8月22日(木)都教委定例会及び総合教育会議 根津公子さんの報告です。
どんどん進むデジタルテクノロジー活用教育
定例会の公開議題は高校の来年度使用の教科書採択の1件。
都教委にとっては、実教出版の日本史問題が「解決」した(「日の丸・君が代」に関し、「一部自治体で公務員への強制の動きがある」と記述した実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」について、都教委は「都教委の考え方と異なる」と各学校に通知し、学校が選定することを事実上禁止してきたが、16,17年度版からは実教出版が記述を変えた)ので、 各学校が選定した出版社版が採択されたとのこと。
ちなみに、「高校日本史A」を選定した学校が10校、「高校日本史B」を選定した学校が5校だった。開始時刻が前回の定例会終了時に告げられた時刻から変更されていて、私は傍聴できず、Hさんから聞いたのだった。
「Society5.0時代の学校教育」
その後、総合教育会議。こちらは傍聴した。
議題は「Society5.0時代の学校教育」と題し、まず、教育長が「タブレットPCを使っている学校の児童・生徒は、『授業が分かりやすい』と回答し、正答率も高い」「OEOECD諸国に比べて日本のICT活用は低い」と報告。Society1.0は狩猟社会、Society2.0は農耕社会、Society3.0は工業社会、Society4.0は情報社会で、Society5.0は日本政府が推し進める新しい社会だという。
次に千代田区立九段小、町田市立堺中、三鷹中等教育学校(後期課程)の校長が自校での活用について報告。授業での活用のほかに、保護者会のお知らせやアンケート、学校だより等の家庭との連絡や、出席簿などの校務支援にも活用し、「働き方改革」にもつながると報告された。ICTを使いこなせる教員は少ないのが現状なのだから、「働き方改革」どころか、かえって忙しさを倍加させられているのではないかと思ったところ、「働き方改革」を言ったその口で、「ICT能力の差がかなりあるのが問題」と、相反する発言をした校長もいた。
三鷹中等教育学校は16年度から「ICTパイロット校」(全都で2校)に指定され、全生徒に1台ずつのPCを提供し、日常的に授業や諸活動で使っているのだという。ほかにも、都は15年度から「ICT活用推進校」12校を、16年度から情報モラル推進校20校を指定しており、九段小はICT活用推進校。
都教委HPには、各推進校を「支援」している企業名が書かれている(「支援」という言葉を使っている)。そこでは膨大なお金が動く。今日の傍聴者の中にはICT機器関係の社員と思われる方が数人いたことからも、都教委・学校と企業との癒着・もたれ合いが生じる心配をしてしまう。公教育が教育産業に丸投げとなる。今後、教材も企業が作り販売することになり、教員はその教材を映し出すだけ、目の前の子どもたちと人格的接触をしなく、できなくなってしまうのではないか、今以上に子どもたちは人と人とのかかわりの中で人格形成をすることができなくなってしまうのではないかと考えると恐ろしい。
デジタルテクノロジーを活用した教育は国策
最後は、「Society5.0時代の学校教育~EdTechがもたらす教育改革~」と題して、佐藤昌宏・デジタルハリウッド大学大学院教授の話。氏は、内閣官房・教育再生実行会議の技術革新ワーキング委員や経産省・未来の教室とEdTech研究会座長代行等々、いくつもの政府の役職にあるそうだ。
EdTechとは、デジタルテクノロジーを活用した教育(学び)のイノベーションで、それは「国策」だという。EdTechが進むと、学習者一人ひとりにとって最適な学習機会が得られる。知的好奇心さえあれば、よい学びができる。デジタルテクノロジーは、単なるツールではなく、「教育のインフラ」。教育を科学する。人間の価値を再確認する。EdTechイノベーションの目指すところは、デジタルテクノロジーを活用し、「質の担保された教育」をどう作るかにある。それには、教育についての既成概念を取り除くことが必要。受験はなくなるかもしれない。などと、聞き耳を立てないと聞き取れないほどの早口での話だった。こう言い切ることの根拠はあるのか、と疑念を持たざるを得なかったが、それについての話は一切なかった。
話を受けて教育委員の二人から、「(ICTに)今投資することが大事」との発言があったが、行け行けどんどんはやめてもらいたい。 デジタルテクノロジーを活用した教育を、文科省を超えて総務省が打ち出す中、子どもも教員も長期にわたって、いや生涯にわたって個人データが国に管理されるという怖さも感じる。