7月24日 第10回「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流会(主催:実行委員会)
『コロナ危機で明らかになった教育の大分岐――ICT・オンラインでええのん?
今こそ子どもと向き合う学校を』
が開かれました。(主催:実行委員会)94名が参加しました。 渡部さんの報告です。
■黒田伊彦氏の開会挨拶
卒業式などでコロナ感染(人命)よりも「君が代斉唱」を重視する「愛国心」教育に対する闘いの重要性を述べるとともに、ITC教育の危険性について次のように述べました。
「コロナ危機の中で長期休校による緊急対応としてのオンライン学習が日常化され、企業の参入により学校の民営化ともいうべき状況がつくられようとしている。政府は全国の小中学生に一人一台の端末機の整備のため4600億円を計上している。経産省は景気浮揚のため通信情報産業を学校教育に参入させ、EdTechを導入しようとしている。
提供される学習情報による学習成果は、ビッグデータとして民間産業に保管され管理される。そしてA.I.によって個々人に最適な学習プログラムを提供するという「個別最適化学習」が構想されている。これは学校の民営化に他ならない。
これによって培われる価値観は、企業が商品として売り出すものであり、子どもらは消費者になるだけである。
(渡部コメント)ここには、現在行われつつあるICT教育の危険性が簡潔に述べられている。簡単に言うと、公教育が「民営化」により、金儲けのための全面的な市場になるだけでなく、子どもたちの情報支配と教育統制の手段になるという事である。
■埼玉大学・高橋哲准教授の講演
『新型コロナウィルス臨時休業措置をめぐる教育法的検討
~「不当な支配禁止」原則の意義と学校自治、地方自治の重要性~』
(渡部要約)
★ここではまず、安倍首相による「全国一斉臨時休校」要請は、<法的根拠>も<科学的根拠>もないものだったことを明確にされた。
そのために「学校保健安全法」では、権限は自治体の教育委員会にあること、「新型インフル特措法」では、都道府県知事が「要請」「指示」できること、しかし従わなくとも罰則はないこと、を示された。
★また、米国疾病予防管理センター(CDC)の三原則
(地域決定の原則、専門機関活用の原則、最小限の制約原則)に照らしても、「0点」の措置であったことも示された。(この3原則は日本の感染症対策にも採用されていた)
★一方、政治アピールを狙う各自治体首長の「悪ノリ」が起きてきたことも指摘された。
そして、首相「要請」がもたらしたものとして、
①現行教育法体系が備えていた「適切な対応」を「台無し」にした
②各地域における休業措置の政治利用があった(大阪府、北海道、奈良市・・)
③教育の「不当な支配禁止」の意義が鮮明になった
とし、③に関して、第二波への対応においても、保健所の科学的・専門的支援を前提に、
教育の地方自治、学校自治を如何に発揮できるかが重要な鍵になる、と述べられた。
★その後、「教員の『働き方』改革の問題」で、新型コロナウイルス対応のもとで動き出し、各自治体の9月議会で導入、来年4月から実施される(?)予定の「一年単位変形制労働時間」について詳しく説明してくれた。
これは実質的には、サービス残業を認めるもので、その上限が
①1か月の合計時間が45時間 ⇒ 特別な事情がある場合は100時間未満
②1年間の合計時間が360時間 ⇒ 〃 720時間未満
というものである。
問題点としては、
①労使協定締結義務の不在
②割増賃金支払い義務不在
③臨時的な特別な事情の上限超過への罰則不在……をあげ、
・教員の「タダ働き」を公認する法的機能を果たす?
・上限まで「働かせて良い」基準として機能する可能性
とし、「労基法32条の4」との関係でさらに詳しく説明してくれ、今後、①自治体レベルでの交渉 ②学校レベルでの交渉が重要であることを述べられた。
これらのことがなされなければ、「働き方改革」「一年単位変形労働時間制」により、教員は、引き続き無権利なまま長時間労働が強いられるということだろう。