■高知新聞電子版から 9月08日08時23分
高知中央高校(高知市大津乙)は2016年度、普通科内に「自衛隊コース」を新設することを決めた。自衛隊OBが銃剣道を指導したり、現役自衛官が活動を紹介したりする授業を想定しているという。高校の自衛隊コース設置について、防衛省は「聞いたことがない」と言い、学校法人高知中央高等学校の近森正久理事長も「全国初ではないか」としている。
高知中央高校によると、普通科の定員は160人。現在は「フードビジネス」「スポーツ」など6コースがある。生徒は受験時に選択したコースに入学し、3年間同じコースに在籍する。2016年度は定員を変えないまま、「自衛隊」を加えた7コースになる。
自衛隊コースは1週間のうち6時間分を関連授業に充てる。自衛隊が訓練に採り入れている銃剣道を4時間、自衛隊関連の座学を2時間。自衛隊の現役やOBが担当し、高知中央高校教員が補助する。その他の授業は一般的な普通科の内容という。
座学は自衛隊の歴史や日々の活動に関する内容で、3年時には自衛官の採用試験対策も行う。ただ、自衛官志望が必須ではなく、消防士や警察官の採用試験にも対応するという。
自衛隊高知地方協力本部(高知地本)によると、高知県内からは毎年約100人が自衛官になったり防衛大学に入学したりしている。こうした状況から、近森理事長が「需要がある」と発案したという。
高知中央高校は既に高知県内全ての公立中学校にパンフレットを配布した。近森理事長から5月にコース設置を聞いた自衛隊高知地方協力本部は高知新聞の取材に対し、「具体的な話は決まっていないが、依頼に基づき協力していく」としている。
防衛省は高校での自衛隊コース設置について「把握している限りでは聞いたことがなく大変珍しい」。高知県私学・大学支援課によると、学科設置の場合は、学校が都道府県知事に申請する必要があるが、学科内のコースについては申請不要という。
【理事長 一問一答】需要に対応 政治と関係ない
近森正久理事長への取材要旨は次の通り。 ―なぜ自衛隊コースをつくるのか。
自衛官に対する国民の好感度は高い。(2015年1月の内閣府の世論調査では)自衛隊に対する好感度が92%。高知県内では毎年約100人の若者が自衛官を目指している。そうした「需要」に対応していく。
―安全保障関連法案が世論の反発を招いているが。
政治的な動きとコースの新設は関係ない。安全保障関連法案がどうなるかは別にして、自衛隊は地震・災害対策でどうしても必要な存在で、資格が取れて世の中の役に立つ仕事。自衛官だけでなく、消防士や警察官になるにも役立つコース。社会の若きリーダーを育成したい。
―高知県内の学校関係者の間では「教え子を戦場へ送りたくない」という声もある。
うちの学校ではそんな話は聞いたことはない。僕らも卒業した生徒を戦地へ送ろうとは考えていない。万が一、自衛隊員が戦地へ送られて、誰かが犠牲になるようなことになれば、考え直す部分も出てくるだろう。