自衛隊での宿泊訓練パンフの続きです。
『高校生をリクルートする自衛隊・自衛隊の手法を取り入れる教育行政』から。
(編集委員会発行、800円+税、(株)同時代社、電話03-3261-3149、FAX03-3261-3237)
「3、自衛隊駐屯地で行われた高校生の『防災訓練』」
<都教委が直前まで隠してきた駐屯地での訓練>
(都立田無工業高校の自衛隊駐屯地での「宿泊防災訓練」(2013年7月26~28日)が明らかになったのは、その2日まえの7月24日の『東京新聞』夕刊によってでした。)
「(記事では)東京都教育委員会が『当初、詳細公表せず』の見出しで、都教委が詳細をひた隠しにしてきた事実を報道しました。・・・・反対運動で、中止にならないための手立てであっことが推測されます。」
「翌年2月3~5日も朝霞駐屯地で計画され、対象は「二学年」となっていたのです。
その後、都民などからの反対運動等の影響もあり、2月の訓練は夢の島の東京スポーツ文化館(BumB)に変更されたようです。
反対運動は、練馬平和委員会、婦人民主クラブや都教委包囲・首都圏ネットなど、多数にのぼりました。」
<都教委をあげての取り組みであった田無工業の自衛隊との訓練>
「この田無工業高校の自衛隊訓練は異例でありました。東京都教育委員会からの参加者があまりにも多いのです。生徒34人に対して引率教員が6人(校長、副校長を含む)も
多すぎるのですが、都教委からも6人の指導主事が参加しました。そのうちの2人は課長でした。
・・同時に、駐屯地では「生徒よりも多い自衛隊員が指導にあたったという記録があります。」
「さらに驚かされたのは、2月のBumBでの宿泊訓練でありました。ここには教員が17人参加し、都教委からは16人も参加しました。その中には都教委の金子指導部長も参加しているのです。・・・参加課長の一人は教育改革関連の課長でした。」
<ドキュメント 東京都立田無工業高校生の朝霞駐屯地での三日間>
(これは練馬平和委員会の坂本茂さんによるきわめて詳細な報告です。ここでは基本的な内容などを紹介するにとどめます)。
・実施要領(略)
・自衛隊の命令書と田無工業高校の「復命書」から見た三日間のスケジュール
(7月26日)
8時 田無工業高校へ参加者全員集合
8時15分 冨士自動車の大型バスで学校出発
10時35分~45分 着隊式 研修棟 戦闘服の隊員と生徒は学校作業着に着替え
[着隊式] 教育庁が実施した宿泊防災訓練の開始に伴う様式で、全般的な進行は教育 庁が 実施した。
東京地本としては、その式に引き続き要員の紹介や隊内生活体験の全般について生活上 の注意事項を説明した。・・
10時45分~12時 躾・基本教練 研修棟
[躾] 衛生管理としての手洗いの励行、ハンカチの携行、食事の注意事項として配膳の要 領、食堂での並び方、物品愛護として備え付け物品の扱い、清掃の要領、入浴場所のタオ ルで体を拭くとか入浴要領・・・
[基本教練]
朝霞駐屯地での隊内生活体験についても誰でもが実施する隊内生活体験の団体生活で 必要な基本的動作の教示を行った、具体的には整列、方向転換右向け右とか、隊列を組 んだ移動の要領、これらの動作を指示するための号令について教示したもの。
12時~13時 昼食・休憩 陸曹食堂から弁当受領 研修棟
13時~15時 基本教練 北グラウンド (「復命書」は基本教練を基本的な生活と表現)
15時~17時 東部方面衛生隊担当教育(AEDなど) 研修棟
17時 終礼
17時15分~45分 夕食(弁当)・入浴:第3浴場まで移動も行進訓練(「復命書」 は徒歩で移動・・)
17時45分~18時25分 入浴
18時25分~19時25分 身辺整理(10人部屋に扇風機一個、クーラーは21時に消える)
19時25分~20時 着隊指導(ベッドメーキング、点呼要領)(「復命書」は着隊指導を課外学習と表 現)
20時~21時 教育内容の復習・ディスカッション(リーダーに求められるものは何か)
21時から 清掃
21時40分 日夕点呼(軍事用語)
22時 消灯・就寝
(7月27日) (略)
(7月28日)
5時 「非常呼集」
(「復命書」は非常呼集と明記し、敵襲など緊急の事態に備えた非常対応の軍事用語を使用し、 「命令書」はなぜか避難呼集と使い分けた)
[避難呼集]震災は起こるかわからない特性から、生徒たちが予期しない起床前の朝5時に呼集 をかけさせていただいた。学生のリーダーの指示のもと冷静な行動および班員の掌握、健康状 態を確認する体験をしていただいた。
5時15分 人員掌握・報告
5時15分~6時 班毎に駐屯地内行進
6時~7時 朝食・洗面
7時~8時25分 清掃 氷受領(熱中症対策)
8時30分 朝礼 外来隊舎礼場
8時40分~50分 応急担架、止血・包帯法 北グラウンド
11時30分から12時 離隊式 陸曹食堂
[離隊式] 教育庁が実施した宿泊防災訓練が終了にともなう行事。
全般的な進行については教育庁が実施した。地本は修了証と記念品の授与をした。
「復命書」は離隊式を閉校式と表現している。
12時~13時 昼食・休憩 お土産購入
[お土産購入] 最終日の休憩時間に駐屯地内の売店を利用できる時間を東京地本が計画した が、当日時間が取れなかったと(ので?)利用できなかった。
13時 勤務員全員で見送り。
13時15分 「復命書」は大型バス(東京都の観光バス)で宿舎前を出発
14時50分 学校着、解団式、校長の言葉や諸注意の訓示
15時15分 解散、行事終了
<田無工業高校生への自衛隊訓練 監視レポート (略)>
(これは、7月28日早朝より昼過ぎまで、朝霞駐屯地のフェンスの外からの監視レポートです。
分単位と言ってもいいくらいの監視レポートです。その中で特徴的なのは、自衛隊と都教委や教員が監 視されていることに非常に気を使っていることです)
<都立高校の防災訓練に関する防衛省への質問と回答>
「約一年後の2014年7月29日(火)、自衛隊をウオッチする市民の会は
防衛省に都立高校の防災訓練に関する要請行動を行い、諸点について回答を得た。
回答者は自衛隊東京地方協力本部渉外応報室長の滝澤健二3等陸佐である。
この回答は重要なのでここに掲載する。私(パンフ筆者)も感じていることだが、
自衛隊側は防災訓練ではなく、自衛隊の『職業体験』と位置づけていることがわかる。」
(回答)から
「隊内生活体験のことをむこう(教育庁)は防災訓練と言っているが、
うち(地本)は隊内生活体験だ。それを踏まえて内容を調整している。・・・」
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結局、「防災訓練」とは名ばかりの自衛隊における「隊内生活体験」なのであり、実質的な「体験入隊」とも言えるものなのです。つまり、自衛隊のリクルート活動の重要な一環と言えるでしょう。
多くの若者には非正規労働しかないような状況の下、このような形で、自衛隊のリクルート活動が強化されつつあります。こうした動きを放置すれば、行き着く先、新たな侵略戦争への若者の動員ということになるでしょう。
次回は、「4、都立田無工業高校二回目の自衛隊との『宿泊防災訓練』」です。