■4月18日(月)、被処分者の再雇用拒否撤回の裁判で、東京地裁は都教委の「裁量権」を認める不当判決を出しました。近藤徹さんから報告が寄せられましたのでアップします。
◆再雇用拒否を容認し行政に追随する不当な判決―原告らは控訴を表明
卒業式で「君が代」斉唱時に起立せず「職務命令」違反として処分を受けたのに加えて、同じ理由で退職時に再雇用を拒否するのは余りにも理不尽だと3人の都立学校教員が、2014年1月15日に東京地裁に提訴してから2年3ヶ月余。本日4月18日、再雇用三次訴訟の東京地裁判決がありました。
東京地裁(民事19部 清水響裁判長)は、原告らの主張を退け、被告都教委に「広範な裁量権がある」として、都教委の再雇用拒否を容認し、原告らの請求を棄却する不当判決を言い渡しました。清水裁判長は、主文のみを読み上げ、そそくさと退席しました。
【主文】 1.原告らの請求をいずれも棄却する。
2.訴訟費用は原告らの負担とする。
判決は、①通達・職務命令が憲法26条(教育を受ける権利)、13条(個人の尊重)、23条(学問の自由)及び教育基本法16条1項(不当な支配の禁止)に違反するか、
②通達・職務命令が国連自由権規約18条(思想、良心、宗教の自由)に違反するか、
③本件不採用が憲法19条(思想・良心の自由)、20条(信教の自由)に違反するか、
④都教委の裁量権・逸脱濫用があるか、
4つを「争点」としてあげ、そのいずれも原告らの主張は「採用できない」とか「理由がない」と述べる一方、都教委の主張をほぼ全面的に採用する典型的な行政追随の判決です。
原告らは、この不当判決に屈せず、直ちに控訴して勝利するまで闘うと表明しました。
◆「歴史の針を逆戻りさせる」判決に負けず、最終的勝利まで支援を!
2011年5月~7月の最高裁判決は、都教委の10・23通達(2003年)とそれに基づき起立斉唱を命じる校長の職務命令は、「間接的制約」があるとしつつも「違憲とは言えない」とし、再雇用拒否を容認しました(採用拒否一次訴訟など)。
一方、2012年1月及び2013年9月の処分取消訴訟の最高裁判決は、職務命令が「違憲とは言えない」としたものの「間接的制約」があるので、減給以上の処分をするに際しては、「慎重な考慮が必要」として機械的な累積加重処分に歯止めをかけ、減給・停職処分を取り消しました。その後の下級審判決でも同じ論理で減給・停職処分の取り消しが相次ぎ、これまで65件、55名の減給・停職処分が取り消され(都教委が敗訴)ています。
この間、再雇用二次訴訟(2009年9月地裁提訴 現在原告=被上告人24名)は、一審東京地裁(2015年5月 民事36部)、二審東京高裁(2015年12月 第2民事部)で、不起立による職務命令違反を理由とした再雇用拒否が、原告らの「期待権を侵害」し「(都の)裁量権の逸脱濫用で違法」として、東京都に約5370万円の損害賠償を命じ、原告らが勝訴し、東京都が司法の場で断罪されました(都側は最高裁に上告受理申立)。
本訴訟も、この最近の傾向に逆行し、原告らの請求を棄却しました。これは、2011年の最高裁判決に負けずに、「日の丸・君が代」強制に反対して、粘り強く闘い勝ち取ってきた到達点を否定し、「時計の針を逆戻りさせる」判決に他なりません。
原告らは高裁控訴審での逆転勝訴を目指して闘う決意を表明しています。最後まで支援しようではありませんか。
◆原告団・弁護団声明
1 本日、東京地裁民事第19部(清水響裁判長)は、都立学校の教職員3名が卒業式等の「君が代」斉唱時に校長の職務命令に従わずに起立しなかったことのみを理由に、定年等退職後の再雇用である非常勤教員としての採用を拒否された事件(東京「再雇用拒否」第3次訴訟)について、原告教職員らの訴えを棄却する不当な判決を言い渡した。
2 本件は、東京都教育委員会(都教委)が2003年10月23日付けで全都立学校の校長らに通達を発し(10.23通達)、卒業式・入学式等において「君が代」斉唱時に教職員らが指定された席で「日の丸」に向かって起立し、「君が代」を斉唱すること等を徹底するよう命じて、「日の丸・君が代」の強制を進める中で起きた事件である。
都立学校では、10.23通達以前には、「君が代」斉唱の際に起立するかしないか、歌うか歌わないかは各人の内心の自由に委ねられているという説明を式の前に行うなど、「君が代」斉唱が強制にわたらないような工夫が行われてきた。
しかし、都教委は、10.23通達後、内心の自由の説明を一切禁止し、式次第や教職員の座席表を事前に提出させ、校長から教職員に事前に職務命令を出させた上、式当日には複数の教育庁職員を派遣して教職員・生徒らの起立・不起立の状況を監視するなどし、全都一律に「日の丸・君が代」の強制を徹底してきた。
原告らは、それぞれが個人としての歴史観・人生観・宗教観や、長年の教師としての教育観に基づいて、過去に軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた歴史を背負う「日の丸・君が代」自体が受け入れがたいという思い、あるいは、学校行事における「日の丸・君が代」の強制は許されないという思いを強く持っており、そうした自らの思想・良心・信仰から、校長の職務命令には従うことができなかったものである。
ところが、都教委は、定年等退職後に非常勤教員として引き続き教壇に立つことを希望した原告らに対し、卒業式等で校長の職務命令に従わず、「君が代」斉唱時に起立しなかったことのみを理由に、「勤務成績不良」であるとして、採用を拒否したのである。
3 判決は、「君が代」斉唱時の起立等を命じる校長の職務命令が憲法19条及び同20条に違反するかという争点については、2011年5月30日最高裁(二小)判決に従って、起立斉唱命令が原告らの思想・良心及び信仰の自由を間接的に制約する面があるとしながら、公務員としての地位及び職務の公共性から、必要性・合理性があるとして、憲法19条及び20条違反と認めなかった。
4 また、判決は、都教委による10.23通達及びその後の指導について、卒業式・入学式等における「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱の実施方法等について、公立学校を直接所管している都教委が必要と判断して行ったものである以上、改定前教育基本法10条の「不当な支配」に該当するとは言えないと判示した。
5 さらに、判決は、原告らに対する採用拒否は、都教委の裁量権を逸脱・濫用したものではないとした。非常勤教員の採否の判断につき,都教委は「広範な裁量権を有している」として、原告らの非常勤教員への採用の期待は、「事実上の期待でしかない」とする。その上で、本件採用拒否が「不起立を唯一の理由」とするものであり、「原告らが長年にわたり誠実に教育活動に携わってきた」ことを認定しながら、「本件職務命令が適法かつ有効な職務命令であるとの前提に立つ以上、原告らが本件不起立に至った内心の動機がいかなるものであれ、職務命令よりも自己の見解を優先させ、本件職務命令に違反することを選択したことが、その非常勤教員としての選考(本件選考)において不利に評価されることはやむを得ない。」とし、前記2011年最高裁判決に従い、「本件採用拒否が客観的合理性及び社会的相当性を著しく欠くものとはできない」とした。
6 しかし、本件と同様の事件(再雇用拒否撤回第2次訴訟)において、東京地裁民事第36部(吉田徹裁判長)は、2015年5月25日、東京都の採用拒否について、裁量権逸脱として違法とし同事件の原告らの損害賠償請求を認め、同事件の控訴審においても、東京高裁第2民事部(柴田寛之裁判長)は、2015年12月10日、東京都の控訴を棄却している(東京都は上告中)。上記判決においては、「再雇用拒否は本件職務命令違反をあまりにも過大視する一方で、教職員らの勤務成績に関する他の事情をおよそ考慮した形跡がないのであって、客観的合理性や社会的相当性を著しく欠くものといわざるを得ず、都教委の裁量権を逸脱・濫用したもので違法である」と判示している。本判決は、これらの判決にも反する極めて不当な判断である。
7 原告らは、本不当判決に抗議するとともに、本判決の誤りを是正するために、直ちに控訴する。われわれは、引き続き採用拒否の不当性を司法判断にて確定するために努力する決意である。
以上
2016年4月18日
東京「再雇用拒否」第3次訴訟原告団・弁護団