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2018年2月13日火曜日

2/8都教委定例会 根津公子さんの傍聴記

2月 8日(木)都教委定例会がありました。根津さんの傍聴報告です。

パブリックコメントほとんど無視の都教委

■議事の内容
公開議案が①「東京グローバル人材育成計画'20(Tokyo Global STAGE'20)」の策定について ②「学校における働き方改革推進プラン」の策定について 他、公開報告が③2018年度教育庁所管事業予算・職員定数等について ④中学校における特別支援教室の導入ガイドラインについて 他。
  非公開議案に教員の懲戒処分(停職以上)案件が4件、非公開報告に「いじめ防止対策推進法」30条1項に基づく報告について(30条1項:「学校は、…教育委員会を通じて、重大事態が発生した旨を、当該地方公共団体の長に報告しなければならない。」)があがっていた。

①「東京グローバル人材育成計画'20(Tokyo Global STAGE'20)」の策定について
 昨年11月9日の定例会に素案が出され、この後パブリックコメントを実施。出されたパブリックコメント(32人から40件)の結果が報告され、それを踏まえて策定したという「東京グローバル人材育成計画'20(Tokyo Global STAGE'20)」が提案された。
「東京都英語教育戦略会議報告書」をベースに、新学習指導要領なども組み込んだとのこと。
 教育委員からは、パブリックコメントを取り入れた策定を評価し、事務方をねぎらう発言があったが、取り入れた意見は1件、不適切な言葉づかいを指摘されたところのみ。他は、パブコメの形式を踏んだと言うだけ。
★例えば、「グローバル教育=英語教育という発想から抜け出せていない。平和・人権・環境などの人類全体の課題に、国境を超えて協力して取り組んでいこうという哲学がない。」との意見に対しては、「東京都教育ビジョンでは、グローバル人材の育成に関して『使える英語力の育成』『豊かな国際感覚の醸成』『日本人としての自覚と誇りの涵養』の3本柱を示しています。本計画ではその柱に則って具体的な20の施策を展開してまいります。」と「都教委の考え方」を示す。

★「生徒・教員の英語力の目標値が高すぎる。学校現場に無理を強いると同時に、東京都の教育が英語に振り回されているという印象を受ける。」との意見に対しては、「世界的にグローバル化が一層加速していくことが想定される中、国内でも小学校英語教科化や大学入学共通テストにおける民間事業者等実施の資格・検定試験の導入など、英語教育を取り巻く環境は日々変化しております。また、東京都では、東京2020大会も目前に控えており、外国人との交流機会も飛躍的に拡大するなどの状況を踏まえ、目標を設定しております。本計画を着実に履行し、目標の実現に向けて取り組んでまいります。」と「都教委の考え方」を示す。「都教委の考え方」を見れば、パブコメで寄せられた意見を検討した形跡は見られない。小学校英語の教科化に反対や疑問の声がかなりあるのに、都教委はそこには全く、耳を貸そうとしない。

★3つの柱《「使える英語力」の育成、豊かな国際感覚の醸成、日本人としての自覚と誇りの涵養》の、「日本人としての自覚と誇りの涵養」について、北村教育委員から「日本人が前面に出て、日本人でない生徒が疎外感を感じてしまうのではないかが心配。それは、都教委の本意ではないと思うので、配慮できるとよい」(主旨)と発言があった。これに対し事務方は、「『日本人としての自覚と誇りの涵養』を通して、外国にルーツを持つ生徒については、母国・母語を大事にできるような指導をする」と回答。中井教育長が事務方に、「この点を加筆する方向で表現を考えてほしい」と要請し、策定案は承認された。

②「学校における働き方改革推進プラン」の策定について
 これも11月9日の定例会で中間まとめが報告され、パブコメを募集した上で、策定した案の提案という手順を踏むが、寄せられた意見を採用した箇所は全く見当たらない。「プラン」案の「目標」は、中間まとめで出されたそれと変わりがなかった。「週あたりの在校時間が60時間を超える教員をゼロにする。」「平日は、1日あたりの在校時間を11時間以内とする」「土曜日、日曜日については、どちらか一方は必ず休養できるようにする」というもの。また、「取り組みの方向性」でも、「(教員の)意識改革」を第一にあげる。
  なお、寄せられた意見の件数は390件、うち、学校関係者からが301件。その「意見要旨」とそれに対する「都教委の見解」を幾つか紹介する。

★「『週あたりの在校時間が60時間を超える教員をゼロにする。』とあるが、過労死ラインギリギリまでは勤務しても差し支えないように受け取れてしまう。目標としては適切でないように思う。本来の7時間45分の勤務時間に目標は設定すべきではないか。」「『平日は1日当たりの在校時間を11時間以内とする』というのは、週当たり55時間となり、すぐに60時間に手が届いてしまうラインとなる。このように目標を定めるのであれば、労基法に鑑みて『8時間以内とする』が適切である。」「週休日である土日は、どちらか一方は必ず休養できるようにする」というのは、取組方針として掲げるべきではない。このように設定するのであれば、『2日は必ず休養できるようにすること。土曜日、日曜日に業務に従事したときには、直近に週休日を変更できるようにすること』とすべきである。」(同様の意見が25件)との「意見要旨」。

★これに対する「都教委の見解」は、「教員については、勤務様態の特殊性があることから、勤務時間の内外を問わず包括的に評価した処遇がされています。一方で、教員の勤務実態調査において、長時間労働の看過できない実態が明らかとなりました。本プランの目標は、こうした状況を踏まえ、教員の健康障害防止のためにも、いわゆる『過労死ライン』等の基準を目安とする在校時間を意識した取組が必要と考え、当面の目標数値として設定したものです。都教委は、管理職を含む教員の意識改革と併せて、すべての教員を対象とした長時間の改善に向けた総合的な対策を継続的に講じていくことにより、教員の負担軽減を図り、教育の質の向上を目指していきます。」

★「そもそもが、教員自らの『働き方』に問題があるかのような前提には納得できない。教員自らが、『時間を意識した仕事』を行う。そのために『タイムマネジメントの視点に立った研修』を行えば改善されると考えていることが、間違いである。とにかく、人が足りない。今の現場の教員定数のルールは、社会が変化し教育環境が変化したことに何も対応していない。各学校の正規教員の人数を増やすことが急務である。」(同様9件)に対する「都教委の見解」は、「教員の長時間労働の改善に当たっては、管理職のタイムマネジメント能力の向上とともに、管理職を含む教員全体が勤務時間を意識した働き方を推進していくことが重要であると考えます。教職員定数の改善・充実については、都教委として引き続き国に対して要望するなど、実現に努めていきます。」

★都教委が本気で長時間労働を解消しようとするならば、教員の意見にあるように、正規教員の人数を大幅に増やすことだ。国際レベルの少人数クラスにして、正規教員を配置することだ。解決策はそれしかない。オリンピック・パラリンピックを辞退し、その金をここに使うことが、都民ファーストの都政となる。そうした都税の使い方は大歓迎だ。

 この議題の中で遠藤教育委員は藪から棒に言った。「都教委は市町村教委に対し、支援・補助をするとあるが、指示はできないのか。『都立学校はこうする。市町村教委もやれ』とどうして言えない。」と。「地方教育行政法で、支援と定められている。指示はできない」と、宮崎教育委員が助言する場面があった。法律解釈はそのとおりだ。
  ならば宮崎教育委員は、都教委が「日の丸・君が代」の強制と処分を14年にわたって市町村教委に指示していることを反省し、撤回を発案すべきではないのか。


④中学校における特別支援教室の導入ガイドラインについて
 発達障害のある生徒が可能な限り多くの時間を在籍学級で過ごし、障害による学習上または生活上の困難を改善・克服する指導を特別支援教室で受けるようにするという。小学校は2016年に導入を開始し、2018年度に全校導入、中学校は2018年度に導入を開始し、2021年度までに全校に導入。2019年度からは、生徒10人につき1人の教員を配置とのこと。
  これを進めることで、「障害による困難が改善・克服される」だけでなく、「障害のある児童・生徒への指導に身近に触れることとなり、・・・障害全般に対する理解が深まる」「ともに学ぶ環境が充実することは、…互いに尊重し合うともに学ぶことを通じて、共生社会の形成に資する」、インクルーシブ教育なのだとガイドラインは謳う。

★美辞麗句を並べるが、まやかしの特別支援教育だ。手がかかる生徒を排除することでしかない。障がい者差別の解消を教育行政が本気で考えるならば、障がいのあるなしにかかわらず、分離をやめ、子どもたちがともに学び生活する環境(学校)を提供することだ。少人数クラスにするとか、補助の教員を配置するとかをすれば、発達障害のある生徒も、他の障がいを持つ生徒も、地域の学校で学び生活できる。このことは、他国からいくらでも学ぶことができるのだから、教育委員は勉強してもらいたい。