■1/21に文科省交渉をしたとき、伊賀さんが提出した抗議文です。
1月17日、文科省は、「新」教科書検定基準を官報で告示した。文科省が検定基準を公表してから約1ヶ月、パブコメ締め切りからわずか3日である。文科省は、パブコメ内容もそれに対する見解も全く明らかにすることなく、一方的に「告示」したのである。文科省は、自らパブコメを実施しておきながら、その内容を完全にないがしろにした。5月からの中学校教科書検定に間に合わせるために、強引に検定基準を改定してしまったのである。許すことができない暴挙である。
文科省の告示内容は、検定基準に新たに(1)特定の事柄を強調しすぎない、(2)近現代の歴史的事象のうち、通説的な見解がない数字などの事項について記述する場合には、通説的な見解がないことが明示されているとともに、児童生徒が誤解するおそれがある表現がないこと、(3) 閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解や最高裁判所の判例がある場合には、それらに基づいた記述がされていること、の3点を追加した。
「新」検定基準は、歴史を歪め、「近隣諸国条項」を有名無実化し、日本政府の見解を厳格に記述する教科書をめざすものである。下村文科相は、「バランスの取れた記述」を名目に、南京大虐殺や日本軍「慰安婦」、強制連行、植民地支配、沖縄戦「集団自決」等の日本の侵略と加害の記述をターゲットにしていることは明らかである。これまで積み重ねられてきた歴史的検証や証言などを無視しようとしているのである。さらには、現在の安倍政権が進めようとしている自衛隊強化と集団的自衛権の容認、原発推進と福島原発事故の過小評価などを教科書に書かせたり、領土問題での日本政府の見解を一律に書かせようとしている。
また文科省は、3月にも教科書検定審議会で審査要項に「教育基本法の目標に照らして重大な欠陥があれば不合格にする」ことを規定する方針を明らかにした。これは、教科書会社に「検定不合格」をたてにして強烈なプレッシャをかけ、上記の3項目に加えて2006年教育基本法「愛国心条項」への従属を一層求めるものである。
教科書に政府見解を徹底させ、それらを無条件に子どもたちに押しつけるのことは、個人を尊重し自立的な人間を育てる教育とは真っ向から対立する。
文科省の「改定案」が明らかになってからは、国内外から多くの批判や疑問の声が起こった。教科用図書検定審議会の中でも批判の声が上がっていたほどである。私たちが年末から始めた「教科書検定基準の見直しに反対する共同アピール」には、約3週間の短い期間に個人賛同627名、団体賛同103団体(1月20日現在)が集まり、現在も拡大し続けている。
私たちは、文科省による政府見解の徹底を求める教科書統制に反対する。「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮」を求める近隣諸国条項を有名無実化する検定基準改定に反対する。文科省による強引な検定基準改定に強く抗議するとともに、撤回を求める。
2014年1月21日
子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会
子どもたちに「戦争を肯定する教科書」を渡さない市民の会(愛知)
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま
えひめ教科書裁判を支える会
日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク