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2015年5月27日水曜日

5/25 東京地裁の「再雇用拒否」判決 「裁量権の乱用で違法」

 5月25日、東京地裁(吉田徹裁判長)で、「君が代」不起立で再雇用を拒否された元教職員ら22人に対し、都に損害賠償(総額約5370万円)を命じる判決が出されました。理由は都教委の「裁量権の乱用で違法」です。これはある意味画期的な勝訴判決だったと思います。渡部さんのコメントです。

◆判決文から

判決文の中には次のような部分があります。
 「本件不起立等の態様が、他の教職員や生徒らに不起立を促すものでも、卒業式等の進行を阻害し、又は混乱させるようなものでもなく、厳粛な雰囲気の中で行われるべき前記の卒業式等(儀式的行事)の狙いを大きく阻害するなどの影響を与えたとまでは認められない ことを考慮すれば、原告らの本件職務命令違反の非違性の程度が特に重いものであるとは認められないというべきであり、・・」
ここで、書かれていることは、これまでのすべての不起立者に当てはまることです。

また、次のような部分もありました。
 「原告らの本件不起立等の動機、原因は、その歴史館又は世界観等に由来する君が代や日の丸に対する否定的評価等のゆえに、本件職務命令により求められる行為と自らの歴史館又は世界観に由来する外部的行動とが相違することにあり、個人の歴史観又は世界観等に起因するものであると認められるところ(弁論の全趣旨)、本件職務命令が原告らのこうした歴史観又は世界観等を含む思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面が
 あることは否定できず、その思想信条等に従ってされた行為を理由に大きな不利益を課すことには取り分け慎重な考慮を要するのであって、上記の点は非違行為の重大性を根拠に付ける理由としては不十分というべきである(最高裁平成23年5月30日第二小法廷判決・民集 65巻4号1780頁等、最高裁平成24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号1頁等参照)。
これも、ほとんどの不起立者に共通したものではないでしょうか。
今回の判決はここまで明確に、「歴史観又は世界観等を含む思想及び良心の自由」
について述べています。
この判決に従えば、東京の田中聡史さんへの減給処分と<再発防止研修>や大阪の奥野さんへの戒告処分と<警告書>などは、あってはならないものです。
また、戒告となった大阪の松田さんはここに述べてあることを正面から問題にしています。

さらに次のようにも述べています。
 「原告らが被った精神的損害の主たる原因は、原告らがそれぞれの思想信条、すなわち、多様な価値観の尊重やそれを教育の場で実践することを重視する考え、日の丸及び君が代の歴史的意義に対する考え、国旗掲揚・国歌斉唱を一律に強制することに反対する考え等に基づいて本件職務命令に従わなかったことにより、戒告処分等の懲戒処分のみならず、最終的には、本件不合格等とされ、再雇用職員等として都立高校の教壇に再び立つ機会を
不当に奪われた(期待を裏切られた)という点にあると認めるのが相当であり、本件不合格等に至るまでの過程における本件通達その他都教委の対応に係る原告らの個々具体的な心情等を、上記の精神的損害とは切り離して別途の損害として認めることは相当でないというべきである。」このようにして損害賠償が認められました。
ところで、ここに述べられていることは、停職6ヶ月まで多くの処分を受け、多大の賃金カットを被り、繰り返し教壇に立つ機会を奪われ、かつその度に転勤を強要された根津公子さんこそが、もっともよく当てはまる事例だと言えるでしょう。
都教委は、ひどい処分を根津さんに繰り返し、減給処分でさえその多くが取り消されているにも関わらず、6ヶ月停職処分をいまだ撤回せず、根津さんと裁判で争っているのです。

しかし、今回の判決はそうした根津さんへの「過酷な見せしめ処分」を浮き上がらせることにもなりました。都教委の外堀は次第に埋められつつあると思います。

世の中の危険な動きが、これまで多くの被処分者たちが訴えてきた「日の丸・君が代」強制の本質を浮き彫りにし、裁判官も感じるところがあったのではないでしょうか。