいと言わなければいけなかった。(地域住民の意見を教育行政に反映する)レイマンコントロールの原則を実現できなかった」と反省の思いを述べました。山口、新井両教育委員もそうした発言をしたといいます(東京新聞27日付)。そして、パラリンピックが終了した99日の都教委定例会では、「18日の臨時教育委員会で感染リスクを避けるべき、観戦はマイナスのアナウンス効果となってしまう、と私(たち)は発言したが、観戦が『0』にならなかったのは残念。今もそう思う。千葉で中止にしたことを都では議論したのか。/VR観戦など、素晴らしい。直接観戦しなくとも、これでよかったのではないか」(遠藤教育委員)、「万全を期すためにコスト増があったと思うが、それを調べる必要がある。マイナスの面についても客観的なことを残すのは都教委の使命だ」(新井教育委員)、「観戦に参加した各学校は、どういうプロセスで観戦を決定したかを検証し、残していくべき」(山口教育委員)との発言がありました(北村教育委員は欠席、秋山教育委員はこの点については発言しなかった)。

都教委教育委員の皆さんの発言は、命最優先の、至極まっとうなものでした。教育に対し、子どもに対して、責任ある立場にある者の姿でした。

1.そこで、まずは質問に答えてください。紙面での回答を10月末日までに求めます。

1)~5)は市教委への質問

1)学校連携観戦を中止しないのは、「希望する児童・生徒がいる」からと市教委は言いました。オリンピック・パラリンピック関係者の感染者は863名(98日時点)。アスリート及びコーチ等については入国直前に、そして入国後は毎日PCR検査をしたと言いますが、88日の時点で80名が感染したと報告されています。加えて千葉の事例があります。これらの事実が示すことは、PCR検査をすれば感染しないとはならないということです。

  市教委にはこの判断がなかったのですか。それとも、感染の危険はあっても、「希望する児童・生徒」の「希望」を叶えることが市教委のなすべきことと考えたのですか。

2)観戦を実施した3校の、観戦希望者は期日が近づくにつれて激減していきました。これは、コロナ感染の危険を考えてのことであることは、誰の目にも明らかです。このことに関して市教委は論議し検討しましたか。

また、論議した場合は、どのように判断し観戦の方針を変えなかったのか、論議しなかった場合は、その理由を答えてください。

3)幸いにもコロナ感染者は出ませんでしたが、観戦に参加した386名の児童・生徒及び引率した教員からコロナ感染者が出たとしたら、子どもたちにはマイナスの「レガシー」しか残らなかったと思われます。とりわけ、感染当事者の心の負担は甚大となったことでしょう。その場合、感染当事者の心のフォローをどのようにしようと考えていましたか。フォローが可能と考えましたか。

なお、感染者が出た場合には、誰(どこ)の責任が問われると市教委は考えていましたか。

4)1912月に学校連携観戦希望に関して、都教委から調査(「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会における子供の競技観戦に係る最終意向調査票」)が降ろされました。その調査で校長たちが「自由記述欄」に書いたことは、「市教委が全校全学年というから参加希望を出すが」と書いた校長をはじめ、回答を寄せたほとんどと言っていいほどの校長が、熱中症や公的交通機関利用による危険を心配し、できれば観戦を辞退したい意向を示していました。この意向は、コロナ感染禍では、さらに増幅したのは明らかです。

 1912月の調査での校長たちの記述を、市教委はどのように受け取っていましたか。

また、コロナ感染問題が発生した中で、市教委は校長たちから観戦についての意見を聴きとりましたか。聴きとったならば、校長たちの意見とそれに対する市教委の対応を示してください。

5)「教育課程の編成権は校長にある」と教育法令は位置付けます。しかし、1912月の調査での校長たちの「自由記述」が示すように、実態は市教委の判断に校長(学校)は従わざるを得ないと校長たちは捉えています。この実態があっても、市教委は「教育課程の編成権は校長にある」「観戦するかしないかは校長の判断」と言えますか。

また、「自由記述欄」にできれば観戦を辞退したい旨書いた校長たちに市教委は返答をしましたか。返答をしたか否か、また、その理由を答えてください。


6)7)は教育委員の皆さんへの質問

6)市教委が学校連携観戦をすることについて、教育委員諸氏は市教委に意見をしましたか。したか、しなかったか、またその理由をお聞かせください。

7)上記した市教委への質問1)~5)に関して、お考えがあれば答えてください。

8)9)10)は校長への質問

8)八王子市内の学校もほとんどが学校連携観戦を希望しなかった・取りやめた中、そちらの学校が観戦をしたのはなぜですか。理由が複数ある場合には、理由の大きい順に答えてください。

)観戦に参加した児童・生徒は多くはありませんでした。しかも、直前になっても辞退が相次ぎました。それでもなお、観戦を中止しなかったのはなぜですか。職員からは「中止にすべき」との意見は出なかったのですか。観戦をやめてほしいという声は保護者から届きましたか。

10観戦した児童・生徒・教職員から感染者が出た場合、校長の責任は多大かと思います。その際にはどのような対応をしようと考えていましたか。

2.市教委に猛省を求めます。

 そもそも35時間/年×6(年間)の時数を使って、都教委が作成したオリンピック・パラリンピック学習読本やDVD教材を使ってオリンピック・パラリンピック教育をしてきたこと自体が大きな問題と、私たちは考えます。学習読本には不都合な事実は隠し嘘まで使った、国威発揚につながる記述が多々あります。いくつかそれを例示します。

 長野冬季大会について、「『美しく豊かな自然との共存』を目ざし、環境対策がとられた。森林伐採を減らすためになるべく新しい施設を建設しないようにし、大会後は・・・樹木の苗を植えた。」(小学生用)、「滑降コースでは、自然に配慮し、散水や雪面硬化剤を散布せず、圧雪車を活用するとともに役員や自衛隊150人の人海戦術で滑降コースを整備した。」(中学生用)と書きます。長野県及び施設を建設した市町はこれまでも建設費の借金を返済し続け、市民の生活環境改善に回すお金が枯渇してきた実態や施設を維持するにも解体するにも莫大な費用がかかり、市民から厳しい目が向けられている事実には触れません。触れないということは隠す・嘘を教えると同じことです。

 オリンピック憲章は「国旗、国歌」ではなく、「選手団の旗、歌」と規定していますが、学習読本は、「国旗と国歌・・・敬意を表すことは国際社会の基本的マナー」(中学生用)、開会式で選手たちが自国の国旗を先頭に行進します。表彰式では、優勝した選手の国旗を掲げ、国歌を演奏します。」(小学生用)と、うそを教えます。 

「日本の伝統・・・和の心」では、一つに「震災復興に向けた取組み」を挙げ、「がんばれ!ニッポン!」プロジェクト、JOC「応援ありがとう!in東北」、「聖火台が石巻市へ」を挙げ、「原発」の一文字もありません。都合よく「震災復興」を言い、原発被害は終息したと子どもたちは思わされます。

このように、嘘まで使って国威発揚を図るオリンピック・パラリンピック教育は、子どもたちの学ぶ権利及び思想・良心の自由を侵害します。市教委はこの点についてまずは反省すべきです。

そのうえで、学校連携観戦を中止しなかったことについて反省すべきです。

以上、十分な論議をし、反省することを求めます。

教育委員や校長にも反省を求めます。