7月19日、岸田静枝さん(元小学校教員、音楽専科)の都人事委員会修正裁決・減給処分取消訴訟(東京高裁 平成27年(行コ)第395号懲戒処分取消等請求事件)の判決があり、岸田さんが勝訴しました(岸田さん、おめでとう!)。近藤さんからの報告です。
★東京高裁第7民事部(菊池洋一裁判長)は、一審東京地裁判決(2015年10月)を支持して、岸田さんのピアノ不伴奏による職務命令違反を理由とした処分について、「本件処分は・・・社会通念上著しく妥当を欠き、懲戒権者の裁量を逸脱したものとして違法」と判示し、東京都教育委員会による停職1ヶ月の原処分(2010年3月30日付)の都人事委員会による減給10分の1・1月への修正裁決(2013年2月7日付)を取り消しました。
★岸田さんは、過去4回(2004年5月戒告処分・不起立、2004年12月減給1月・再発防止研修を受講せず、2005年3月・減給6月・不起立、2005年12月戒告処分・再発防止研修でのゼッケン着用)の処分歴がありますが、過去の処分歴を理由とした今回の処分を「違法」として取り消したことになります。累積加重処分及び都教委に追随して最高裁判決が違法とした減給処分を出した都人事委員会裁決が断罪されたのです。
★岸田さんは、クリスチャンとして、職務命令が憲法19条思想良心の自由に反するのみならず、憲法20条の信教の自由にに反すると一貫して主張してきました。判決では、「制約される信教の自由の内容、制約の目的や必要性、制約の態様、程度等を総合して判断されるべき事柄」として原告らの主張を斥ける一方、一審にはなかった「内心における信教の自由は憲法19条の思想及び良心の自由の宗教的側面」という文章が加えられています。
★また、「1審原告の過去の非違行為は、いずれも、1審原告個人の信仰及び歴史観・世界観のために職務命令に違反したという点で共通しており、1審原告個人の信仰等に照らし、同様の職務命令の回数が増えればこれに伴って現実の支障や混乱の有無にかかわらず違反行為の回数だけは増えるという関係にあり、1審被告(注・都側)の主張は、これをそのような事情のない一般の非違行為と同列に論じる点で相当ではない」、「1審原告が本件不伴奏行為を反省していないとの一事をもって、本件処分に裁量権の行為を誤った違法がないということはできない」と都教委の主張を斥け、累積加重処分を断罪しています。
★全体として、一審判決よりも踏み込んだ判決になっており、都教委が2週間の期限内に最高裁に上告/上告受理申立をするのか注目されます。