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2017年2月19日日曜日

2/9 都教委定例会 根津公子さんの傍聴記

2月9日(木)都教委定例会が開かれました。 根津公子の傍聴記です。

いじめに向き合うことのないいじめ対策

公開議案は 「東京都特別支援教育推進計画(第二期)・第一次実施計画」の策定について 「いじめ総合対策〈第2次〉」の策定について 管理職手当支給に関する規則の一部を改正する規則の制定について。公開報告が「教育支援センター(適応指導教室)等充実方策検討委員会報告書」について。教員等の懲戒処分については議案が4件、報告は何件だか明らかではないが、今回もある。
    「東京都特別支援教育推進計画(第二期)・第一次実施計画――共生社会の実現に向けた特別支援教育の推進」の策定について
11月の定例会で提案され、12月にパブリックコメントを募り(これについては、1月26日に報告があって、パブコメの半数以上が教員からだったというもの)、今回206ページにわたる計画(書)が提案された。パブコメや議会の意見を取り入れて策定したというが、前回の傍聴報告に記したように、特別支援という名の分離教育路線は堅持したまま。この計画では、「共生社会の実現」には向かわないことは明らかだ。


    「いじめ総合対策〈第2次〉」の策定について

これも、11月に提案され、11月終わりからパブコメを募集、そして今回上下2巻の冊子を作り、全教員に配布し、学校・教員がいじめ防止・解決に向けた取り組みをするよう指示する。実施期間は来年度から向こう4年間。

「いじめ防止等の対策を推進する6つのポイント」だとして次を挙げる。

「軽微ないじめも見逃さない《教職員の鋭敏な感覚によるいじめの認知》」
「教員一人で抱え込まず、学校一丸となって取り組む《『学校いじめ対策委員会』を核とした組織的対応》」
「相談しやすい環境の中で、いじめから子供を守り通す《学校教育相談の充実》」
子供たち自身が、いじめについて考え行動できるようにする《いじめの解決に向けて、主体的に行動しようとする態度の育成》

「保護者の理解と協力を得て、いじめの解決をする《保護者との信頼関係に基づく対応》」
「社会全体の力を結集し、いじめに対峙する《地域、関係機関等との連携》」
 上巻は未然防止、早期発見、早期対応、重大事態への対応の、4つの段階に応じた、学校がすべき具体的取組を説明する。
例えば、重大事態への対応では、「問題を明らかにし、いじめを繰り返さない学校づくり」をサブタイトルにあげ、「年間3回以上実施する校内研修のうち、1回以上、・・・『重大事態』・・・の内容を確認し、理解を深める」「重大事態の対処に係る責任は、学校のみならず、所管教育委員会や地方の公共団体の長にまで及ぶことを十分に理解することが必要である」「子供や保護者から申し立てがあった場合は、必ず重大事態が発生したものとして、調査・報告に当たることを、共通理解しておく」と記す。
下巻の前半は、小学校低学年・高学年・中学校・高校・特別支援学校別に授業教材・資料を示し、その授業の展開例、板書例を4例ずつ示す。都教委が用意した教材・資料を使って、全都一斉の授業を行えということのようだ。「教員が自信を持って授業をできるよう、都教委は学校・教職員を支援する」というが、子どもたちの生活の中で起きているいじめの現実に蓋をしているのでは、いじめは解決しない。現実に起きている学級・学年でのいじめに子どもと教員が向き合うことが大事であり、必要なのだ。文科省・都教委がいじめ調査を年に数度してもいじめがなくならないのはなぜか、福島から避難した子どもたちが教員からもいじめを受けるのはなぜかについて、まともに考えたなら、子どもや教員が目の前で起きているいじめに向き合うに至らなかったことがわかるのではないか、と思う。
下巻の後半は年間3回以上実施する校内研修のプログラム及び、いじめに対処した成功事例をあげる。2冊で260ページに及ぶ。忙しい中で、しっかり読む教員がどれほどいるだろうか。
冊子について、どの教育委員も「充実した内容」「素晴らしい資料」と絶賛したが、都教委事務方も教育委員も自身のすべきことを棚に上げて、何をか言わんや、である。上記した重大事態への対応を読めば、子どもや保護者からの訴えにはその意思を尊重して丁寧に当たること、学校及び教育委員会は責任を持って対処することは自明であろう。しかし、一昨年9月、いじめが原因で自殺した小山台高校生の遺族が昨年2月に高校に調査結果を求めたが提供されなかったため、4月に都教委に情報開示請求をしたところ、都教委は「調査部会が干渉や圧力を受ける恐れがある」として、24ページの一部あるいは全てを黒塗り回答(=遺族に情報を開示しない)した(1225日付東京新聞)。都教委事務方及び各教育委員は「真相を究明したい」という遺族の気持ちを踏みつけたのだ。
都教委のすべきことは、この事件について一刻も早く、遺族に対して情報を提供したうえで、東京のすべての学校に、身近なところで起きてしまったいじめの実態を知らせるとともに、教員研修、授業の取り組みを促すことである。そうすることによって、冊子が「絵に描いた餅」ではなく、活かされるのだ。
このことを、都教委関係者に喚起したい。

    管理職手当支給に関する規則の一部を改正する規則の制定について
都教委にとっては、この件が今日のメインではなかったのか、と思わせる提案だった。12月22日に行われた第2回教育総合会議の席上、この4月にでも、定年退職をした再任用者を充てても、副校長に欠員が生じるのではないかと思わせるような中井教育長の発言があり、前回1月26日の定例会では来年度事業予算に「多様な人材を活用して学校組織運営や学校と地域の連携・協働を推進するとともに、学校運営の中心的な役割を担う副校長を支援する学校マネジメント強化モデル事業」に75億1600万円を計上するという議案が可決されていた。

 そして今日のこの議案である。「改正」内容は、副校長の管理職手当を現行月額72300円から改正後80700円(再任用副校長では53000円から59200円)に上げるというもの。
 この程度のお金で、釣られる教員がどれほどいるだろうか。主任教諭、主幹も含め、管理職のなり手が少ない現状の中、今後は副校長の受験資格を現行の主幹(*)だけではなく、主任教諭からの登用も考えたいとも、人事部提案者は言っていた。都教委が学校支配をやめ、各学校に決定権を返さない限り、管理職の受験倍率も、新採用教員の受験倍率(12月22日、中井教育長はこの件でも大きな課題と発言した)も上がるはずがないと思うのだが。
(*)教員職は、教諭→主任教諭→主幹→副校長→校長→統括校長 となっている。