■11月7日の河原井さんの「君が代」不起立1ケ月停職についての差し戻し審・高裁判決で賠償金30万円の命令が出ました。
これについての当該の河原井さんから判決に対する見解が寄せられましたのでアップします。
◆11・7差し戻し審 画期的判決
<共闘の輪をもっと拡げていきたい> 河原井純子
1)判決に至るまで
1月16日、最高裁第1小法廷は「君が代」不起立処分について、裁量権濫用のみに弁論を開き、停職1ケ月の処分を取り消し損害賠償(精神的苦痛に対する国家賠償請求)を「もっと審理を尽くせ」と東京高裁に差し戻しました。後続裁判にもかなり影響を及ぼす訴訟と考え、少しでもいい結果を引き出したいと丁寧にすすめてきました。しかし、控訴審3回めの10月1日、突然の結審。判決日が言い渡されてしましました。計画していた私の尋問や研究者の尋問は「私の控訴審1回目の意見陳述」を理由に認められませんでした。裁判のなかで何度も味わった無念さでいっぱいでした。道半ばの判決。「どんな判決が出るか」とても不安な日々でした。
2)11月7日の判決
この日はあっという間にやってきました。
傍聴席に5席の報道席が用意されていました。人・人・人であふれる傍聴席に共闘のエネルギーを感じ、とても心強かったです。判決主文の読み上げの後に南敏文裁判長の感情のこもる声で判決理由の説明が続きました。その途中、途中で傍聴席から「よしっ!」「よしっ!」の賛意の声が飛び交いました。すべて読み終わると同時に大きな大きな拍手が法廷中に湧き起こりました。それを誰も止めませんでした。
一審、東京地裁の判決を変更して東京都に30万円の損害賠償を命じる内容でした。東京都は直ちに上告しました。
3)判決の概要
▼国家賠償上の違法性について
最高裁判決を引用して、停職処分は違法であるのみならず、不利益に対する考慮が尽くされていないので、「職務上通常尽くすべき注意義務に違反していると言うべきであり国家賠償法上も違法」と判示している。
▼都教委の過失の有無について
国旗国歌法制定時の政府答弁をかなり詳しく引用して、「職務命令に従わず不起立を行った者の不起立の理由等を処分の選択に当たって考慮に入れることは要請されたと言うべきである」「機械的、一律的な加重は慎重であることが要請されていたということができる」「体罰の事案では機械的、一律的な処分の加重はない」「不起立行為に不利益処分をすることが、思想・良心の自由に影響を与えるもので機械的、一律的に処分を行うべきではない」等として都の故意・過失を認める、意図的に処分をしているとした。
▼控訴人の損害について
「児童生徒との人格的触れあいが教育活動に欠かすことのできないものである」から「「財産的損害の回復のみによっては控訴人の精神的損害が慰謝されるものではないことは明らかである」として損害を認める。
「日の丸・君が代」裁判で初めて国家賠償請求を認める画期的に判決内容でした。
そしてまた、私たちの書面をよく読み込んでいることが判決文でわかりました。例えば、「障害」を「障がい」と記載しています。私は「障がい」者の方から「俺は害虫じやない。『害』という字を使わないでくれ」と訴えられてから「障害」を「障がい」と記しています。しかし、全国行脚で富山に行ったとき、「障がい」のある方から「『障害』を『障がい』と書いたからといって、わたくしたちへの差別はなくならない。『障害』と書いた方が抵抗しやすい」と言われました。
私は現在、「障がい」を選んでいます。そして、「差別をしないー差別されない」学校や社会を実現したいひとりです。
4)これから
「日の丸・君が代」裁判の核心である「10・23通達の違憲・違法性の憲法判断」と「すべての処分の取り消し」にむけて、「大法廷での弁論」を目指し、すすめていきたいと思います。
最高裁の扉は厚く重たい。でも永遠に開かない扉はないはずです。共闘の輪を拡げて、決してあきらめずに。(2012。11.23)