■3月24日午後、都立高校教員Oさんの懲戒免職処分取消等請求事件で、東京高裁(第4民事部・綿引万里子裁判長)は、都教委の「裁量権の逸脱濫用」を認定し、都教委の控訴を棄却し、懲戒免職処分取り消しを言い渡し、一審原告Oさんが勝訴しました。近藤徹さんの報告です。
★都教委は、Oさんの免職処分を取り消した一審東京地裁判決(2015年10月26日)を不服として、東京高裁に控訴していましたが、高裁は1回の弁論(1月21日)で結審し、3月24日に判決日を指定しました。綿引裁判長は、判決日前までの双方の和解を提案しましたが、都教委側は和解を拒否し、判決に至りました。
◆生徒に寄り添って頑張る教員を励ます判決
★この事件は、東京都教育委員会が、女子生徒Aさんに「不適切なメール」を送ったなどとして、2014年7月、都立F高校の教員Oさんを懲戒免職処分としたことに対して、Oさんが免職処分取り消しを求めた事件です。
★地裁の口頭弁論の中で、「教え子」の生徒Aさんも証人として出廷し、親に学校をやめさせられそうなほどの厳しい家庭環境で、O先生の援助で学校を卒業できて感謝していること、Oさんを免職処分するにあたり、都教委は女生徒本人の事情聴取もしなかったこと、などを証言しました。
★また、F高校の校長(当時)は、都教委作成の虚偽の陳述書に無理矢理署名・押印させられたが、良心の呵責に耐えかねてその陳述書を撤回する旨の陳述書を裁判所に提出しました。
★これらの証言などにより、この免職処分が、生徒を思いひたすら生徒に寄り添う教育実践をめざしていたOさんに対する都教委によるパワーハラスメントであることが明らかになりました。
★Oさんは、地裁に続き、東京高裁で執行停止申立を認められ、1月6日にF高校に復帰し、授業をさせてもらえないものの、教務部などの校務分掌の仕事に就き、勤務していました。特に入学選抜の業務の中心で頑張っていました。そして今回の判決を迎えたのです。
高裁判決を受けて、Oさん(数学科教諭)は「高裁でも勝ってとても嬉しい。授業で教室に行けないのは本当につらい。生徒に数学を好きなってもらうため、一日も早く教壇に立ちたい。」と涙ながらに語りました。
■代理人の加藤文也弁護士の報告
「事実認定は、現場で生徒のためにがんばっている教員を励ます内容となっております。
(判決の結論部分は、次のように述べております。)
「生徒Aが家庭環境に恵まれず、被控訴人はその窮状を見かねて支援の気持ちから生徒Aを熱心に指導するようになり、本件非違行為に至ったという本件非違行為の原因や動機、生徒Aはそのような控訴人の熱心な対応に感謝し、被控訴人が懲戒処分を受けることを望まず、苦情を申し立てた生徒Aの父親も被控訴人を免職にすることまでは望んでいない状況にあること、被控訴人に過去の処分歴はなく、日常の勤務態度についても特に問題はなく、熱心に生徒を指導し、佐藤校長や他の同僚教員からも評価されていること、本件非違行為が発覚した後も命じられた本件研修に熱心に取り組んでいたにも関わらず、都教委は、復職を前提とするはずの研修が終了する前に本件免職処分を行ったこと、そして、何よりも免職処分は、公務員にとって職を失うという重大な不利益を課すものであることを踏まえると、被控訴人に対して本件処分量定に定められた停職よりも加重して懲戒免職処分を選択することは、社会観念上著しく妥当性を欠くものと言わざるをえない。本件免職処分は、懲戒権者たる都教委が有する広汎な裁量を前提としたとしても、なお、その範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものであり、違法であると判断せざるを得ない。」
この教員が、1日も早く授業を持てるようにするため、最後のご支援をよろしくお願いいたします。」