■大内さんは、今日の自民党政権の性格についての話しからはじめ、自民党改憲案をかなり詳しく批判しました。そして、安倍の教育政策、教育再生実行会議の位置づけを行い、どのように運動を進めるべきかについて言及しました。運動を進める場合、若い人たちとつながっていくことを提起しました。大内さんは、いま「奨学金問題対策全国会議」の共同代表になっていて、その問題について、詳しく述べられました。
以下、簡単に発言の要旨を紹介します。
◆大内講演
1.安倍政権の性格
安倍内閣について労働組合の機関紙なども右傾化とか保守化と言っているけど、それは間違い。イギリスの『エコノミスト』誌(2013.1.5)は「安倍新政権を“保守”と呼ぶことはその本当の性格をとらえていない。それは過激ナショナリストの内閣なのだ」と。
極右が政治のど真ん中にいることが恐ろしい。その勢力が改憲をやろうとしているということ。→「日本国憲法改正草案」(この草案の全文を見てほしい)
2.教育基本法改悪反対闘争の時、「教育基本法が改悪されれば必ず憲法改悪になる」と言った。その通りになった。教育基本法と日本国憲法は一体だから。2012年の自民改憲草案は自民党はこういうことを狙っているという本音をだしている。
3.(「天皇の元首化」に始まって、この草案のポイントを説明された。)略。
…自分が都立高校に通っていたころ、中曽根内閣だった。新自由主義攻撃の始まりであり、30年来の計画で来ている。改憲の狙いは9条と前文・平和的生存権の削除。他国並みの交戦規定、軍事機密、軍事法廷、集団的自衛権の解禁国民の安心・安全よりも国家国益を優先する。その体系にする。
4.2006年の教育基本法の改悪と教育再生実行会議は直結している。
教育基本法の改悪と10.23通達とは連動しているし憲法改悪と密接にかかわっている。 大阪で橋下・維新の会が登場は結局、安倍の台頭になった。
▼教育再生実行会議
・教育再生実行会議の狙いは教育行政に対して政治が介入するということ。
ex.「教育委員会の存在意義を原点に立ち返って見直す必要があります」→教育委員会の合議制の制度あらため、首長の介入強める。
教育内容への介入 自民党「教科書法」提言。
自民党教育再生実行本部「教科書検定の在り方特別部会」(主査:萩生田光一総裁特別補佐)「何を教えてほしいかを明確に教科書会社に伝達し、それに則って教科書をつくってもらうようにしたい」と。
5.運動の側の課題はなにか。
・学習会をやる。職場や地域や学校でつくる。教員は、労働組合員は憲法についてちゃんと説明できるか。そういうことが出来ないからこういう自体になっている。
・若年層とむすびつく。
「大学生たちを教えていて、ネット右翼とか確かにいるが、全体として、学生たちが9条を変えて、自民党が想定するような国防軍の改憲案に簡単に乗れるかというと乗れない。戦後の平和運動とか平和教育の蓄積がある。それが一番自民党に取っては困る。だからあんなに日教組をたたくんです。こんなに弱くなっても。
日本は戦争と平和、9条の問題が政治の中心争点になっていたんです。逆に言うと、自民党はどうして改憲を綱領に掲げ続けていながら、いまでも出来ない。ここを突破しようとしてるから突破させないことが大事なんです。
学生たちは9条改憲にハイとは言わない。しかし、言う可能性はある。それは戦争を肯定するんじゃなくて食べられないからそれを選ぶということです。理屈では戦争は嫌いだけれど戦争に行きます。
若年層の貧困の実体→非正規雇用は全体の35%を突破し、若年層のほぼ半数です。非正規雇用の90%以上は300万以下。私はフェイスブックでいまの学生のアルバイトを「ブラックバイト」と書きました。そしたら東京新聞にも「採用」されました。(2013.9.5)いまグーグルでブラックバイトを検索すると数万ヒットします。学生アルバイトもブラック化している。塾、外食産業、アパレル等々ひどいものです。そんなアルバイトはやめればいいと言うけれどやめられない、学生の経済状況がきびしいからです。例えば学生がアルバイトにつくのに40社受けたといいます。フリーターと競合しています。
それにさらに拍車をかけているのが奨学金です。大学生の50.7%が奨学金を借りている。8割が日本学生支援機構の奨学金で、うち7割以上が有利子です。利子の上限は3%で銀行の定期預金より高い。月10万円か借りると480万ですが返す額は646万円。大学卒業後、返済に追われる若年層は激増している。返せません、どうするか「国防軍入れば出すよ」ということです。自民党は選挙のマニフェストに大学の秋入学を掲げたが、秋入学は国際化への対応のためではありません。高校を卒業して半年間入隊訓練をうける期間です。
「奨学金問題対策全国会議」を結成しました。(奨学金問題対策全国会議編、伊東達也、岩重佳治、大内裕和、藤島和也、三宅勝久著『日本の奨学金はこれでいいのか!』(あけび書房、税込定価1680円〉11/22に集会をやります。
格差社会。アメリカの現在の富の不平等は世界恐慌時と同じくらいだと言われています。歴史をひもとけばナチズム、ファシズムが出てきた。
レーガン政権以降(サッチャー、中曽根)、30年間新自由主義政策をやってきて、新自由主義グローバリズム(現代資本主義)が全世界にまん延し、社会の解体が起こっています。富の不均衡が進めば庶民は将来への不安と不満ががうっ積し、ファシズムの温床になる。日本も同じ。ex.大阪の場合はねたみは公務員と教員にむ向かった。非正規雇用労働者と正規職の分断支配です。極右の台頭とか、憲法改悪とは新自由主義グローバリズムによる社会の解体のあらわれです。
われわれの反原発とか反TPPとか反貧困とかは、その背後のグローバル資本への批判がないとダメです。批判する思想性と現在の日本社会の中の労働者・市民の過半数を獲得するリアルな政治的実践がないとやられます。
9条の会とか、反改憲団体は戦争の記憶を持った世代、比較的ゆとりのある中間層を基礎とする運動だと思います。戦争の記憶を持たない若い世代とどうつながるか、中間層が解体し貧困大国化の中ではじかれた人とどう連帯するのか、、新自由主義で深まる個別化、分断化にどう対抗するか。インターネットや、あらゆる手段を使って若年層との接点を模索すべきです。その時にブラックバイトと奨学金は繋がりの接点になりますこの問題は現在の大学生の過半数を獲得します。若い労働者に話しかける糸口になります。戦争に行かされるのは若い人たちです。そこから、憲法25条や9条の問題につながっていきます。これらは資本の側が突きだした矛盾なんですから。以上。
このように大内さんは話しをまとめられ終わりました。(まとめの文責は事務局)