■12月6日(金)東京地裁で「東京君が代裁判」第三次訴訟(原告50人)の第14回弁論が開かれた。527号法廷は満席であった。傍聴券を求め列ができ、約70名ほどが法廷には入れないままであった。
★この日は、千葉大学の巻美矢紀教授(憲法学)が証人にたった。「日の丸・君が代」の強制については、2011年5月より一連の最高裁判決が出されており、2003年に都教委の発出した「10.23通達」とそれに基づく職務命令に対する合憲判断が出されている。このために、この日の巻証言は、一連の最高裁判決の問題点を指摘し、これを超える憲法上の論点を示すとともに、これと異なる違憲判断を導き出すたことにあった。主要な論点は次である。
★第一は、審査基準についてである。職務命令の目的は、秩序の確保と式典の円滑な進行にある。最高裁では、その目的の必要性・合理性を審査するとともに、この目的達成のための総合的衡量による判断枠組みが採用された。間接的制約による審査基準が採用されたが、直接的か間接的かの通説は定まっていない。本件は内在的制約を超えるもので憲法19条に矮小化されたのが一連の最高裁判決であり、本件職務命令は教員への直接介入であり、違憲と判断されるべきである。
★第二は、本件職務命令には隠された真の目的がある。それは、教員に起立斉唱させ、生徒に同調圧力を与え、刷り込み式愛国心教育を行う点にある。この真の目的の客観的見地から審査が行われるべきであり、厳格な審査が行われるべきであった。民主主義は理性的な判断を求めていくものであるが、刷り込みは理性的な判断を遮断するものであり、これを拒否する教員を炙り出し、排除することにその真の目的がある。
★第三は、アメリカの判例から、教員には、公教育の国家介入を拒否する教育の自由が存在する。これは、親の教育権に基づくもので、国家介入による全体主義的教育が行われていないかを点検する権利である。この権利は、人権とは異なるもので公権力が内在的限界を超えているかどうかを点検する権利である。
★最後に、刷り込み式愛国心教育は旭川学テ最高裁大法廷判決」でも示されているように違憲である。これは公教育だけでなく、民主主義の根幹に関わる重大な問題である。