BPO・放送倫理検証委員会への要望
青木 茂雄(都教委包囲ネット)
青木さんは提出した文書を読み上げました。
2021年12月26日22:00~23:49放送のNHKBS1番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」の内容に異議があります。単なるミスではなく、放送の姿勢に関するものです。公共放送がこのようなものであっては、NHK一局の問題ではなく、日本の報道全般の信用にかかわる問題となります。BPO・放送倫理検証委員会での審査を求めます。理由を以下に述べます。
(1)番組は、東京五輪2020の公式記録映画担当監督の河瀬直美氏の取材状況をNHKのスタッフが取材するという構成になっていますが、その中で、河瀬氏たちが、JOC本部前での市民団体による抗議要請のシーンを取材した後に、河瀬氏側のスタッフ(島田角栄氏)のインタビューが放送されます。島田氏は「反対運動をしている者にはプロの反対派もいる」と言います。島田氏の言う、おそらく「プロ」と目されているのは、その前のシーンで出てきたこの市民団体のことをさしている、と受け取られるようにこの番組は作られています。JOCという公共組織に対する抗議や要請の行動は、憲法の保障する請願行動であり、請願する権利は国民固有の権利です。それに「プロ」というレッテルを貼るのは、市民運動全体に色眼鏡をかけて見ているか、あるいは自分の好みで腑分けをしているかそのどちらかです。いずれにしても「お上にたてつく」ような市民の運動を何かやっかいなもの、けしからんもの、普通の国民がやらないもの、という偏見を抱いていなければ、このような発言は出てきません。河瀬氏側のスタッフがそういう傾向をもった一部の人達の立場に立って東京五倫の記録映画を制作しているとすれば、純然たる私人であるならばともかく、それが「公式」記録である限り問題がありますが、その点については今回は触れません。今回問題とすべきは、そういう特定の傾向を持った人達の言動を、そのまま無批判で放送したことです。NHKという公共放送であるならば、一方の意見を採用した場合は、反対側の意見も取材すべきです。しかし、それは全く行われていません。番組の中に、JOC前での抗議行動が放映されていましたから、NHKのスタッフとしては当然、反対運動側のインタビューも行う機会はあったはずです。それをまったく行わずに、「プロ」というレッテル貼りをして何の疑問も持たない人達の側の意見だけを一方的に流したとすれば、公共報道機関として偏向した報道を行ったと言わざるをえません。
(2)番組ではさらに、同公園の一角で座って休んでいる、白いTシャツを着た男性に取材します。すでにインターネットメディア等で明らかになっていますが、放送ではその男性は顔にはボカシが入っており、河瀬氏側のスタッフが接近して取材しています。しかし、その発言内容は直接には聞く事ができずに、テロップで、これは撮影スタッフの解説と思われますが、「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」が入ります。その男性がそのような発言をしたかどうかはこれだけではわかりません。
もし、そのような発言をしたことが事実であるならば、市民団体が動員に対して「お金を払った」という事実があったかどうか、裏付けをとる必要があります。それを取らずにテロップを流したとすれば、NHKが不確かな事実の報道をしたことになります。オリンピック反対を始めとする市民団体の街頭デモ行進には私は何度も参加していますが、断言します。そのようなことは絶対にありません。
また、もし撮影スタッフが、その男性の「お金をもらって動員云々」の話自体がなかったのに、あったかのように放送したのならば、これは単なる間違いの域を越えて、虚偽報道、でっち上げ報道をしたことになります。たちの悪い悪意あるやらせ、ある意図のもとに行われたやらせに外なりません。報道として越えてはならぬ一線を越えてしまったことになります。NHKがそれを無批判で放送したのならば、NHKも全く同罪です。このどちらであるかをBPOで厳正に審査してほしいと思います。
(3)河瀬氏側は、すべてがNHKの責任としています。しかし、以上述べたように河瀬氏側の撮影スタッフも責任を免れません。とはいえ、この番組の制作放送主体はNHKです。
政府から独立した公共放送としてのNHKの報道姿勢が現在ほど問われている時はありません。一国の信用問題であり、一国の文化の質の問題でもあります。BPOはしっかりと審査してください。
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