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2020年12月13日日曜日

12/10 都教委定例会 根津公子さんの傍聴記

12月10日(木)都教委定例会の根津公子さんの傍聴報告です。

●都教委報告

■服務事故防止は都教委の教員・学校支配の見直しから

 今日の議題一欄を見て目を引いたのは、非公開議題の「懲戒処分者数等の推移及び服務事故防止に向けた主な取組について」。月2回の定例会で懲戒処分案件(議案とされるのは停職~懲戒免職、報告とされるのは戒告~減給)が議題にのぼらなかったのは、私の記憶では9年以上傍聴してきて1度もない。「君が代」処分は、今年度はゼロなので、体罰やわいせつ、金銭の不正受領、飲酒運転等の非違行為による処分ばかり。

 都教委の方針・指示に従って、教員は自己申告書を提出し、研修を積み技量を蓄えているはずなのに、こうした非違行為が減らない(どころか、増えているのではないかと私は思う)のはなぜか。主任、主幹、副校長と昇進していく者の非違行為が少なくないのはなぜか。これらの考察を経たうえで「防止に向けた取組」が報告され論議されたのだろうか。きっと、否。考察抜きの取組は、何度行っても無駄というものだ。子どもも大人も、居場所があり活動が充足されれば、問題行動に走ることはほぼないはず。とすれば、教員の働かせ方を見直すとなるはず。懲戒処分が減らないのは、都教委の教員・学校支配にあるのは間違いない。

 そもそもこの議題が公開されて支障を来たすことはないはずで、公開してもらいたい内容だ。都教委HPの「服務事故」欄に被処分者の学校名が記載されるのは、「君が代」処分のみ。わいせつや金銭の不正受領で懲戒免職にされた者についてさえ、個人名はおろか、学校名も明らかにされないのだから、公開議題にしていいはずだ。

 さて、今日の議題は、議案が「立川国際中等教育学校附属小学校設置(2022年度)に伴い設置条例の一部を改正する条例等の立案等について」(新たな内容はないので略)。報告「都立校入学者選抜等における新型コロナウイルス感染症対策(追加)について」と「今年度都教育委員会職員表彰について」。

①「都立校入学者選抜等における新型コロナウイルス感染症対策(追加)について」

 すでに都教委HPに掲載済みなので詳細はそちらを。

  登校時に受検者の体温をサーモグラフィーにより計測し、発熱がみられる場合は別室等で検温。37度以上37.5未満の高校受検者には追検査の受検を促すが、当日の受検を希望する場合は別室受検とする。37.5度以上の場合は受検を認めず、追検査の受検を促す。中等学校及び中学校受検者は別室受検とする。37.5度以上の場合は受検を認めない。高校受検は追々検査まで定める、等々。

 報告を受けて「受検校の教員が感染していたら、どうするのか」との質問に、事務方の回答は「教員には日々、健康管理をさせている」のみ。PCR検査をして万全の態勢をとってもよさそうなのに、そうは言わなかった。

②「今年度都教育委員会職員表彰について」

 「都の教育の発展、学術、文化の振興に貢献し、その功績が顕著で、かつ勤務成績の優秀な職員及び優れた教育実践活動・研究活動を行っている学校・グループの功労をたたえ、表彰する」ことを目的に、毎年この時期に表彰。今年度は100名10団体。特別支援教育、ICT教育等、都の方針に沿っての表彰が多い。

 教育委員の一人は、「今年はコロナ禍で学校は全員ががんばった。ねぎらいの言葉を都教委から出しほめてあげたい」と。事務方も「検討する」と応答した。表彰をありがたがる、誇りに思う教員がかなりの数存在するのだろうけれど、表彰で釣るのも釣られるのもさもしいとしか私には思えない。教育委員のこの発言・発想もしかり。


●次に総合教育会議の傍聴報告

■子ども・教員の現実を観ていない机上の空論

 総合教育会議は知事と教育委員が教育政策について協議・調整する会議であり、召集は知事が行う。首長が教育に介入できるよう、文科省が2014年に教育委員会制度を改編し、総合教育会議を開催するに至ったのだ。今年度3回目の総合教育会議だった。

 今日の議題は、「次期『東京都教育施策大綱』骨子案について」。                  

骨子案の柱は、「誰一人取り残さず、すべての子供が将来への希望を持って、自ら伸び、育つ教育を目指して」。

子どもたちが担うことになる「未来の東京」の姿はア)多文化共生社会の進展とイ)先端技術の社会実装の進行。それに加え、コロナからの復興でサステナブル・リカバリー(持続可能な回復)の視点が重要といい、「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」「Society5.0時代の人材育成プロジェクト」「GLOBAL Studentプロジェクト」を進める。その実現のため、「東京型教育モデル」で実践する特に重要な事項は次の6点だという。1)一人ひとりの個性や能力に合った最適な学の実現 2)Society5.0時代を切り拓くイノベーション人材の育成 3)世界に羽ばたくグローバル人材の育成 4)教育のインクルージョンの推進 5)子供たちの心身の健やかな成長に向けたきめ細かいサポートの充実 6)子供たちの学びを支える教師力・学校力の強化骨子案に対して各教育委員が自身の見解を述べた。

「『都教育施策大綱』骨子案」も教育委員の発言も多くは、子どもや教員の現実を観ていない机上の空論で、とにもかくにもICT教育・ICT活用の早期実現を目指しているということのよう。ICTにかけるお金は教員の大幅定員増に回し、子どもたちが教員に話を聞いてもらえる時間を生み出すことこそ、必要と思う。

 今回初めて大事な発言をした教育委員がいた。4)教育のインクルージョンの推進についての発言だった。この教育委員は特別支援教育の充実についてこれまで度々発言してきたが、インクルージョンの視点からの発言は今回が初めてだった。氏は、「特別支援教育は充実してきたが、一方で、地域から社会参画から外される危険をはらむ。誰一人残さず社会参画できるように、特別支援学校に入学した後、地域の一般の学校へ転入学できるようにすべき」(要旨)と。氏は、国際的認識の上に立ったインクルーシブ教育の考えを持っていたのだった。

 ならば、特別支援学校の増設、すなわち、手のかかる子ども、学習に遅れの出る子どもを特別支援学校に送る分離教育が特別支援教育の充実と誤認識する都教委に対して発言し、教育委員の間で論議を起こし深めてほしい。それこそが、有識者である教育委員のあるべき働き方と思う。長いこと、定例会や総合教育会議を傍聴してきて、初めて貴重な発言に接することができた。