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2015年5月27日水曜日

5/25 再雇用拒否二次訴訟 勝訴、都教委を断罪! 損害賠償を命じる

 5月25日、再雇用拒否撤回を求める第2次訴訟において東京地裁(民事36部吉田徹裁判長)、「君が代」斉唱時の不起立「のみ」を理由に、東京都が定年退職後の再雇用職員、非常勤教員等の採用を拒否した事案について、「期待権を侵害」し「裁量権の逸脱・濫用で違法」として、都に原告22名の元都立高校教員に211万円~260万円の損害賠償を命じる判決を言い渡しました。近藤徹さんの報告です。

本件訴訟は、2007年度~2009年度に再雇用を拒否された原告(元都立高校教員25名・当時。現在の原告数22名)が2009年9月東京地裁に提訴して、「君が代」斉唱時の不起立を理由とした再雇用拒否等が違憲であり、かつ東京都・都教委の「裁量権の逸脱・濫用」であることを争点として「損害賠償」を求めて争ってきた事案です。この間お亡くなりになった2名の原告も今日の勝訴を待ちわびていたと思うと残念でなりません。

判決内容は、都教委の主張をことごとく斥け不当な採用拒否を断罪しています。以下長いですが、裁判所発行の判決骨子(全文)をお読みください。

<骨子>


平成27年5月25日午後1時30分判決言渡103号法廷
平成21年(ワ)第34395号損害賠償請求事件
東京地裁民事第36部 吉田徹裁判長松田敦子吉川健治

判決骨子

1 当事者
原告○○ほか2 1 名  被告東京都

2 事案の概要
本件は,東京都立高等学校の教職員であった原告らが,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)が平成18年度,平成19年度及び平成20年
度に実施した東京都公立学校再雇用職員採用選考又は非常勤職員採用選考等において,卒業式又は入学式の式典会場で国旗に向かって起立して国歌を斉唱することを命ずる旨の職務命令(以下「本件職務命令」という。)に違反したことを理由として,原告らを不合格とし,又は合格を取り消した(以下,これらの選考結果等を「本件不合格等」という。)のは,違憲,違法な措置であるなどとして,都教委の設置者である被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償金の支払を求めた事案である。

3 主文
(1)被告は,原告○○ほか6名に対し,それぞれ211万1670円及びこれに対する平成19年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被告は,原告○○ほか7名に対し,それぞれ259万8420円及びこれに対する平成20年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を払え。
(3)被告は,原告○○ほか6名に対し,それぞれ259万6440円及びこれに対する平成21年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

4 理由の骨子
(1)再雇用制度等の意義やその運用実態等からすると,再雇用職員等の採用候補者選考に申込みをした原告らが,再雇用職員等として採用されることを期待するのは合理性があるというべきであって,当該期待は一定の法的保護に値すると認めるのが相当であり,採用候補者選考の合否等の判断に当たっての都教委の裁量権は広範なものではあっても一定の制限を受け,不合格等の判断が客観的合理性や社会的相当性を著しく欠く場合には,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法と評価され,原告らが有する期待権を侵害するものとしてその損害を賠償すべき責任を生じさせる。

(2)原告らに対する不合格等は,他の具体的な事情を考慮することなく,本件職務命令に違反したとの裏実のみをもってエ重大な非違行為に当たり勤務成績が良好であるとの要件を欠くとの判断により行われたものであるが,このような判断は,本件職務命令に違反する行為の非違性を不当に重く扱う一方で,原告らの従前の勤務成績を判定する際に考慮されるべき多種多様な要素,原告らが教職員として長年培った知識や技能,経験,学校教育に対する意欲等を全く考慮しないものであるから,定年退職者の生活保障並びに教職を長く経験してきた者の知識及び経験等の活用という再雇用制度,非常勤教員制度等の趣旨にも反し,また,平成15年10月に教育長から国旗掲揚・国歌斉唱に関する通達が発出される以前の再雇用制度等の運用実態とも大きく異なるものであり,法的保護の対象となる原告らの合理的な期待を,大きく侵害するものと評価するのが相当である。

したがって,本件不合格等に係る都教委の判断は,客観的合理性及び社会的相当性を欠くものであり,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たる。よって,都教委は,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用して,再雇用職員等として採用されることに対する原告らの合理的な期待を違法に侵害したと認めるのが相当であるから,他の争点について検討するまでもなく,都教委の設置者である被告は,国家賠償法に基づき,期待権を侵害したことによる損害を賠償すべき法的責任がある。

(3)再雇用職員等の運用実態,雇用期間等を考慮すると,原告らが再雇用職員等に採用されて1年間稼働した場合に得られる報酬額の範囲内に限り,都教委の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用による原告らの期待権侵害と相当因果関係にある損害と認めるのが相当である。