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2016年2月1日月曜日

アベノミクスの行き詰まりと大内裕和さんの奨学金問題の講演

■渡部さんの見解と報告です。

★アベノミクスの行き詰まりが表面化してきました。一つは、甘利明・経済再生相が政治とカネの問題で1月28日辞任に追い込まれたことです。
甘利氏はアベノミクスの「司令塔」「屋台骨」と言われ、TPP合意のの推進役でもありました。その責任者が突然降りたのです。
もう一つは、日銀が1月29日、史上初のマイナス金利政策を取らざるを得なくなったことです。
これらのことはアベノミクスの行き詰まりを典型的に表すものだと言えます。

★ここでは、マイナス金利について少し触れます。
銀行は本来、預金金利・貸出金利の<利ざや>で儲けます。しかし、今回は<逆利ざや>になってしまったのです。
そもそも、経済は基本的には生産活動により維持されており、そこから生まれてくる利潤(剰余価値)が、<企業利益・銀行利子・株の配当・地代など>に振り分けられていきます。利潤(剰余価値)が多ければどれも潤うでしょう。しかし利潤が少なくなればその反対です。そして、<企業利潤・銀行利子・株の配当・地代など>はお互いに反比例の関係にありますから、利潤が少ない中でも、今回のように日銀がマイナス金利を取れば株は多少あがります。

★しかし、中央銀行がマイナス金利を取らざるを得なくなったということは生産活動から生み出される利潤(剰余価値)が頭打ちになっていることを示しています。つまり、拡大再生産ができなくなっていることを示しているのです。
これは株価上昇と円安を第一に置いたような、アベノミクスの行き着いた先だったとも言えます。
マイナス金利になれば、円にたいする信用は落ちますので、さらに円安が進むでしょう。
そうすると、輸出産業には有利かもしれませんが、これまで安かった輸入品が値上がりしてきます。開国後の幕末と同じようなインフレにならないとも限りません。
それを見越してか、黒田日銀総裁は物価の2%上昇に向けて突っ走っているようです。
ところで、「拡大再生産ができなくなってきている」ことについて、別の観点から少し述べたいと思います。

■1/28 大内裕和さん(中京大学教授)の集会 その衝撃的内容




















★1月28日、「板橋のつどい2016」集会に参加しました。
そこでは中京大学教授の大内裕和さんが、<ブラックバイトと奨学金>というテーマで講演しました。大学生が苦しんでいる「奨学金」借金問題です。

現在の大学生たちの52.5%は奨学金をもらい、2012年度では、無利子奨学金38万人、有利子奨学金96万人(計134万人)(もちろん無利子希望者が多いのですが、2009年には希望者の78%が不採用ということです。つまり多くの学生は否応なく有利子奨学金を借りざるを得なくなっているのです。背景には授業料の高騰があります。)
その結果、大学を卒業するまでに、莫大な借金を背負うことになるのです。
たとえば、有利子奨学金を毎月10万円借りれば、4年後の卒業時には480万円になります。貸与利率上限3.0%で返済総額は645万9510円になります。月賦返済額は2万6914円、返還年数20年で、すぐに払い始めても終わるのは43歳です。しかも延滞金は年利10%という高利です。(大学院などまで行けば1000万もの借金を背負うことになります)
2010年度末で民間銀行の貸付残高は大体1兆円で、年間の利払い収入は23億円です。
未返済のとりたてのために、債権回収会社などに委託し手数料を払っています。ここまで来れば、奨学金はまさに「金融事業」であり、「貧困ビジネス」です。
したがって、現在の学生・若者は非常に大変な状況に追い込まれ、結婚・出産どころではありません。若者の約半数がそのような状況に追い込まれつつあるのです。

★生産活動には労働力の再生産が欠かせません。生産活動の伸びている国は人口も伸びます。しかし生産活動の停滞・後退している国は人口の伸びも停滞・後退します。
日本の出生数は1973年の209万人をピークに下がり続け、2013年には103万人となっています。
大内さんは、「日本社会は労働力の再生産もできない深刻な社会になってきている」と言っていました。
まさに日本は拡大再生産どころではない社会になってきていると言えます。
そうした行き詰まりが、今回の甘利経済再生相の辞任や日銀のマイナス金利になって現れたのだと思います。アベノミクスに大きな影がさし始めたと言えるでしょう。

「十六夜はわづかに闇の初め哉」(芭蕉)です。

なお、大内裕和さんは「2・13総決起集会」でも<安保法制と教育>というテーマで話されます。