■11月19日(火)午後、都教委包囲首都圏ネットワークでは、初めて自衛隊駐屯地での宿泊訓練(7月26~28日、生徒35人参加)を行った都立田無高校校長と面談の上、
10月2日に提出していた公開質問書の回答を受け取りました。(参加者7名)
第一会議室に通され、校長と経営企画室長の二人が出席。質問などについての応答はすべて校長が行いました。
◆先に提出して公開質問書では、21項目の質問をし、最後に、<質問に対して文書及び口頭で回答すること。当質問・回答は報道機関その他に公開の上で行われています>
と書かれていたためか、校長はすでに回答を準備していました。
包囲ネットの質問と校長の回答を示すとわかりやすいので、そうします。
▼田無工業高校校長の<都教委包囲・首都圏ネットワーク回答>
(1)貴校はこれまでに「宿泊防災訓練」としてどのようなことを行ってきましたか。
それに対するどのような反省の上に、今回の「防衛省と連携した宿泊防災訓練」の計 画がつくられたのですか。
回答:平成25年1月に消防庁と連携した宿泊防災訓練を実施した。
今回、防衛省との連携で実施することとなったのは、教育庁との調整の結果であ る。昨年度の実施に課題や問題点があったからではない。
(2)宿泊防災訓練を自衛隊駐屯地で行うことの教育的意味をどのように考えていますか。なぜ「防衛省(自衛隊)」でなければならないのでしょうか。
回答:駐屯地での実施は、経費や施設設備の条件、安全面等を勘案し教育庁と防衛省 との調整で決まったことである。学校としては防災教育を行う施設として問題はな く、消防学校と同様に防災宿泊訓練を実施する場所としての意味しかない。防衛省 は、東日本大震災後の救助救援活動に自衛隊職員を延べ1000万人以上派遣してき た。そのような経験や実績を踏まえた防災教育を行うことは有意義なことだと考え る。いくつかある連携先から自衛隊を除外する理由はない。
(3)「本件宿泊防災訓練」の教育課程上の位置付けは何ですか。
回答:「防災教育の推進」を特別活動に位置づけて実施している。
(4)「本件宿泊防災訓練」は都立田無工業高校の学校行事として行われたそうですが、 学校の教育目標とどのような関連があると考えていますか。
回答:年度の取組目標である「防災教育の推進」に該当する教育活動である。
(5)自衛隊は「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接 侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持 に当たるものとする」(自衛隊法3条「自衛隊の任務」)ものです。その組織は「災害 救助」のために編成されたものではなく、防衛予算は世界5位の、事実上の「軍隊」 に相当するものです。
日本国憲法は9条において「戦力(つまり軍隊)の不保持」を定めており、自衛隊 が合憲か否かについては諸説のあるところです。また、教育基本法1条は、「平和で 民主的な国家及び社会の形成者」としての国民の育成を教育の目的と定めています。
以上の条規と事実に照らして考えるならば、公立の学校で、自衛隊駐屯地内で「防 災訓練」だけでなく事実上の「軍隊」としての「隊内生活」の行われる「本件宿泊防 災訓練」を計画・実施することは、違憲・違法の疑いが生じる可能性も十分に考えら れますが、この点についてはどう考えていますか。
回答:憲法判断は学校がするべきことではない。この宿泊防災訓練は、学校の教育 課程に基づき実施をしており、生徒の指導・監督の権限は学校にある。よって、 自衛隊が実施をしている隊内生活体験が行われているという認識は誤っている。
(6)「本件宿泊防災訓練」は2013年4月時点での「年間行事計画」の中に記載され ていましたか。記載されていなかったとすれば、どのような理由で年度途中に新たに 加えられたのですか。
また、学校内(教員・生徒・保護者)での理解は得られているのですか。教育課程 の変更であるから、事前に生徒・保護者にも知らせるべきではないのですか。
回答:年間行事計画には記載されていない。昨年度と同様に宿泊防災訓練の連携先 や時期等については、年度が姑まってから、教育庁と調整することになっている からである。教員の賛否などは確認していない。保護者会や学年集会等で説明し 意見を踏まえたうえで、教育課程の変更手続き行い実施した。
(7)池上信幸校長ご自身にお尋ねします。自衛隊施設での「宿泊防災訓練」の実施の 構想と計画は、誰がどこで立てたものですか。伝え聞くところによると、2013年 1月ころから、防衛省に対して自衛隊施設での「宿泊防災訓練」の打診が教育庁から あったとのことです。池上校長はこのことを知っていましたか。
池上校長は前任の部所が教育庁内の「防災担当」であったと聞いていますが、校長 ご自身、教育庁内でこの計画立案に携わったのですか。
「本件宿泊防災訓練」を学校が最終責任を負うべき学校行事と考えているのですか。 それとも都教委の事業の一環と考えているのですか。
回答:分からない。知らなかった。携わってはいない。教育課程の決定権は校長に しかない、最終責任は学校長にある。
(8)6月28日付けの指導部からの校長宛通知文「平成25年度防災教育推進校にの 宿泊防災訓練について」は、「訓練」の「連携機関」・「対象期間」・「対象学年」につ いて教育庁指導部からの「決定」の通知ですが、これについてお尋ねします。
1.「連携機関」・「対象期間」・「対象学年」については学校が希望したのですか、それ とも指導部から指定されたのですか。
2.「対象学年」を2学年としたのはどのような理由からですか。
3.「対象学年」2学年とは、2学年全員が対象となることですか。
4.「次回の説明会及びオリエンテーション等については個別に連絡します」とありま すが、自衛隊施設での「宿泊防災訓練」に関する都教委指導部からの事前の「説明 会」及び「オリエンテーション」は前回はいつ行われたのですか。それはどのよう な内容のものだったのですか。
5. また、「次回の説明会及びオリエンテーション等」についての「連絡」は受けたの ですか。
回答:1. 教育庁と調整をして決めた。
2. 本校では、宿泊防災訓練の対象が2学年であるから
3. 学年の男子生徒が対象ということである。
4. 7月16日頃に、7月22日の防衛省との打合せについて連絡を受けた。
5. まだ、受けていない。
(9)「防衛省と連携した宿泊防災訓練サマーキャンプ しおり」に掲載されている「日 程 行動計画」は学校が独自に作成したものですか。それとも自衛隊側から提供され たものに基づいて作成されたものですか。
回答:自衛隊及び教育庁と調整して決定したものだ。
(10)「しおり」の「Ⅳ 生活上で特に注意すること」に記載されている「非常呼集」 は軍隊用語です。このような行動が予定されていることは、教育の場としての「宿泊 防災訓練」にはふさわしくないと考えませんか。
回答:「非常呼集」が軍隊用語で不適切だということであれば、今後検討する。内 容は大震災が発生した直後を想定した行動の訓練である。
(11)「しおり」の「日程 行動計画」に記載されている、「防災講話」や「グループ学 習」は誰が担当し、誰の責任において行われたものですか。その内容を把握していま すか。また、防災技術の指導の実態をどれだけ把握していますか。訓練とは直接に関 係のない「集合・行進」がもっぱら行われたという情報も入っています。「訓練」と は謳っていますが、生徒を自衛隊での「隊内生活」に丸投げしたことになりませんか。 「訓練」行動の最中にもし事故や不具合が生じた場合は、責任は学校にあるのですか、 自衛隊にあるのですか。
回答:講義の担当者は防衛省の職員で、内容は、防衛省や教育庁と調整をして決め たので把握している。「集合・行進」がもっぱら行われたという事実はない。訓 練中の事故等の責任は学校にある。
(12) 訓練は行動計画に基づき行われた。早朝に集合したのは、非難訓練(非常呼集) を5時に設定したためである。冷房がないというのは間違った情報である。宿泊施 設には冷房は完備されており、通常の宿泊行事と同様に健康管理を行っている。
回答:訓練は「日程 行動計画」の通りに行われたのですか。所定の起床時間よ りも早く(28日の午前5時に)起床させられたという情報もあります。また、 訓練当夜は猛暑の中で、宿泊施設には冷房装置もありません。生徒の睡眠時間 など健康面での状態把握はきちんと行われたのですか。
(13)「日程 行動計画」によれば、自衛隊独自のメニューである「ロープワーク」に 要した時間は全体でわずか110分です。「応急救護訓練」に多くの時間が割かれて いますが、それは自衛隊ではむしろ専門外のことです。ことさら自衛隊駐屯地で「宿 泊防災訓練」を設定する理由がわかりません。「本件宿泊防災訓練」の本当の目的は 何だったのですか。
回答:自衛隊は東日本大震災において、延べ1000万人を超える職員を派遣し、救 助・救援活動を行ってきた。そのような経験を踏まえた防災訓練は大切だと考え る。本当の目的は「防災訓練」である。
(14)6月20日付けの「参加者募集“防災訓練in夏”では「更なる救急救命に係わる 技術向上を目指そう」と参加生徒によびかけながら、「しおり」では、「目的」の第一 に「共同で自衛隊内の施設で規律正しい生活を送り」と記載し、「訓練」の目的のす り替えが行われています。これは、参加生徒や保護者に嘘を伝えていたことになりま せんか。「訓練」の目的を生徒・保護者にどのように説明したのですか。
回答:指摘の内容は、宿泊を伴う学校行事では、集団生活のあり方について体験を 積むことが求められていることから記載したものだ。目的には、災害時に必要と なる知識と技術を身に付けることもかかれていて、目的のすり替えなどない。
(15)「本件宿泊防災訓練」は書類上は「文化的行事」としての「学校行事」というこ とになっていますが、ラグビー部のブログでは「部活動」として扱われています。両 者が混同されているのではないか。
回答:ラグビー部の生徒が参加したことは事実であるが、部活動ではない。
(16)学校行事は受益者負担が原則です。「参加費無料」は学校行事としては異例なの ではないですか。「参加費用」はどこがが負担したのですか。このように、「本件宿泊 防災訓練」は学校行事としては適切さを欠くと思われますが、これについてどのよう に考えていますか。
回答:防災教育推進校の宿泊防災訓練は全て、教育庁が予算化して実施している。 昨年度の宿泊防災訓練についても同様の措置がとられており、不適切だという認 識はない。
(17)参加者の数に比して、引率者が6名の教員です。通常の学校行事にしては引率者 が異例に多くなっています。どういう理由でこれだけの数の引率者にしたのですか。 自衛隊は東日本大震災において、延べ1000万人を超える職員を派遣し、救助 ・ 救援活動を行ってきた。そのような経験を踏まえた防災訓練は大切だと考える。 本当の目的は「防災訓練」である。
回答:昨年度の本校の宿泊防災訓練では延べ18人で引率しており、宿泊防災訓練 としては異例ではない。新しく始まった行事であり、また、防災教育は教員も学 ぶ必要があることから考えると適切な人数だと判断している。
(18)都教委の職員が多数(6名)参加していますがそれはどういう理由からですか。 何のために来たのですか。引率ではないとすれば、都教委職員はどういう名目で「隊 内生活を体験」したのですか。
回答:分からない。
(19)「陸上自衛隊隊内生活体験申込書」(平成25年7月11日付)には隊内生活体験 者として35名の生徒の名簿が添付されています。この名簿はその後どのように自衛 隊内で処理されたかを把握していますか。また、今後入隊の勧誘等に使用されないと いう保障はありますか。
回答:個人情報保護法に基づき処理することは、公の組織であれば当然のことであ り、それに基づき処理をしていると考える。
(20)上記申込書には「7. その他」として、1.、2.の項目が付されていますが、これに ついては生徒に確かめたのですか。
回答:学校に在籍をしていることから当然該当しないと判断している。よって確認 はしていない。
(21)以上見て来た通り、問題点の多く指摘されている自衛隊朝霞駐屯地での「宿泊防 災訓練」を2014年2月にも再度実施するのですか。
回答:2月には駐屯地では実施しない。
以上。
東日本大震災における自衛隊の活動は、米軍との「トモダチ作戦」として行われたことは周知の事実です。だから、田無工業高校の校長が自衛隊の「救出活動」を踏まえてというとき、日米同盟による「米軍との関係」を看過してはならないのです。
今現在、自衛隊はフィリピンの台風30号災害の救援に行っていますが、アメリカ海軍のハリス司令官は、自衛隊が過去最大規模の部隊を現地に派遣することについて、「日米同盟の強さを示したい」と述べました。救援活動を名目にした日米合同演習になっているわけです。
まさに「防災訓練」と「軍事訓練」は紙一重です。
安倍首相・猪瀬都知事らは「防災」の名を借りて、実質的な若者の「軍事訓練」へと道を開こうとしているのです。ただ、問題はこの校長に見られるように、そう見ようとしない「風潮」が広がっているということです。
しかし、「風潮」はいずれ現実にぶつかり、破綻します。「真実は気長に確かめられて、
虚偽は躁急と曖昧のうちに実力を育てる」(タキトゥス『年代記』より)などという言葉もあります。屈することなく闘って行きましょう。