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2016年10月23日日曜日

10/17 河原井・根津さんの08年不起立・停職処分裁判

10月17日(月)東京地裁で、河原井さん・根津さんの08年「不起立」裁判が行われた。
08年は二人とも停職6ケ月の処分だった。渡部さんの報告です。


すでに07年「不起立」処分(河原井さん停職3ヶ月、根津さん停職6ヶ月)については、昨年5月高裁で処分取り消しの判決が出ており、都教委は河原井さんについては上告せず、根津さんついての処分についてだけ上告していた。しかし、今年5月に最高裁は都教委の上告を棄却し、根津さんの勝利も確定した。
今回の08年処分については、本来なら5月の最高裁棄却を受け、都教委は処分を取り消すのが当然であろう。
しかし都教委は、河原井さんについては、処分されてからも「全国行脚」をしたとか、根津さんについては「トレーナー」を着たり、学校前に「停職出勤」したから、といった理由を付け、あくまでも自分たちの「正当性」を主張してきた。

10/17は以下の3人の証人尋問(13:00~17:00)

 (被告)鈴木明・人事部教職員服務担当副参事(当時)
 (原告)根津公子さん(南大沢学園養護学校(当時)
 (原告)河原井純子さん(八王子東養護学校(当時)


◆鈴木明人事部教職員服務担当副参事(当時)の尋問

鈴木氏は処分案の検討等、二人の処分に関わった人物である。その鈴木氏は、原告側の弁護士の尋問に対して次のような回答をした。
●「懲戒処分案については、その後教育委員まで変わらなかったのか」
    ⇒「変わらなかった」
●「体罰などの処分はネットで学校名などは公表していないが、日・君については公表している。なぜか」
    ⇒「わからない」⇒「重大なものだと考えていたので」
●「体罰などでは何回しても戒告にとどまっているのがあるが、なぜ日・君だけ累積加重処分なのか。ヒドイとは思わなかったか」
    ⇒「わからない」「ヒドイとは思わなかった」
●「最高裁判決では累積加重処分を繰り返せば、最後は免職になると書いてあるが、どうだったのか」  
    ⇒「免職までは考えていなかった」
    (しかし、このあと根津さんへの尋問で、根津さんは繰り返し「次はクビだ」と     言われたことを証言した)
●「長期間職場から離すことは生徒への影響も大きい。そのことは考えなかったのか」
    ⇒「配慮も考えた。しかし国旗・国歌は重大なことだ」
●「トレーナーなどを着てはいけないという決まりはあるのか」  
    ⇒「規定はないがそこに言葉が書かれているから」
     (根津さんは以前から「強制反対 日の丸・君が代」などと書かれたトレーナ      ーやTシャツを着ており、そうした教員は他にもいた。また根津さんは仕      事がら汚れるので作業着として着ていた)
●「他県などの処分例で、東京ほどヒドイものはない。同じ学習指導要領でやっているのだから、おかしいのでは」
    ⇒「他県の判決のことはよく知らない。」 
●「当時の新聞などの世論調査でも60~70%は処分反対と出ていたが、考慮しなかったのか」
    ⇒「考慮しなかった」
●「最高裁判決の際、宮川意見書では、東京やごく一部の地域では突出していると述べられているがどう思うか」 
    ⇒数字的には認める」
ご覧のとおり、いい加減、無責任な回答が続いた。

◆根津さんへの原告側弁護士の尋問

○「都教委がやっていることは教育に反する行為だ」と考えて、自分は具体的な資料などをもとにして子どもたちが考えられるように教育活動をして来た。また、子どもたちのなかにも『日・君』について考えている子がいる。『私は起立が出来ない』『うちの家族は反対している。私も反対だ。強制しないでほしい』と言ってきた子もいた。
○私の停職処分に対しても、多くの生徒たちが怒りを持っていた。
 06年3月の処分事案には教え子が証言に来た。停職出勤のときには自分で作ったパネルを持ってきて、停職出勤している自分の脇に置いて行った。
 国旗・国歌を一方的に教え込むことはやっていけないことだ。」

◆さらに弁護士に、アメフトのキャパニック選手の「不起立」(今回これに関する資料も提出された)についての考えを聞かれると、次のように述べた。
 
○「たった28歳で選手生命が断たれるかもしれないのに、この方が大事だとして踏み切った。敬意を表する。オバマ大統領の擁護するコメントがあったが、都教委の教育長はこういうことを言えるか。民主主義がアメリカでは根付いている。日本はそうではない。
○この問題でイギリス人のアレックスが論文を書いているが、アレックスは、日本の状況は世界的にみてヒドイと書いている。
○他に彼女は、08年3月に処分され強制配転させられたが、その後、それまでの勤務校の職員たちから、生徒や職員と一緒にとった写真のアルバムを頂いたことも紹介した。
その中には職員たちの寄せ書きもあり、そこには根津さんへの感謝と尊敬の気持ちなどが書かれていた。

◆都教委側の弁護士からの尋問

○トレーナー着用について、都教委の弁護士がしつこく「教育活動の一環として着ていたのだろう」とかみついてきた。
根津さんはそれに対し、
・それ以前から着ておりそれ以後も着ていた、
・いろいろな社会問題があることも知ってもらえればと思った、
・作業着としても着ていた
と述べ、最後に、次のように述べた。
○「豊洲市場が問題になっている。石原が明らかに悪いが、都教委がやっていることと全く同じと確認するに至った。
 『職務命令』を校長に出させて処分する。しかし、校長らの声は聞かない。自分を処分した4人の校長のうち、3人は『10・23通達』に反対だった。憔悴しきっていた校長もいた。涙を流した校長もいた。私(都教委が後ろに控えていて、現認体制をとっていたが)私以外の教員の不起立をあえて現認しない校長もいた。
○評価制度では、私の教育活動を評価し、弘長「学習指導」の項目ではAを付けた。しかし、都教委にBをつけろと直された校長もいた(あとで、校長自身がそう教えてくれた)。これが現実だ。」

◆河原井さんへの尋問

●自分の教育に対する考え方=<強制しない、差別しない、おかしいことはおかしいと言おう>を述べた。6ヶ月停職処分のきわめて大きな経済的不利益と教育的不利益を語り、
問題となった「全国行脚」に関しては、次のように述べました。
○「全国行脚で沖縄に行き東京で起こっていることを話した時、オバアは、『日の丸の赤は同胞の血、君が代は皇室の歌、民衆の歌を早く作らねば。沖縄戦は<ノー!>と言って立ち上がらなかったその結果だ』と述べた。
今社会は刻々と変わっている。昨年の安保法制ではママたちは『誰の子どもも殺させない』と立ち上がった。そのような判断ができる教育、命令や強制で動かされない教育、を伝えていきたい。
10・23通達の憲法判断を!すべての処分の取り消しを!」

10/17の河原井・根津08年裁判は、都教委が内外ともにいかに突出しているかを浮き彫りにした裁判だった。

次回は、2017年2月2日(木)10:30~です。