■7月8日(月)午後1時30分から東京地裁103号法廷にて、第2次採用拒否裁判
第14回弁論が行われた。傍聴者は80名を越え、傍聴席はほぼ埋まった。(原告 青木茂雄 報告)
◆裁判の報告
★この裁判は、2007、8、9年に定年退職後の非常勤教員等への再雇用を、卒業式・入学式での「不起立」による懲戒処分を理由に拒否された24名の原告によって、2009年9月29日に提訴された裁判であり、これまでの3年10カ月の間に13回の口頭弁論が行われてきた。前回の第13回(6月20日)からいよいよ証人尋問に入った。
第12回弁論までは裁判官一人で訴訟指揮を執っていたが(第11回までは渡邊弘裁判長、第12回から竹田光広裁判長)、前回から通常の3名の合議体(右陪席・松田敦子裁判官、左陪席吉川健治裁判官)となった。
★第14回口頭弁論では2人の原告(Kさん・Tさん)の証人尋問が行われた。
Kさんは、自分が教師になろうとしたのは、出身校の都立高校の自由な教育方針と自由な校風に共鳴したからだった、「君が代」は天皇賛美の歌で国民主権にふさわしくない、教師としての良心を後世にまで伝えなければならない、と自己の信念を切々と述べた。また、当日の不起立にいたるまでの緊張と精神的かつ身体的に被った苦痛を訴えた。
都教委側は反対尋問で、学習指導要領にもとづく「国旗・国歌の指導」についてしつこく追及してきたが、Kさんは「一般的な質問には答えられない」と軽妙にかわした。
★続いて証言台に立ったTさんは、10・23通達以前の、生徒も参加して創意工夫に富んだ感動的な卒業式の実態を克明に証言した。とくに対面式の卒業式では、保護者と卒業生が涙ながらに言葉の交わし合いが行われたこともあった、と述べた。傍聴席からも「うんうん」とうなずきが漏れた。
都教委側はまたしても学習指導要領の「国旗・国歌の指導」について執拗に問うてきたが、Tさんはこの「指導」の要求は学校に対するものであって個々の教師に対するものではないと反論した。
★都教委側は、「国旗・国歌の指導を怠る教師」を裁判官の前で印象づけようとしたが、この目論見を2人の原告は見事にはねのけた。
Kさん・Tさん両者とも、最後に裁判長と陪席の裁判官が詳しく質問した。この裁判に対する裁判所の関心の大きさを示すものである。
★原告の尋問これにて一旦は終了し、この後は学者証人の意見書を巡ってのやりとりが焦点となる。学者証人の尋問が行われるかどうかは、どれだけ裁判の論点に裁判所が注目しているかの試金石となる。
弁論の全体が終了したのは午後5時近くであった。その後、弁護士会館で報告集会が行われ、約50名が参加した。Tさんは、学校が主体的に編成する教育課程と教育内容に対して都教委が強制的に介入することがそもそも問題だと述べ、加えて原告の被った金銭的な損害も膨大なものになると強調した。
最後に、田中弁護団長が「最高裁判決以来、情勢が変わっていることはない、今回の尋問は成功した、今後の焦点は学者の意見書だ。良いものにしたい。」と結んだ。