コリン・キャパニック選手の国歌起立斉唱拒否と根津さん
渡部秀清(「ひのきみ全国ネット」<首都圏>)
★8月26日、アメフトのコリン・キャパニック選手が、試合前の国歌斉唱場面で、人種差別と警官の暴力行為に抗議して起立斉唱を拒否した。アメリカでは賛否両論が渦巻き、国際的にも注目された。オバマ大統領はキャパニック選手の行動を「表現の自由」の問題であるとして擁護した(9月5日)。
★そうしたところ、『共和か死か!~世界国歌の旅』(2015)の著者アレックス・マーシャル(イギリス人)から、レイバーネットの松原さんへ手紙が来た(9月6日)。
「2014年にあなたは、私が国歌について書いていた本のために、 根津公子さんへのインタビューを手配してくれました。・・・・アメリカで今、アメリカンフットボールのコリン・キャパニック選手が、公子と同じように、アメリカの国歌にすることを拒んで、大きな注目を浴びています。・・・私は、世界中で同時に起きている国歌への抗議について、公子や日本の教員たちの物語を含めて、論説を書こうとしています。」
そして、「(1)最近公子に何が起きていますか?彼女はまだ裁判で争っていますか?
(2)公子は コリン・キャパニック選手のことを聞いていますか。それについて何かコメントしていますか?」と質問してきた。
★根津さんは早速返事を書き、教え子の田島夏樹さんに英訳してもらい、送った(9月7日)。
根津さんはその中で、<コリン選手が「黒人や有色人種への差別がまかり通る国に敬意は払えない」「差別は私にとってフットボールより大事なこと。見て見ぬふりをするのは自分勝手だ」と発言したことを知って、痛く感動しました。><「私を含め、国旗国歌問題がある国に住む人たちは、コリン選手の問題提起から学びたいものです。>と書いた。
★一方「ひのきみ全国ネット」<首都圏>では、9月15日の田中聡史さんの今年最後の再発防止研修に合わせ、オバマ大統領がキャパニック選手を擁護したチラシを作り、出勤する研修センターの職員たちにまいた。何人かが受け取った。
★同日、米国の外交問題隔月刊誌『フォーリン・ポリシー』にアレックスの論説『「国歌斉唱拒否」のキャパニック選手は日本人でなくて幸運だった!』が掲載された。
そこで、そのことをメールで流し(9月17日)、「どなたか訳して下さいませんか」とお願いしたところ、たちまちのうちに数人の方がそれを翻訳し、送ってくれた。
最終的には、翻訳家・田口俊樹さん(元都立高校教員Hさんの紹介)の翻訳をメールで流すことになった(9月22日)。
私はこの間の動きで、改めて国内外の人々の連帯した力を知ることが出来た。この場を借りて、協力してくださった皆さんにお礼を申し上げます。
★「日本の戦争責任と『君が代』が国歌としてふさわしいのかどうかという点について、日本の教員たちは、七十年に及ぶ抵抗の中でそこまでの論争を惹き起こしてはいない。根津さんにしても今のところ勝ったとは言えない。それでも、キャパニックが学ぶ教訓はほかにもあるはずである。それは人々が彼の抵抗にすぐに無関心になっても、だからといって抵抗をやめる必要はないということだ。」
なお、アレックスの論説の冒頭には、「コリン・キャパニックがアメリカ国歌を拒否しても――今やこれに賛同して同じ行動を取る選手も出てきた――動じない人がひとりいるとすれば、それは60代後半の細身の日本人女性、根津公子さんだろう。根津さんほど長期にわたって国歌を拒否している人は世界的に見ても例がない」と書いてあり、最後の方には次のように書いてあった。
「日本の戦争責任と『君が代』が国歌としてふさわしいのかどうかという点について、日本の教員たちは、70年に及ぶ抵抗の中でそこまでの論争を惹き起こしてはいない。根津さんにしても今のところ勝ったとは言えない。それでも、キャパニックが学ぶ教訓はほかにもあるはずである。それは人々が彼の抵抗にすぐに無関心になっても、だからといって抵抗をやめる必要はないということだ。」